クライマーズ・ハイ (文春文庫 よ 18-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167659035

感想・レビュー・書評

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  • 横山氏は「半落ち」や「臨場」の作者でもあります。
    どちらもとても面白く読みましたが、今回の「クライマーズ・ハイ」もすばらしく、横山氏の代表作になるように感じました。
    日航機の御巣鷹山 墜落事故が舞台です。
    当時横山氏自身が地元の新聞記者だったそうです。
    新聞社の人間関係、家庭の中の人間関係、マスコミのあり方 等がテーマになっています。
    特に家庭の中の人間関係は まさにタイムリーなことで すごく共感しました。
    最後の場面は通勤電車の中で涙ぐんでしまいました。
    映画化もされるようなので、映画も見てみたいと思います。

  • 私は山登りには特別興味があるわけではない。富士山に2度登った程度だ。
    では、なぜこの題名の作品を手に取ったかというと、横山秀夫さんが描いたからだ。
    新聞記者だった横山秀夫さんの背景を知って読むと一層理解が深まる。登山家ではなく新聞記者の目線で描かれている点に興味があった。

    痛ましい日航機事故の体験を通して、新聞記者がどのように向き合っていくのかが描かれている。
    安西が言った「下りるために登る」の真意はどこに?新聞記者としてありたい姿を追い求めながら、悠木が探っていく。家族や仲間との関係も描かれることで真実味が深まっている。、

    新聞社の中の組織はどこの会社にもあり得るドロドロしたものがあるようだ。
    責任を取らないよう保身に走る者、自らの勘違いで権力を持ったと思っている者、自分の信念を貫けない者。

    新聞は今となっては、リアルタイムで伝えられなくなっている。事実をできるだけ主観を交えずネットでは見えないモノを伝えることはできる。
    私は新聞を読むのも好きだ。何が起こっているか、これからどうなるか、データに基づき事実を伝えてくれるからだ。記者の熱い想いも伝わってくる作品だった。

  • 疲れた…この本は凄すぎて何て感想を、書いて良いかわからない。
    映画を観てかなり良いできだと思って読んだら原作の凄さがわかった。読み終わったあと色んな感情が腹の中でグルグルした。
    日航機墜落事故を取り上げた社会派小説。
    1命の重さ
    2家族とは
    3何故働くの
    4会社とは
    5生きて行く事とは
    6自分の使命とは
    その他…多数…

    と思うだけでもこれぐらい出てくる。


    本の途中に、日航機墜落のボイスレコーダーを聞いた…本当辛い…機長と副操縦士、またクルーが人命をどれだけ守ろうとしていたかわかる。
    真面目にこれを聞いたあと、人間腐ったら終わり…と教えてもらった。

    是非とも本も読まない人も読んでもらいたい本。映画もおススメ!

  • 非常に読み応えのある作品。

    1985年に起きた、日航ジャンボ墜落事件をベースに、地元の地方新聞社の記者を主人公としたに会社という組織や主人公の家庭などを扱った一作。
    人間臭いが故に重みがあり、無駄な文章が一切ない為一字一句丁寧に読みました。

    男性の仕事にかける気持ちとその重み、組織の中で生きてゆく姿の凄まじさが感じ取れます。

    特に心に残ったのは主人公が見てしまった暮坂の記者というポジションに対する気持ち。
    人の一面だけで、全てを決め付けてはいけない、と改めて自分に言い聞かせました。
    男臭いけれど、とても素敵な登場人物達でした。

    素晴らしい。

  • 人は色々な物事を「登って乗り越える」。

    地方新聞記者の主人公は、
    御巣鷹山で起きた日航機墜落事故に際し、その事故を伝える記者として関わる事になる。

    多忙を極める仕事の中での社内の人間との確執、
    家族との心的乖離、友人の病気、過去に諸々あった知人の家族との関係等、様々な問題を抱えながら生きる様を描いている。

    そんな中、本作は記者として新聞社で働くシーンがメインとなっているが、作者の横山秀夫が地元群馬の新聞記者だった経緯もあり、非常に情景細かく描かれている。
    しかし、別の見方をすれば、新聞社での出来事を細かく描く事に比重がかなり寄っており、正直な所「自分が読みたいのはこういう部分ではないんだけどな、、」というやや退屈を感じたのは事実。

    主人公は日航機墜落事故の遺族や当事者ではなく、間接的に関わる新聞記者という立場であるため、
    「強い悲しみ、やり場のない怒り」などの強い感情の発生は当然なく(もちろん事故に対する記者としての憤慨はあるが、遺族が持つ感情の深さとは比べものにならない)、
    そのため、「事故の悲惨さ云々」ではなく「新聞記者の多忙さ」ばかりが印象として残り、
    正直この事故をテーマにしなくてもおおよそは成立するのでは?と感じてしまった。

    しかしながら、
    紆余曲折ある人生と立ち向かう様を心情細かに描いているので、何か壁を乗り越えたい時や迷いがある時に良い一冊だと思う。


  • 面白かった。休日に丸一日かけて、一気読みした。ドンドン物語に引き込まれて、読むのを止められない!くらいに夢中で読んでいた。
    読んだきっかけは、テレビで映画をやっていたから。そして、日航ジャンボ機の事故は、群馬出身の自分にとって、結構身近なところにあったから。
    誰かの上司になるとは、責任がのしかかるとは、こんなに苦しいものなのか。と胸が押しつぶされそうになった。そして、過去の栄光にすがる、男たちの妬み嫉み。女の世界とはちょっと違う感じが、新鮮だった。
    映画はなんとなく見ていたので、映画もしっかり見て楽しみたい。

  • 人は何のために強くなり、何のために弱くなるのか。
    一心不乱に突き動かされることは出来るのか?

    とても重厚なストーリーを読ませて頂きました。

  • 書評での評価も聞いていたし映画化もされた。
    読みたいと思いつつ今になってしまった。
    やはり
    すごかった
    流石地元新聞の記者だったからこそ
    書けたと思う
    臨場感ありすぎて息がつまりそうだった

    ラストの方でやっと呼吸が楽になった

    面白かった

    ≪ よじ登る クライマーズハイ 下りるため ≫

  • センシティブな内容だし話も前後するので最初は戸惑ったものの、新聞社の現場における慌しい雰囲気がリアリティありすぎてとても楽しめました。この人じゃないと絶対書けない!といった内容。

    親子、親友、仕事、趣味…、深い。

    その後映画版も見たけど、やっぱり本の方が想像できて好き。でも主人公のVOLVO 740が実にカッコよくて萌えます。

  • ドラマも映画も観ました。
    ドラマも映画も原作に忠実だったように思いますが、読後に残った気持ちは映像からのものとは全然違いました。

    ドラマも映画も、なかなか思う通りにはいかないなりに、地元紙のプライドを書けた新聞づくりと、それに関わった人たちの熱いドラマになっていたと思うのですが、本を読んでいる最中ずっと思っていたのは、「悠木、中二病?」

    部下を持たない遊軍記者だからと言っても、40歳の男性が、デスクとして紙面をまとめるにあたって、あまりにも繊細すぎると思いました。
    それというのも彼の幼児体験が関係していて、家族、特に父と呼べる存在を欲しいと願い、叶うことなく社会人になってしまったために先輩や上司に過剰に期待し、実態を知るほどに失望して世をすねて…。すねても記者ですが。

    家に帰れば帰ったで、父親としての在り方がわからない、子どもへの接し方がわからない。挙句の果てに息子を殴って育てる。

    おやおやおや。こんな人でしたか、悠木和雅。

    地元群馬県にジャンボ機が墜落し、その件に関しては全権委任されたデスクのはずなのに、嫌がらせをされたり勝手に記事をくつがえされたり。それに対して強気に怒ったり、弱気に落ち込んだり。
    もう!しっかりしなさいよ!と思うことしばしば。

    だけど、だからこそ余計に、いい新聞を作りたいという悠木の気持ちが強く伝わってくるんです。
    それは波に翻弄されているかのように心の表面に浮かんだり奥底に沈んだりはするけれど、いつもいつでも、悠木はいい新聞を作りたいという思いを抱えているのです。

    タイミングが悪くて後輩の気持ちの入った記事を紙面に乗せることができなかったり、スクープを逃したりするたびに、誰かに見放されたり憐れまりたりする悠木ですが、それはかなり被害妄想もあるのではないかと思うのです。
    だって、それまでの日常の付き合いの中で、ある程度お互いに人となりというものがわかるものじゃないの?

    上司とも同期とも後輩ともなんとなくうまくいかない悠木ですが、あ、家族とも、ですが、山男の安西とだけは何となく親しくて、ジャンボが墜落した当日も本当は一緒に登山に出かけるはずでした。
    しかし安西はくも膜下出血で倒れて植物状態になってしまいます。

    安西もまた、子どもとの関係が上手くいっているとは言えず、仕事でも何か屈託を抱えている様子であったらしい。
    なぜ山に登るのか?なぜおれを誘ったのか?なぜこのタイミングだったのか?

    安西との登山にかかる謎と、新聞記者としての矜持と、人間としての40歳からの成長とが実にいい塩梅で、丁寧に言葉を尽くして描かれる悠木の心のうちは、全くくどさを感じさせないのです。

    組織の中で働いていれば、誰にでも思い通りに行かないことはありますし、心ならずもやらなければならないものもきっとあるはずです。
    そして地方で働いている者にとって、中央の、大手の力技を見せつけられた時の無力感と言ったらないんですよ。
    全国に、きっと多くの悠木がいて、職場で、家庭で鬱屈を抱えているのだと思います。

    だからこそ、悠木の言った「いい新聞を作りたいんだ!新聞紙を作りたいわけじゃない!」という言葉が心にしみるのでしょう。

    新聞を作るのはもちろん記者だけではなく、紙面の割り付けや、カメラマンや、また広告、販売、出版局の人々。そして読者の目。
    それらすべてがうまくかみ合わないと、いい新聞は作れません。

    そして、その事故から17年後の悠木の姿が折々に挟み込まれています。17年後の悠木はやはり長男との関係に自信が持てないでいるようですが、最後にとても嬉しいサプライズがあります。
    読んでいてつらい場面もありましたが、読んだあととても晴れ晴れした気持ちになりました。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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