- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167646073
感想・レビュー・書評
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面白かった!!新撰組が好きな人、そう思わない人も私はオススメ!
燃えよ剣で土方が好きです。がこの本で鬼の副長に出会えます!
複雑な思いもありますが…
新選組に翻弄されながらも悲しくも、強く生きた女たちの物語。
最後の方の女たちの思いは泣けてきます。
剣を持たない、女性の戦に感動しました。
また、芹沢の印象が変わった本でもある。
沖田、永倉の語りは良かった。そして斉藤はどんな本でも同じなのがファンにとっては嬉しです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんか辛いなぁ。
男と違って。
解説にある
"糸里は、芹沢に斬られた音羽太夫が今際の際に呟いた「だあれも恨むのやない。ご恩だけ、胸に刻め」という一言を聞き、その意味を探り続けている。"
この言葉(以降はネタバレに繋がるので書かない)が、ずんと胸に響いてくる。
つくづく壬生義士伝の表裏一体にある物語。 -
浅田次郎の新撰組もの。
「壬生義士伝」とは異なり、女性の視点から語られている。しかしながら独白の形をとった沖田総司や芹沢鴨、永倉新八なども
奥行きをもって魅力的に描かれている。
さすが浅田次郎といったところだ。
行動をともにしても交わることのない
良し悪しではない百姓と侍の本質。
男たちの不条理を背負う、刀を持たぬ女性の強さ。等々を感じる。また島原の芸妓や
お座敷のしきたりも興味深い。
本筋ではないが読み方の分からない漢字が多いので、何度も前に戻って読み仮名を見返した。分からなくても読み進めればよいのだが、やはり物語に入り込みにくいので。例えば芸妓の位で最下級の「禿」というのがあるが「かむろ」と読む。これを
「はげ」と読んでしまうと物語に没頭できないのである(笑)
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女性の視点からみた新撰組の物語。
史実をベースにして、浅田ワールド全開の愛と命の物語になっています。
下巻ではいよいよ芹沢暗殺が語られています。
下巻ではなんといっても糸里の力強さがさらに伝わってきます。
とりわけ、暗殺後の土方への糸里の台詞は、なんとも格好よくスッキリします。糸里対土方の対決ですね。
はっきりと「あんたたちは女を恐れている」と啖呵切るシーンで描かれている二人の対決(というか糸里対新撰組の対決)がその力強さをあらわしています。
さらに、糸里の殿様への告発!そして土方との婚姻について尋ねられた答えを、歌にして返す美しさ。力強さと美しさを備えた女性であることがひしひしと伝わります。
このような力強く美しく語られる糸里の一方で、土方が小さな、どうしようもない人物に見えてしまいます(笑)
侍にあこがれたどうしようもない百姓魂の人物という感じです。実際はどうだったんでしょう..
そして、最後の最後の語り。これは泣ける。
ということで、壬生義士伝もよかったですが、輪違屋糸里はそれを上回る物語だったと思います。
お勧め。 -
芹沢鴨は、真の武士だった。なおかつ、優しくて、良い人だったという設定で芹沢暗殺を再構成している。登場人物に悪人がいない。情緒ある語り口で読ませるが、どこか作り物めいている。
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作者は、芹沢鴨暗殺事件の謎に迫り、この事件は百姓対武士の戦いであったと論ずる。
この事件に至るまでを、新撰組隊員の動き、登場人物の独白を用いながら、サスペンスフルに展開し、ページを繰る手を留まらせない、浅田次郎の筆の冴えに脱帽。
しかし、主役はあくまで島原の芸妓・糸里であり、「息を飲むクライマックスと感動のラスト」との謳い文句通り、最後に勝つのは、女性であった。男はやはり、三蔵法師の手のひらの上で踊る孫悟空か。 -
浅野さんは物語をドラマチックに描くのがうまいなあ。
女目線プラス沖田で語られているが、どの女も強い。周りに振り回され弱いようで、しなやかに逞しく生きている。
糸里、吉栄、音羽、おまさ、お勝、お梅。みんなかっこよかった。
今回ばかりは男たちはかたなし。かろうじてかっこよかったのは近藤と平山か。芹沢さんの男気はわかるけど焼き討ちはさすがにひどすぎる…
「壬生義士伝」は男の生きざま、「輪違屋糸里」は女の生きざま。
こんな強い人間になりたい。 -
新撰組のなかでも特に土方さんが大好きなわたしですが、
この作品だけは言える。
土方さん、さいってー(笑)
かっこいい土方さんをお求めの方は止めた方がいいです。
糸里、吉栄、お梅、前川八木の妻、それぞれの思いが伝わりすぎて、読んでいて苦しくなる。
糸里の、芯の強さはどこから来るのだろう。
吉栄のまっすぐな愛情も、お梅の儚さも、
すべてに惹かれます。
きっと新撰組が表舞台に上がってくるためには、女性が必用不可欠だった。
その女性が歴史の立役者として語られることはめったにないけれど。 -
浅田次郎の新選組モノの女性目線版。
いやはや面白かった。一気に読んでしまいました。
物語としては文久三年の夏から芹沢鴨が暗殺される9月16日までの短い間の新選組とその周囲の女性達の物語。
一部沖田総司を語り部とする部分はあるが九割方は女性目線のお話。
この物語の面白いところは、史実上は我侭、酒乱、癇癪持ちの芹沢鴨を実に人間味豊かな本物の武士として描いている。
その反面、近藤勇は少し頼りなく、土方歳三は頭の切れる冷血漢として描かれています。
ペンの力の凄さを感じるこの作品は、題材が史実なだけに「大和屋の焼き討ち」「禁門の政変」最後のクライマックス「芹沢鴨暗殺」等の出来事は実際に起こったことですが、その史実に浅田次郎の推察(創作を含)で面白く味付けしてあり、史実を冷静に捉えないでこの小説だけ読むとまるで事実かと思ってしまう人が出るのでは?
もちろん浅田流の泣かせる部分もしっかりありました。
浅田次郎恐るべし! -
芹沢鴨暗殺までの新撰組ってほんとろくなことしてねえよな、という熱量の低い感想しか出てこない。鴨の暗殺もなんかアホらしいし。
著者は農民が侍を倒すという補助戦で芹沢暗殺解体してみせた。そして、一つの集団における農民と侍の対立を描くにはどちらにも肩入れしない平等さが必要であり、新撰組にとって究極の他者である女の視点が採用された。本作で著者が必要に何人かの女の視点で新撰組を眺めるのは、構図を鮮明に見せるためだろう。新撰組という異様な半グレ集団に対峙するとき、それぞれ出自や生活環境の異なる女たちは、連帯意識を持たざるを得ない。女たちは最初から、新撰組の人々が追い求めていた、農民としてのコンプレックスを克服する可能性や侍としての誇りからは疎外されているからだ。
そして、男同士主導権争いの内ゲバという鏡に映された女たちのシスターフッド的連帯、という図式のシスターフッドが成立しているのは、女たちが徹底して政治から隔離されているからでもある。
本作をこのようなフェミニズム的な観点から読んだのは自分以外にはいないようである。本作の自分の読み方に基づくと、個人的なことは政治的なことといい始めた瞬間に女たちは政治的な分断に巻き込まれるのではないか?という問題が立ち上がる。