大地の子 四 (文春文庫 や 22-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167556044

感想・レビュー・書評

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  • 人を育てるのは親ではなく、人。

    (以下抜粋)
    ○「われわれも、日方の先生ぐらい高給を支給されれば、
     夜昼なくはたらきますがねぇ」
     臆面もなく、堂々と言い返し、さっさと交替してしまう。
     これでは彼らを束ねる幹部たちの心労が並大抵ではないのも見当がつく。(P.303)

  • 中国残留孤児の話です。最近は聞かなくなりましたが昔はニュースなどでよく残留孤児と親の対面が取り上げられていました。彼ら残留孤児は、戦時中に満州へ開拓に出た移民の子であり終戦後、日本へ逃げ遅れて現地で生き延びたという経緯があります。終戦から20年以上経ち、中国と日本の国交正常化後に肉親探しが始まりました。このような歴史があるので、戦争孤児に対する中国あるいは日本での差別を描いた作品かと思ったのですが、全体を覆うテーマにはそれもありますが、それよりも日本と中国という二つの国と、親子の愛をテーマにした物語と言えます。どこで生まれたかによって人間性が否定されてはいけない、って当たり前の事を再認識させられます。山崎豊子さんの圧倒的な取材量には毎回驚くばかりですが、この作品も中国での取材は途方もない努力の積み重ねだったようです。このような作家が亡くなったのは非常に残念です。
    満州からの引き揚げがどれだけ死と隣り合わせだったかは、藤原ていさん著の「流れる星は生きている」が詳しいです。

  • どうしても山崎豊子作品の主人公は、正義感にあふれ公明正大な人物に描かれ、家族も愛情あふれ理解があり・・・というパターンで書かれるので、話自体は中国現代史を下敷きにした壮大な物語なのに感情移入が難しい。

  • 著者が、取材から完結まで足掛け八年をかけた大作を、数日で読み終えてしまうのは何とも面映い。が、著者が全身全霊を込めて取材し、全存在をかけて書き上げた熱い思いが伝わってくる。
    満蒙開拓団の終戦時の逃避行、中国の貧困農民の生活、労改(労働改造所)の内部の実態、製鉄所建設に纏わる専門家もかくやと思われる知識、等々、それらの迫力迫る描写に圧倒され、しばらく他の小説に手が出せない。
    解説に書いてあるように、本作は「社会派小説、告発小説、国際ビジネス小説、恋愛小説・・・」といろいろな読み方ができるが、何よりも歴史の流動の波に翻弄される人々を描いた大河小説である。
    現在の日中関係に懸念を感じ、あるいは中国の実態を、そして日本はどうあるべきか、を真摯に考えようとする志があるならば、必ず読んでおく一冊と言っていいだろう。

  • 中国人として生きるか、日本人として生きるか主人公の葛藤に、今までの様々な問題や苦難、生い立ちなど物語の全てがおさまっているように感じました。

  • 残留孤児、文化大革命、日中鉄鋼プロジェクト、権力争い。

    中国を舞台にいろんな要素が詰め込められている作品であった。
    今中国人と一緒に仕事しているので、そういった方面からも、すごい見ごたえあり。
    これといった一言で感想は述べられない。
    沢山のことを感じさせてくれた作品であった。
    個人的には妹の箇所が切ない、切なすぎる。

    最後の最後長江にたどり着いた場面は秀逸。
    次は不毛地帯か。

  • 2回目。衝撃的な世界だった。日本人、中国人、国民性の違いもおもしろい。

  • 最後まで気が抜けない!!
    中国の社会主義体制、日本、中国に対するそれぞれの確執、中国人と言う国民性、戦争によって犠牲になった日本人。色々勉強になります。こういった題材の本に出会うと、もっと歴史を知りたい、それを自分の教養として身に着けていたいといつも思わせてくれます。

  • 残留孤児の話しや、戦後の文革から近代化への流れなど、陸一心の人生を通じて新たに学んだ気がします。もちろんこれはフィクションですが、この小説を書きあげるのに、作者がいったいどれだけの取材や文献をこなしたかと想像するとただただ敬服します。
    正直1巻は読み進めるのが本当に辛く、何度も諦めかけましたが、良心の人、育ての父陸徳志との出会いに救われました。
    壮大なドラマの終わりはすがすがしいです。陸一心の言葉に強く心打たれました。
    途中で止めようか迷っている人は是非最後まで読んでほしいです。

  • 【読書その111】大地の子の4冊目。これで完結。この巻でついに実の父と巡り会うが、過ぎ去った時間と境遇に悩む親子を描いている。中国残留邦人の家族との離別の悲惨な状況を描くだけではなく、それに日中共同の一大プロジェクトである製鉄所建設を入れ込み、主人公とその生き別れた父との家族関係を一層複雑なものとしている。現実の世界においても、この小説の範囲に止まることなく、残留邦人をめぐる様々な現実が繰り広げられたのだと思う。筆者である山崎氏は、この本の執筆に当たり、100冊以上の参考文献をこなし、3年間の現地取材を含め、中国人と日本人をあわせて千人以上もの人々に取材をし、8年がかりで世に出したという。この小説は、非常に読み応えのある素晴らしい小説だった。是非ともドラマ版も見てみたいと思った。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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