人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427303

感想・レビュー・書評

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  • 脳死、延命治療、臓器移植と重いテーマではありますが家族の葛藤や臓器移植ボランティアの活動、和昌が社長を務める会社の医療技術なども盛り込まれそれぞれの角度からそれぞれの考えが丁寧に解りやすく描かれています。

    途中、意外な展開に驚かされた「第4章 本を読みに来る人」 びっくりさせられた「第5章 この胸に刃を立てれば」での薫子の妹の娘、若葉の秘密など飽きさせない流れが続き、夢中で読みました。

    プロローグからエピローグへの繋がりは予想は付きましたが安心もさせられ重いテーマではあったけれど心地よい読後感でした。

  • ミステリでもないしSFと言うに科学技術は脇役で、母親の行動、心理描写がメインテーマになってくるので「文芸」と分類。
    脳死判定への疑問や「死」とは何かを考えるというテーマかなということで、十全にそれを受け取れたかどうかは分らんのですが、面白かった。

  • 祝!2020年100冊目!
    昨年30冊の男がまさかここまで成長するとは笑

    最後の方で薫子が言った
    他人の幸福に口出すする必要はないし、
    口出しされてもそれを説得しようとする必要もない
    というニュアンスの発言が印象に残った。

    読みながら、薫子をかわいそうな人と捉えてしまっていたが、それも自分の幸福の価値観を押し付けているということ。半年前くらいに観た映画「ミッドサマー」でも、同じような教訓を学んだはずであった。しかし、自分の頭はまだまだ固いままであった。他の価値観に寛容になろうとする前に、自分の価値観が絶対であるという考えを少しずつ崩していくのが先かなと思う。よく友達が自分の性格を「芯がある」とか「自分がある」とか表現するのはこういうところなのだと気付いた。

    そういった面ではいろんな作家さんの本を読むのは大事なはず。意識していこう

    脳死に関しては
    法律を作る人(=国会)と
    脳死に関する情報を多く持つ人(=医師)
    が異なるから、法律で強く規定できないのではないか。

    メーカーはお客様より製品に関する情報を多く持っているが故、お客様の期待を超えるものを作らなくてはならない
    という話をトヨタ生産方式の本で読んだ。それと関連して、やはり情報を多く持つ人が責任を持ってルールを作るべきなのではないかと思う。

    • わっかーさん
      100冊おめでとうございます!尊敬です
      100冊おめでとうございます!尊敬です
      2020/06/28
    • ノートさん
      うえい、これからも本とラジオでお互いしのぎ削っていこや
      うえい、これからも本とラジオでお互いしのぎ削っていこや
      2020/06/28
  • 離婚間際の夫婦の娘は、プール事故で突然脳死の状態になってしまう。一度は脳死判定を受け入れ臓器提供を承諾したが、娘の体が周囲に反応しているように感じ、延命処置を選択することに。

    脳死判定と延命処置というテーマがとても良かった。
    医療が進歩したゆえに、新たに生まれる問題。正解がないからこそ、人は他の選択肢の未来に思いを馳せてしまう。
    日本は臓器提供者がものすごく少ないそう。
    ただ、脳死判定を受け入れられない家族を責める理由はない。これを機に、自分の家族とも臓器提供について意思を確認しあった。

  • 日本の死の定義によって、暫定脳死の娘とどう向き合うかをめぐる家族の話。久々に泣きました。いつが人間の死なのか、理屈と感情では死の線引きをさるラインも違う。自分自身の命なら合理的に処理できても、大切な人だったら?大切な人の死の線引きをする立場だったら?読みながら想像して答えが出せなくなって、それぞれの視点や価値観から考える死の在り方が、どれも正しくて、でも1つには絞れなくて切なくなりました。クローバーのくだり、母の葛藤、弟の苦しさ。映画も見たかったなぁと悔やみました

  • 高度な技術と財力があるから、なせる技ではあるが、母としては諦めたくないのだろう。映画化されたが、そちらはまだ観ていないが、娘が動くシーンはどんなだろうか、と気になる。遠回りしたが、母の気持ちもやっと真実を認めたのだろうか。考えさせる小説。

  • 子供の脳死を死と受け止められず、現代の最新医療で在宅生活にまで持ち込んだ母、薫子。
    電気刺激で子供の身体を動かし、ぬいぐるみを受け取らせたり微笑ませたり‥‥狂気としか思えぬ薫子の言動に、何をもって死というのか、どのように決着をつけるのかまるで見えない展開となるが。
    [第4章本を読みに来る人]では薫子自身の心も揺れ動いているのがわかる。<人間は論理だけでは生きられない動物なのです>という言葉が薫子を支える。
    [第6章その時を決めるのは誰]では<この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供とために狂えるのは母親だけなの>という薫子の強い意思にぐっときた。
    そして結末に涙した。

  • 脳死判定は家族に委ねられているようなもの。
    目の前では眠っている(様に見える)のに
    まさか我が子が死んでいるなんて認められないだろう。
    ただでさえ人の死に関して素人なのに。
    この本を読んでおけて良かったと思う。
    今までより価値観が広がった気がする。

  • 「もう死んでいる」の定義。
    今家にいる娘は患者なのか死体なのか。
    それはこの世の誰も決める事ができない。
    ということは、どちらともとれる。

    この本はこれがすべてな気がした。
      
    読むのが辛かったし痛かった。
    でも読んで良かった。
    映画も観た。篠原涼子やばかった。私が想像してるまんまの薫子だった。

  • 脳死、延命措置、臓器移植。
    重たいテーマばかりで読んでいて胸が苦しくなった。

    これまで自分事として考えたことがなかったけれど、不慮の事故で夫や子どもに起こる可能性だってあるのだと気付いた。

    自分の子どもが「脳死の可能性が高い」と言われたら。
    受け入れられないと思う。可能性の話なのであれば、親としては脳死ではない可能性を信じたくなる。生きているかもしれないのだとしたら、できる限りのことはしたい。延命措置だろうとなんだろうと施すだろう。あえて検査をして脳死判定させて臓器移植…なんて、とてもじゃないが考えられない。
    では、自分の子どもが臓器移植を待っている側だとしたら。
    我が子を助けたい。早くドナーが現れてほしい。けれどドナーが現れたということは、どこかで誰かの子どもが亡くなったということだ。それは手放しに喜べるものではない。それに、ドナーが現れてほしい=人の死を願っているようで、想像上とはいえ我ながら嫌な気持ちになる。

    このそれぞれの立場の人の意思統一なんて、できっこない。
    薫子の『この世には、意思統一をしなくていい、むしろしないほうがいい、ということがある』という気付きには同意する。

    ラストシーンには感動した。薔薇の香り。薫子と和昌の愛情は瑞穂に届いていたのかもしれない。真相は分からないけれど、そうであってほしい。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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