嫌われ松子の一生

著者 :
  • 幻冬舎
3.66
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  • (4)
本棚登録 : 896
感想 : 221
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344002852

作品紹介・あらすじ

三十年前、松子二十四歳。教職を追われ、故郷から失踪した夏。その時から最期まで転落し続けた彼女が求めたものとは?一人の女性の生涯を通して炙り出される愛と人生の光と影。気鋭作家が書き下ろす、感動ミステリ巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 若い頃の浅はかとも言える行動で自業自得とも思い読んでいたが、それだけでもなく。

    ただそれだけの判断ミスがあれよあれよと地の底に転がっていく人生は他人事ではなく当に誰にでも起こりうるんだよなぁとも思いながら読んだ。

    場当たり的な行動をしたりするが松子のスペックはとても高いから少し違うだけで劇的に人生は変わっただろうに。

    最後まで本当に救いがないがなんだろう、またいつか再読したい、そう思った。

  • 果てしなく要領が悪くて、場当たり的に取り返しのつかないことをしてしまう人生。
    そのせいで実家にも一生帰れず、新しい家族を作ることも叶わず、本当に救いがない。

    やっと立ち直って明るい人生が見えるかと思ったところで、見知らぬ若者たちにリンチされて死んでしまうなんて…

    でも、死ぬ前に本当は妹のことが大好きだったことに気づいて、その妹が待つ天国へ旅立っていけたのはせめてもの救いだろう。
    それに、死後ではあるが愛して信じてくれる甥っ子がいて、何十年かぶりに川尻家の一員となった実感があったのではないかと思う。

    松子自信の人生は余りにも悲惨なものであるが、甥っ子がその人生を追う構成のため、松子の人生が肯定されるニュアンスもあって、読み手としては暗い気持ちになりすぎずに読み終えることができた。

  • 「男に流されて仕事をやめ、体を売るわクスリは打つは。ソープ嬢のときヒモを殺して投獄、脱獄未遂あり。」
    概略だけまとめると、とてもまともな人とは思えない、そりゃ一族の面汚しと言われるのも仕方ないと思っちゃう。

    けど、遺品整理を進めながら、松子を知る人の話を聞いていくと、どうもそんな簡単に片づけられる人生ではなかった気がしてくる。とんでもない人生だし、成功した人生でもないけれど、少なくとも一人の人がこの世に生まれて、自分なりに苦しんでもがいて立ち上がって、必死に生きた一生であったことが見えてくる。
    そうして男子大学生は、見知らぬ叔母さんの人生を通して、初めて自分の人生を考え始める。
    という感じのストーリー。

    感想としては、もう、怖いですよね、人生。
    山田詠美「学問」を読んで以降の僕の圧倒的な人生の実感は、「青春は綱渡り、死と隣り合わせ」である。これを大人はみんな(ほとんどそれとは知らないうちに)死に物狂いで向こう岸に渡り切ってきたのだ。奇跡的に。

    松子はそれを踏み外した。残念ながら。悪い人だから踏み外す訳じゃない。それが怖い。中村文則「土の中の子供」に見られるように、生い立ちが踏み外させることもあるし、絶望的な生い立ちでありながらも渡り切る人だっている。

    変な言い方ですけど、まともな両親のもとに生まれてくること、その両親がまともに育ててくれること、自分を破壊するような人が周囲にいないこと、自分自身の性格が自己破壊的でないこと。これらの確率が仮に全て8割だと、つまり8割は大丈夫だと仮定しても、これら4つの条件すべてを満たす確率は、0.8の4乗で、わずか4割程度。10人に6人は踏み外すことになる。そう考えると、踏み外さないよう導いてくれた両親に感謝するし、関わってきたすべての友人たちに感謝するし、神にも仏にも感謝するし、生きてるだけでほんと有難いって気持ちになる。

    そして、頼むから子供たちよ、なんとか、渡り切ってくれ!と願う。
    いかん、もうほとんどの作品の感想がこの切り口になってきとる。

  • 3.65/867
    内容(「BOOK」データベースより)
    『三十年前、松子二十四歳。教職を追われ、故郷から失踪した夏。その時から最期まで転落し続けた彼女が求めたものとは?一人の女性の生涯を通して炙り出される愛と人生の光と影。気鋭作家が書き下ろす、感動ミステリ巨編。』

    冒頭
    『 平成十三年七月十一日付けの新聞記事より
      足立区日ノ出町のアパートに女性の死体
    十日午前九時頃、東京都足立区日ノ出町のアパート、ひかり荘一〇四号室で、ドアが開いていて異臭がするとの連絡を受けたアパート管理人が、部屋に入ったところ中年女性の死体を発見したと、警察に通報があった。』


    『嫌われ松子の一生』
    著者:山田 宗樹(やまだ むねき)
    出版社 ‏: ‎幻冬舎
    単行本 ‏: ‎381ページ

  • タイトルだけしか知らなかった作品をやっと読んだ。読む前は、なんだか任侠道に生きた女傑の話なのかと勘違いしていたけどまったく違い、ひたすら真の愛を探し続けたけれども しかし哀れで悲しい愚かな道を歩んでしまった可哀想な女「松子」の話だった。ちょっとタイトルが一人歩きした感がある作品だけど、福岡県人としたら馴染み深い地域や界隈や言葉がいっぱいあり親近感が持ててウンウンと頷きながら読了。

  •  中学校教諭だった松子さんが、どんどん転落していく。一生懸命生きているのに… 幸せになれなかった松子さんに合掌。
     「百年法」「ギフテッド」で私の評価5の山田宗樹さんの3作目の評価5です!

  • 三十年前、美人教師、松子二十四歳。泣きながら故郷を捨てたあの日。一瞬にして人生の歯車が狂ったー。
    百年法以来の山田宗樹san。現在(平成13年)と当時(昭和45年)からの同時進行。とても読みやすい構成と文章で、あっという間の読了。悲劇、不幸、躓き・・どうしてやってもいないことを言うの!とハラハラしながら読んでいました。第五章で幼少期のショウと松子が出会っていたシーンには、胸が熱くなりました。

  • だいぶ前ですけど、読みました。
    別に松子が悪いわけじゃないのに、すべてが悪いほうに向かっていく人生。
    それでも、自分はちょっと特別だと思っているとこが松子らしい。そうじゃなきゃ、こんな波乱万丈になりません。

    読みやすかったけど、軽く書きすぎて何が言いたいのかよく分かんなかったなぁ。
    映画は★★★★★

  • <松たか子がマツコ・デラックスに変わるほどの大事件!>


     かつて聡明で美しかった松子は、なぜ「嫌われ松子」と呼ばれる存在になり果てたのか? 一人の女の奇妙な一生を追った巨編! 引きずりこまれるものを感じて読みふけりました。
     女性の、女性としての、女性らしさを生かした生き方だとは言えるでしょう。それでいて、自分からは明らかに縁遠い人生でもあります。

     あまりにも濃密な松子の生涯。
    ・昭和気質の父親から認められたい一心で、優等生になる。
    ・父の関心を病気の妹に奪われる(と松子本人は認識)。
    ・教師になったが、大騒動を巻き起こし離職。
    ・将来性のない文学青年に貢ぐ。
    ・文学青年が自殺。
    ・その親友と不倫。
    ・風俗嬢に転身。
    ・自分を働かせた男を殺害。
    ・助けてくれた相手と同棲。
    ・刑務所入り。
    ・元教え子(ヤクザ)と関係を結ぶ。
    ・刑務所入りした元教え子を待つ女となる。
    ・捨てられる。
    ・腐る……。

     やることがやたらと女っぽいです★ 行く先々で手近な男にすがって、状況に流されて。一見ありとあらゆる手段で生き抜いているようでありながらも、松子は主体的に生きられなかったことが読み取れます。
     なぜなら、愛に飢えていたから。自立した女は愛されない(特に松子の父が望みそうにないのが病根でしょう★)と知っている松子は、意外なほど男に従順だったのです。
     読んでいる最中に、ただ一度だけおかしくなった箇所があります。松子の美貌がまぶしすぎて男が逃げ出し、松子が「どうしてなのっ?」と打ちのめされるくだり★ ごめんね松子。必死すぎると人はおかしいものですね。

     愛されようとしたのに嫌われた松子。ですが、どうしたことか、松子の生と死が滑稽でも私は愛おしさをおぼえます☆ きっと、どんな自分でも存在することは許されている。ただし、この人生の答えは、一度でも死に物狂いになった経験のある人が手に入れてほしい。なぜか祈りに似た気持ちでそう思ったのでした。

  • 壮絶で悲惨な松子という女性の生涯。

    これ程、あれやこれやに惑わされる人がいるのだろうか。
    頭が良くて、何でもすぐにこなせるようになる器用な人。
    なのに、最後はその人生を不遇のままに閉じることになる。

    松子は嫌われ、では決してなかった。
    境遇から、最後は一人になったけれど、その都度愛する人がいた、そこは幸せでいられた部分だと思う。

    松子に共感できることはない気がしているが、人の人生をのぞき見した感じで、読書としては興味深い時間だった。
    最近、この手の誰かの人生をたどる小説に巡り会いがち。
    かなり好みの本でした。



    2020.02.26
    再読

    何故松子はあの修学旅行の時に、あのような行動をとったのかが疑問。
    頭が良く、なんでもこなせる、実は出来る女のはずなのに、目先のことに惑わされ、短絡的に物事を片付けてしまうところがあった事が、その後の彼女の人生で分かるにつれ、あの行動も松子ならではだったのかと思わされました。

    転ぶ先によっては、幸せに暮らせたはずの松子の一生。
    物語としては面白かったですが、決して共感は出来ません。

    でも、やっぱり好みの作品。
    また機会があったら手にすると思います。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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