行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033545

感想・レビュー・書評

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  • 人は、経済学でいうところの「超合理的に行動し、他人を顧みず自らの利益だけを追求し、そのためには自分を完全にコントロールして、短期的だけでなく長期的にも自分の不利益になるようなことは決してしない(P10」ような「経済人」のような行動はとれない。というかとらない。
    なぜなら人はもっと感情的だからだ。


    それは人が愚かである、ということではなく、
    世の中には人が選好するうえでの価値基準の軸がたくさんあるからだ。
    たとえば、給料の話。
    金銭の動きだけ見れば同じ動きしかしていない話であっても、固定給が減る話か、ボーナスが減る話か、ということでは人は後者の方が受け入れやすいと思う。なぜなら、金の動きだけではなく「公正さ」などの権力に対する評価も同時に行われるからだ。
    それ以外でも、
    人は集団でいれば、ある程度他人に対する協力などもなくては信用されないから、数字の計算が正しいからと言って生きられるとは限らない。

    そしてそれらの多様な情報は、前頭葉で瞬時に総合して判断される。
    判断するうえで重要なのは二つ。

    一つ目は、
    その選択に自分の納得できるようなストーリーがあるかどうか。
    広告に魅力的な物語は不可欠、ということ。

    二つ目には、
    仮説では、その判断には、「裏切り者探知能力」が用いられるようです。
    「(進化心理学者の)コスミデスとトゥービーは、人には、裏切り者探知能力が備わっていて、それが社会における協力を推進する大きな力となっていると主張する。この能力は無意識的に発動されるが、怒りなどの感情を伴っていると考えられ、人が進化の過程で身につけてきたものである。彼らによれば脳の一部がこの機能を分担しており、それは「裏切り者検知モジュール」と呼ばれ、人間の生得的な性質だとされる。」(P375

    人は、人の表情を読んで他者の心を推測する。
    そして同時にそれは、社会契約説(国家と個人同士の契約)とは対照的にアダム・スミスやデビッド・ヒュームが重視しした「共感」の能力(個人同士の関係)に通じる。
    (注:ここで重視しているのは、「顔形」の好悪ではなく、「表情」の好悪と思われます。もっとも、厳密に両者を切り離すのは難しいですが。)

    最終的に生きる上で「得」であるのは、金銭的な得だけでなく様々な要素がからんでいて、信用できる人と一緒にいるかどうか、ということなんでしょう。


    つまり、
    「結局、人間は、自分を取り巻く環境や生態に適した決定を行うという意味での合理性を持っていると言うことができよう。」(P380
    ということです。

    となると、人は個々が各々で自分にとって最も合理的だと思う行動を取る、ということになる。

    ちなみに。
    となると、ストーリーと、俳優の顔とが舞台の上で提示される演劇や表象文化は、現代人の行動力を磨く大きなカギをになっていることも経済学的に証明されたことになりますね、なんて思いました。



    ちなみに、数学的な正確さと、人が一般的に予想する予想することはずれる、というくだりなどは、逆算して小説や他創作物のトリック等に使えそう。

  • 経済人を前提にしない経済学は何時になったら使えるのか?

    合理的人間を前提とする怪しい,誤った経済学,経済学者にはとっとと消え失せて欲しい。

  • 従来の経済学が前提としている完全なる合理主義者は存在しない。心理学も網羅した新たなる学問。インサイト心理に共通する章もあり。☆5つ!

  • サブタイトルからもっと感情寄りの内容かと思ったが、かなり経済学寄りで、確率やら統計やら果ては脳科学までバリバリ出てきた。かと言って分かりづらい訳でもなく、確率は苦手だけど、サクサクと読めた。明日の 110 円よりも今日の 100 円を取るなど「よく考えると不利益な選択を何故ヒトはするのか」も論じられていて、読んでる内に思考の変革が起きた気がする。まだ若い分野なようだけど、ガッテンでも取り上げられてたので、これから注目される分野なんだろうなー。

  • ホモエコノミクス(合理的経済人)はなぜいないのか。始めて本書に出会った大学生のころ、2002年発の新しい学問に興味を持ったのを思い出す。

    それから数年、自分の感情、相手の感情を無視し、殺そうとしてうまくいかなかった。
    右側のクワドラントには、感情は敵だが、理解して味方につけられたら、こんな力強い奴らはいない。

  • 経済学も結局は脳科学を持ち出さないといけないんだ!ってのが感想です。

  • 論文のような書籍

    その過程を検証

    ついやってしまうことを論理的に論文のように解説

  • これは良い!造詣が深い。但し、ここまでの知識は要らないから消化不良。
    (売)

  • 固そうなタイトルに反して、すごく読みやすい。

    今までの経済学をブレイクスルーする可能性を持つ考え方。より人間心理に寄っているので自分をかぶせることで理解がしやすい。

    「企業価値≒株価」という大前提に反して、とても一致しているとは言い難い今の株式市場の動きなんかも、行動経済学なら説明が付く。

    目次は以下の通り
    --
    第1章 経済学と心理学の復縁―行動経済学の誕生
    第2章 人は限定合理的に行動する―合理的決定の難しさ
    第3章 ヒューリスティクスとバイアス―「直感」のはたらき
    第4章 プロスペクト理論(1)理論―リスクのもとでの判断
    第5章 プロスペクト理論(2)応用―「持っているもの」へのこだわり
    第6章 フレーミング効果と選好の形成―選好はうつろいやすい
    第7章 近視眼的な心―時間選好
    第8章 他者を顧みる心―社会的選好
    第9章 理性と感情のダンス―行動経済学最前線
    --

    見る限り固そう。でも読むと固くない。

  • [ 内容 ]
    「経済人」という特別の人々をご存知だろうか?
    禁煙や禁酒やダイエットに失敗するなんてことはありえない。
    しょっちゅう電車の中に傘を忘れたり、ダブルブッキングをして友人を不愉快な気持ちにさせたり、当たるはずのない宝くじに大金を投じたりはしない。
    経済活動を行なっている人、つまりわれわれすべてがこのような人物であるという想定の下で、標準的経済学は構築されている。
    感情などに振り回されない、超合理的な経済人を扱う経済学は、どこか現実にそぐわない。
    感情、直感、記憶など、心のはたらきを重視し、私たちの現実により即した経済学を再構築しようとする新しい学問、「行動経済学」の基礎を、詳しく解説。

    [ 目次 ]
    第1章 経済学と心理学の復縁―行動経済学の誕生
    第2章 人は限定合理的に行動する―合理的決定の難しさ
    第3章 ヒューリスティクスとバイアス―「直感」のはたらき
    第4章 プロスペクト理論(1)理論―リスクのもとでの判断
    第5章 プロスペクト理論(2)応用―「持っているもの」へのこだわり
    第6章 フレーミング効果と選好の形成―選好はうつろいやすい
    第7章 近視眼的な心―時間選好
    第8章 他者を顧みる心―社会的選好
    第9章 理性と感情のダンス―行動経済学最前線

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著者プロフィール

1954年埼玉県生まれ。早稲田大学商学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程退学。明治大学短期大学教授を経て、2004年より明治大学情報コミュニケーション学部教授。専攻は行動経済学、ミクロ経済学。主な著書・訳書に、『行動経済学ーー経済は「感情」で動く』(光文社新書)、『慣習と秩序の経済学』(訳書、日本評論社)などがある。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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