クライマーズ・ハイ (文春文庫 よ 18-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167659035

感想・レビュー・書評

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  • 降りるために登る
    主人公の同僚が残した言葉。組織の中での働き方って、人生とは、自分の良心に従って生きるとは、色々考えさせられた。

    日航機墜落事故。小3の祖母の初盆での衝撃の事故だった。奇しくも読み始めが8月11日、読了が12日。一気に読めた。

  • 新聞社を通して日航機墜落事故を描く。なんとも緊張感のある作品で、文庫の割に厚みがあるにもかかわらず一気に読んでしまった。日航機墜落事故に関する小説は初めて読んだが、これを機に別の角度からこの事件を見てみたいと思った。
    後にある解説を読んで、著者が元上毛新聞の記者であったことを知る。なるほど新聞社に詳しいわけだ。おかけでリアリティのある作品が読めた。

  • 作者の実体験に基づいた作品なだけに、事故の現実感に圧倒された。新聞社の裏側にある、様々な部署や、それに携わる人びとの色々な思いと葛藤、セクショナリズムなど、自分の経験でも良くあることだと思わされる。並行して、私生活での子供や友人、なくした部下の家族との軋轢等展開してゆくが、飛行機事故だけでも充分では無いかと思うほど、濃厚な内容だった。

  • 1985年8月12日、御巣鷹墜落事故。

    当時、3歳になったばかりの自分には、
    当然その当時の記憶の欠片もないものの、
    衝撃的な事故として、その後何度も
    テレビで見たことあるのを記憶している。
    そんな事故を扱った半フィクションの小説。

    新聞記者の主人公が事故を報道する責任者として、
    正面からぶつかっていく中、
    派閥争い他様々な障壁が立ちふさがる。
    かなりのボリュームだし決してサクサク読める類の小説ではないけれど、
    続きが気になってどんどん読んでいってしまった。

    横山さんの小説は初めてだったけれど、
    言葉・フレーズの一つ一つを取っても考え抜かれた気がして、
    奥の深い小説だったように感じた。

  • 日航機墜落事故、毎年夏になると必ず思い出す。

    望月彩子が言ったことは、以前私も考えたことがあった。命を落とし、テレビや新聞で報道されて多くの人にその死を知られ悲しまれる人と、そうでない人がいる。この違いはなんなのかと。重い命と、軽い命…。

    彩子は、「泣きません」と読者投稿に綴ったが、いざ掲載されると、遺族に申し訳ないと涙を流した。
    「肉親を失った人間が、あの娘の気持ちをわからないはずがないだろうが!」
    彩子だってそうだろう。怒りや憎しみで強がっていたが、本当は遺族の気持ちを思い、一緒に涙を流したかったのではないか。

    仕事、家族、仲間。いろいろな思いが込み上げ、終盤はずっと泣いてた。いい終わり方だった。

    事故当時、群馬県で新聞記者をしていた横山秀夫さんだからこそ、描けた作品だと感じた。とてもリアルで、これが当時の新聞業界であり、日航機墜落事故を報道するということなんだろうなと。
    また、1985年と2024年、様々な面から時代の変化を感じた。スマホってすごい。

  • 『無駄も損も無い』

    誰もが知っておくべき事件を扱い、
    読んで後悔は皆無だと思われる

    難しい内容も多いが、それを絶妙にうまく
    描いているような印象
    事件のみでなくそれらに関与する様々な人間模様もあり、飽きることなく読了出来る

    この事件について自身でもより深く知りたくなる

  • 人間とは、なんとさもしい生き物なのか。

    命に 軽いとか重いとか、大切とかそうじゃないとか、そんなものはないと口では綺麗事を言っても、皆どこかで線引きをしたり、線引されたものをなんの疑問も持たず受け入れている。かくいう私も。
    それも酷く打算的に。


    悠木の心情はゆり動きっぱなしで、喜怒哀楽も激しくて、冷静になれ、と思わなくはなかったけど、実際、事が大きければ大きいほど、振れ幅はあるだろうし、打算だけでは動けなくなるところが人間らしくてよかった。

    男は理性、女は感情の生き物なんて、誰が決めたのかしら。

    人間なんてみんな一緒じゃん。

  • 最初に読んだのは'06年。'19年再読時には、ちょうど主人公の悠木と同年代になり、上からも下からもプレッシャーのかかる立場に自分を重ねて、なかなか胸が痛かった。

  • 知人のススメから。

    書きとめてから実際に読むまでに4年近くを浪費してしまったらしい。鉄は熱い内に打てとはいうけれど、せっかく勧められたモノも熱い内に身の一部としてしまったほうが良いらしい。

    ある暑い夏、熱い人たちのココロにこみ上げた熱いもの。自らの今の生活が如何に冷え切ったものであるかを痛感させられた。

    自分からも是非誰かに薦めたい。それがこの作品に対する謝辞の表し方なのではないかと感ずる。

  • 読み進めるうちに、物語に強く引き込まれていった。臨場感溢れる描写、緻密に描かれた熱気と緊迫感。実際に働いていたという作者の圧倒的な筆致によって、新聞社のリアルな状況がありありと伝わってきた。この小説は単なるフィクションではない。もしかしたら、ほとんどはノンフィクションなのではないかと思わされる作品だ。

    きっともっと良い言い方ややり口はあるだろうに、様々な立場の人と衝突せずにはいられない、悠木はそういう不器用で愚直な人間なのだ。そんな悠木の行動とそれに巻き込まれる様々な記者たちの熾烈な世界に、涙や苦しさ、切なさとともに没頭していった。

    神沢が悠木と連載企画の話で揉めた後に、事故現場の残酷さを目の当たりにしたショックから泣き出した場面や、犠牲者の遺書を一面に載せる場面では泣かずにはいられなかった。遺族だけじゃない。関係のない記者だって、感情移入した読者だって、亡くなった人々に思いを馳せたっていい。
    だけど。

    《私の父や従兄弟の死に泣いてくれたかった人のために、私は泣きません。たとえそれが、世界最大の事故で亡くなった方々のためであっても》

    彩子のように、泣きたくない人間もいる。悔しさや悲しみを胸のうちに絶やさず、やるせない現実と葛藤し、決意し、だけどもまた迷う。大きな事件を扱うことで、そういうふうに思う人もいるのだと、この本が教えてくれた。大きな事故ではあっても、いや、大きな事件だからこそ、決して皆が泣くわけではないのだ。

    数え切れないほどの人々の思いが、新聞社で働くいろんな立場の人々によって文字へと変わり、そして記事として私たちの元に届く。その毎日は、どれほどすごいことなのか。決して当たり前ではないのだと気付かされた。

    「転んでも、傷ついても、たとえ敗北を喫しようとも、また立ち上がり走り続ける。人の幸せとは、案外そんな道々出会うものではないだろうか。」

    最後のこの言葉に痺れた。「クライマーズ・ハイ。一心に上を見上げ、脇目も振らずにただひたすら登り続ける。そんな一生を」過ごしてみたい。やめるのも休むのも、個人の自由だ。私も、自分が心からやりたいと思ったことに、ひたすら情熱を注ぐ。そういう生き方をしたいなと思う。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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