たんぽぽ娘 (河出文庫)

制作 : 伊藤典夫 
  • 河出書房新社
3.77
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本棚登録 : 821
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464053

感想・レビュー・書評

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  • 昔のSF仕立てのファンタジー。やはりこの手のジャンルは短編がいい。

    牧歌的という言葉が似合う。テーマはボーイ・ミーツ・ガール。昔の少女マンガを読んでる感じ。都合よすぎな面は否めないけど、手にした時の期待値よりは面白かった。

    「失われし時のかたみ」。さだまさしの「博物館」って唄に似てるなって思った。

  • 表題のたんぽぽ娘は読めたけれど、その他は昔のSFで、なんか眠くなる。
    読み進めるのが少し億劫でなかなか読み進めない。
    解説読むと著者さんなんかあれな人みたいだし。

  • SFなんだけどファンタジー

  • 安心して読めるSF。皮肉ではない。
    どこか暗い背景を持ち、不穏な雰囲気が漂うが、結末は…安心します。

  • 「ビブリオ古書堂の事件手帖」で題名を知り、図書館で見つけたので読んでみました。河出書房新社から出されている奇想コレクションの1冊で装丁のきれいな本。表題作を含む13篇の短編集です。

    特に好きなのは「河を下る旅」「エミリーと不滅の詩人たち」「神風」「たんぽぽ娘」。
    「エミリーと不滅の詩人たち」は一種の企業小説で博物館の補助学芸員が詩人たちを助ける話で終わり方がイキ。「河を下る旅」と「神風」は極限下におけるボーイミーツガールの話。特に前者は人生も捨てたもんじゃないことを思い出させてくれる小説と思います。
    13篇の中で一番面白かったのは、やはり「たんぽぽ娘」。美しいSF小説です。中年男が未来から来たという若い女性に恋をします。「おとといは兎を見たわ、昨日は鹿、きょうはあなた」というフレーズの響きが好きです。ストーリーの展開、ラストが印象的。ネタバレになるので、内容は書けません。

    個人的にSF小説は苦手ですが、それでも寝る前に読んで何となく甘い気持ちで寝付くことができました。特に「たんぽぽ娘」は読む価値があります。

  • 「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」
    最近読んだ「ビブリア古書堂の事件手帖」で出てきたこのセリフと本。いつだったか聞いたことがあると思って検索してみたらヒットした「CLANNAD」の一ノ瀬ことみのセリフ。その「たんぽぽ娘」の短編を読んでみようと思って手にした本。
    SF×純文学みたいな感じって言えばいいのかな。純文学にはほとんど触れてきてないので間違ってるかもしれないけど。
    SFの設定は面白いのもあるけど、全体を通してみたときには設定のパターンができてしまってて後半は結構ダレる。妙に頭でっかちなSFの部分と、妙に爽やかな恋の部分がいまいちかみ合ってないのも多いかな。たぶんこれは同じ作者の話をまとめて一冊の本にしまったことが間違いだった気がする。続けて読むとそれぞれの話の面白さが半減してしまう。
    個人的には「河を下る旅」が好きだった。

  • 名作『たんぽぽ娘』など全13編が収録された短編集。特に印象深かった『荒寥の地より』は、ノスタルジックな世界観の中での抒情が良い。

  • SFの名作という事で読んでみた。

    「特別急行がおくれた日」「河を下る旅」「エミリーと不滅の詩人たち」「神風」「たんぽぽ娘」「荒寥の地より」「主従問題」「第一次火星ミッション」「失われし時のかたみ」「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」「スターファインダー」「ジャンヌの弓」の13篇。

    自殺しかけた二人が夢の中の河下りで出会う「河を下る旅」、異星のユートピアと繋がった村人が密かに移住を果たす「主従問題」はわりと好き。でも、後の話は訳が分からない話やしっくり来ない話ばかりでつまらなかった。自分的にはこの本はハズレ。

  • ボーイ・ミーツ・ガールもののSFということだが、どうもべたべたしたものに感じられてしまって、あわなかった。タイミングが合えば、もっと感興をそそられることもあり得たかもしれない。

  • ロバート・F・ヤングが送るSF短編集。全体的にハッピーエンドが多くロマンチックな作品が多い。

    「特別急行が遅れた日」
    SFでよくある「小さな世界」の短篇。そのネタ自体はオチまで読まずとも察しのつく読者は多いだろう。日常的な日々の中のちょっとした変化と、被造物がこの階層からなる小さな世界とその創造主を意識した所で短篇は終わる。変化はまさに神のいたずらであり、いつもと変わりない日々が固定されているのはゾットするのを通り越して諦観にも似た気持ちを抱いてしまう。

    「河を下る旅」
    表題作を除けば個人的にはこれが一番面白かった。謎の河下り。薄々その理由に気がついているがそこから目を背けている男女。とどのつまりは三途の川であり、河の上での会話、土手にある宿で泊まっての身の上話などが走馬灯として繋がっていく。途中の自殺の途中であることが分かってからの文字通り急流のようなストーリー展開が見どころである。最後は自殺をきっかけとして二人は運命の出会いを果たすわけだが、ホッとすると同時に非常に美しい終わりであった。最も短篇らしい短篇であり、完成度は高い。

    「エミリーと不滅の詩人たち」
    詩を読むアンドロイドとそれに魅せられた補助学芸員の話。詩を読むアンドロイドという設定が素晴らしく、そうした芸術は必要とされず、より分かりやすいものほうが喜ばれるという苦悩はとても生々しく嫌というほど理解できる。詩人のアンドロイドを救う方法が、展示物の車に乗車させるという解決策はとてもミラクルで、まさに博物館で働く人間らしい企画とアイデアの勝利であろう。余談だが、「詩の世界の空が落ちてきた」や「エミリーも詩人たちと同じ船に乗っている」などの訳文が雰囲気とあっていてとてもいい。染み渡る一本である。

    「たんぽぽ娘」
    流石の表題作というだけあって素晴らしいSF短篇である。突然丘の上に現れたタイムトラベラーだと名乗る若い女。そんな彼女に恋をしてしまい、逢瀬を重ねる主人公。彼の知らない不安を目に浮かべる妻。三者三様の思惑が絡み合った恋の物語で、丘の上に現れた若い女の正体が、彼の妻の若い頃だというオチが素晴らしく、まさしく時を超えたラブストーリーである。昔に会っていたからこそ、その日その瞬間に恋に落ちることを妻は知っており、その恋が本物であることを証明するために若い時の主人公と会って結婚する……しかし主人公がその日に恋に落ちることは、すでに決定された未来であり、そこから先のことは分からない。妻の長年の不安の正体が明らかになると同時に、主人公の恋も成就するというアクロバティックなアイディアであり、これはもう思いついたもの勝ちだろう。

    「第一次火星ミッション」
    子どもの頃のバローズ的世界観の空想的な火星の旅。大人になって宇宙飛行士になり、本物の火星に行くと、そこで子どもの頃になくしたナイフが落ちてあり、それをそっと埋め直す。子どもの想像力は無限であり、ひよっとしたら現実も捻じ曲げてしまう力があるのかもしれない。

    だいたい印象に残ったのはこの三篇で、全体的に読みやすい短編集だった。えげつない結末やソリッドな作品はほぼ皆無だが、センチメンタルなアイディアが冴え渡っており、有名作品と言うだけあって一読の価値のある作品集である。

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著者プロフィール

1915年、ニューヨーク州生まれ。53年、デビュー。F&SF誌やサタデー・イブニング・ポスト誌などに200編近くの短編を発表。1986年没。短編集に『ジョナサンと宇宙クジラ』『ピーナツバター作戦』。

「2015年 『たんぽぽ娘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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