考える脳 考えるコンピューター

  • ランダムハウス講談社
3.81
  • (39)
  • (27)
  • (57)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 410
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270000601

作品紹介・あらすじ

パームコンピューティング社とハンドスプリング社を設立し、数々のPDAを世に送り出してきたジェフ・ホーキンス。IT業界で大成功を収めるかたわら、彼はもう一つの情熱を追い続けてきた。脳を知りたい、脳と同じようにはたらく機械をつくりたい。そして今、大脳新皮質の「記憶」と「予測」の機能から、"真の知能"の姿が描きだされる。脳科学、コンピューター科学を揺るがす新たなビジョン。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふむ

  • Jeff Hawkins(Palm開発者・HTM理論提唱者・Numenta創設者)が、DeepLearningが注目される前に上梓した本(2004)。ニューラルネットワーク及びAI研究の姿勢(振る舞い至上主義)を痛烈に批判し、知能とは何かを定義せずに研究を進める事はクソ食らえと。新皮質のメカニズム「記憶による予測」こそが真の知能であると説く。これがHTM理論の枠組みだが、ついに2015年、IBMが本理論に注目してCortical Learning Centerを共同設立するまでに至った。更なる飛躍に期待。

  • 著者は、パームコンピューティングのファウンダー。ソフトウエアのスペシャリストがなぜ、脳の研究を始めたのか良くはわからないが、とにかく脳に興味があったらしい。彼によると、現在の人工知能の研究では、人間に匹敵する知性は絶対に作れないらしい。なぜなら、現在のCPUは、1Gヘルツを越える処理速度があるが、人間の脳は200ヘルツ程度。これほどの速度差があるにもかかわらず、人工知能には、魚の頭と尻尾を区別したり、猫と犬の区別が極端に難しい。それはとりもなおさず、アルゴリズムに無理があるから。彼は、人間の脳の新皮質の構造に、彼の解釈を入れ、モデル化し、この周波数の違いと処理対象物の違いをクリアしようとしている。そして、それを新たな人工知能に仕立てようとしている野望はやはり、アントプレナー。

  • 図書館

  • ハンドヘルドコンピュータ「Palm」、スマートフォン「Treo」を開発した起業家/エンジニアである著者が脳科学研究所を設立し、脳について仮説を論じている。
    脳の皮質構造のなかでも進化的に新しい「新皮質」の動きを中心に視床、海馬などとの連携を含めて説明、新皮質は一時記憶の海馬に対して永久記憶を持っていて、そこでは外界からの入力だけではなく記憶を使って情報処理を行っていると論じ、ニューロコンピューティングに一石を投じている。
    仮説と言いつつも説得力のある論理展開にとてもワクワクしながら読み終えることができました。
    ちなみに、本書は2008年の発表ですが、最近(2016年12月)、米Google社傘下の英DeepMind社は、DNNと外部記憶を組み合わせることが重要とみなして研究開発を進めているとか、著者が率いる米Numentaが独自ニューラルネットを実装、性能は既存のDNNを上回るなど記事が発表されています。(以下のURL参照)
    http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/120200044/122800011/?P=6

  • シンギュラリティっぽくはないけど、楽観的な西海岸思想が素敵。

  • 本の内容は、結構取りつきにくかったため(難解)、読み終えるのに1ヶ月かかった。

    しかし、脳のおおよその機能がざっくり理解出来たように思う。「記憶による予測」という動物(特に人間)の得意技を人間がやっている生まれてから経験して記憶として、留められる経験から予測という技をコンピューターに再現させれば、本当の人工知能が出来上がる。なるほど〜、確かにコンピューターは、素早い計算や単純な記憶は出来るが、人間の脳みそのサイズで何十億バイトもの記憶出来る装置が開発されないとコンパクトな人工知能は今のところ出来ない。
    この本は2005年の内容なため現在実現されているペッパー、アシモ、ロビー等々人間に近いロボットが開発されている時代が到来していて、著者のホーキンス博士はどうお考えなのか?が聞いてみたい。

    人間の脳の能力とそれに繋がっている身体の仕組みは物凄いものなのだなと改めて感じた。
    俺の脳は半分壊れ、左半分使えないがこのようなホーキンス博士の先駆者による脳科学がもっと発展し俺の不自由な身体を改善してほしいところ。

  • バックプロパゲーションとは異なる「記憶による予測の枠組み」
    ・私とは・・・過去の体験を通じて得られた記憶と、その記憶によって作られた現実認識のためのモデルの集合。
    ・意識とは・・・脳が現実に先んじて見せている「早出しの記憶」。
    ・心とは・・・脳が脳自身の活動をうまくモデル化できないが故に、思考が肉体とは独立して存在しているように感じてしまう錯覚。
    ・魂とは・・・従って脳と独立した魂というものは存在しない。脳が死ねば心は無くなる。
    ・神とは・・・人は常に自分の中で作られたモデルでしか想像できない。従って宇宙を創造したことの無い人間が神を想像することは不可能である。すなわち(仮に存在しても)、絶対に知ることのできない存在である。
    ・善とは・・・生物として生存するにあたり、その時点で最適なモデルの事。
    ・哲学とは・・・ちょっと考えきれて無くて難しいのだが、モデルを作る過程をさらにモデル化する方法について考える、メタロジカルなプロセス、かもしれない。

  • Palmで有名なJeff Hawkinsが、今レッドウッド神経科学研究所でやっている知能に関する研究。肝は「記憶による予測の枠組み」。日本ではこれに触発された?全脳アーキテクチャという活動がある。
    もう絶版なの? 良書なのにもったいない。

    2019-10-14 一時期古本にえらいプレミアが付いていたけど、価格が落ち着いたようなので、この機会に購入。

    http://www.onintelligence.org/

  •  脳の仕組み、記憶の仕組み、ひいては「知能」の仕組みというものを、納得できるモデルとして示した、ひとことでいって「ものすごい本」。知能を担っている大脳新皮質は、たったひとつの役割しか担っていない……それは「記憶をもとに予測すること」だ、というのがまさに論の核心。この驚くべき仮説について、実際の脳の構造から説き起こし、ひとつひとつ「なるほどそう考えると説明がつく」という事例が織り込まれていく。そしてその説明は、「意識」や「創造性」の正体にまで及んでいくのだ。
     科学の最先端の分野なのに、平易で読みやすいのも驚き。これは著者が科学者であるとともに「工学的なセンス」の持ち主だからかも。さすがはpalm の生みの親。この仮説にしたがってどのように「本当の人工知能」をつくるか、というところまでたどり着いているところにも夢がある。もしかしたら、「知性を持つコンピューター」が、自分が生きているうちに見られるかも、という希望が湧いてきた。この本を読んでなんらかの具体的メリットが期待できるわけではないが、センス・オブ・ワンダーのあるポピュラーサイエンスの本として今年……いや、近年まれに見る快著だと思う。

全35件中 1 - 10件を表示

ジェフ・ホーキンスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×