人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.85
  • (637)
  • (1183)
  • (746)
  • (108)
  • (22)
本棚登録 : 13798
感想 : 898
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427303

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読みやすく最後まで一気に読みました。
    わたしも1人の母親として、また医療者として、脳死について考えさせられました。狂気的な部分も、わたしもその立場だったらどうだろうと、考えながら読み進めました。
    深く考えさせられる一冊です。

    • yhyby940さん
      はじめまして。「いいね」ありがとうございます。東野圭吾さんの作品にはハズレがないように思います。母親の目線で読むと感じる部分も、たくさんおあ...
      はじめまして。「いいね」ありがとうございます。東野圭吾さんの作品にはハズレがないように思います。母親の目線で読むと感じる部分も、たくさんおありなんですね。映画化されたものも視聴しましたが、本のほうが感じる部分が多かったように思います。
      2023/03/21
  • 著者とタイトルだけ見て
    「はは~ん。ミステリーですな~」と思って読んでみたら…
    ミステリーというよりも命を考えさせる内容でちょっと戸惑った~

    離婚寸前の夫婦の一人娘・瑞穂が事故で脳死。
    娘の脳死を受け入れらない母親・薫子の気持ちを汲んで脳と身体をつなぐ研究と開発をしている夫の提案で新しい技術で瑞穂の身体を”生かす”のだが…

    脳死は人の死か?
    人の死は一体何が基準なのか?
    日本での臓器移植、特に子供についてのハードルの高さ
    そして子供の死によってそれぞれが抱える闇と溝

    若い頃に、仕事の先輩に
    「胃ろうをどう思う?」と聞かれて困ったことがあった
    その時にまだあまりそんなことを深く考えることがなかったこともありちゃんとした答えができなかったのだ。

    死に対して考えたことのなかった若い頃の私にはちゃんと答えられなかったし、考えるという機会もなかった。

    でも今ならちゃんと答えられる。
    それは多くの人の死や悲しみや苦しみを知ったから

    人の死に対する考え方やとらえかたは
    その人経験や生き方が強く反映する
    それに加えて続柄も強く関わる

    人の死の基準に明確なものはないといえばない
    内臓の活動の死なのか、脳の停止なのか、はたまた心の死なのか

    私が薫子ならどうしただろうか?
    おそらく女性なら読みながら必ず考えるに違いない

    東野圭吾さんの作品は本当に幅が広い

    さて、あなたが薫子ならどうしますか?

  • 東野圭吾のすごいところは、多作であるということと、そのどれもが素晴らしいということだ。
    わたしがわざわざいうまでもないけど。

    夫の浮気が原因で離婚することが決まっていた夫婦。娘である瑞穂の私立小学校受験が終わるのを待って、正式に手続きをすることになっていた。しかしそんな折、その瑞穂がプールで溺れ、脳死状態になってしまう。臓器提供をどうするか医師から問われた母の薫子は、生前の優しい娘の言動を思い出し、きっとこの子ならそうするに違いないと臓器提供を決意する。
    最後のお別れの日、娘の手を握っていた両親は、それが微かに動いた気配を同時に感じる。医学的にはありえないと医師は言う。しかし心臓は動いているのだ。自発呼吸はできないものの、人工呼吸で肺に空気を取り込んでいるのだ。この子は死んでいるわけじゃない。

    金銭的な理由で、薫子は離婚を取りやめた。瑞穂を家で看るためには莫大な費用がかかるからだ。彼女の夫、つまり瑞穂の父親の和昌はIT系機器メーカーの社長であり、人間の補助となる機械の開発を積極的に進めていた。脳死状態でありながらも成長し続ける我が子のために、和昌が自分の会社の有能な社員を自宅へ呼んで対応させたことにより、電気信号によって瑞穂の手足を動かせるようにまでなる。
    しかしこれは勿論瑞穂本人の意志ではない。

    読みながらすごく考えた。本から離れていても、事のなりゆきについて思う時間は多かったし、これを読んでいない友人にあらすじを話して、脳死について話したりもした。
    「ねえ、いったいどうしたらいいと思う?だって成長してるんだよ。なんで生きてるって認められないの?」
    考える。たくさん考える。そして想像してみる。
    『脳死』という言葉について。
    脳が死んでいても、ある条件を満たせば身体は成長していくということについて。
    もし触れた頬が温かいのであれば、髪も爪も身長も伸びているのであれば、それをどうやって死と受け止めればいいのか。

    そうやって、物語の中盤までわたしは母親である薫子側だった。
    だけど途中から、その異常さに恐ろしくなった。これからいったいどうなるのだろうと、この物語の着地点はどこにあるのだろうと不安になった。
    だけど、
    一瞬ゾクリとさせながら、そこから一気にラストに向かう様は、本当に素晴らしいのひと言に尽きる。胸がいっぱいになった。
    この物語の結末はこれしかない。東野圭吾は凄い。凄すぎる。

  • 説明調にならずに背景情報を提示し、色んな立場の人を登場させながら、物語としてきちんと成立している。一気に読んでしまいました。

    命の形は無数にあっていいと思うけど、法律はどこかで線引きをしないといけないわけで。
    誰に共感するかで意見分かれるだろうなぁ。
    珍しく本を読んで人と話したくなりました。

  • 東野圭吾らしいミステリーではないけど東野圭吾らしい感動を感じる作品。人はどこから死んだと言えるのかその問いの深さを考えさせられるし、臓器移植だとか脳死だとかについてもすごく勉強になる。感動と葛藤と学びと、すごく色々なものが詰まった濃い物語になっている。映画版のポスターに「娘を殺したのは私でしょうか」という一言が添えられているが、この言葉がこの物語の全てだと思う。万人に見てほしい本。

  • 瑞穂は生きているのか、死んでいるのか、それはこの世の誰にも決められない。

    重いテーマだったけど、とても読みやすく、脳死について、臓器提供について考えるいい機会になった。子供を守るためなら狂える。どの親でもそう思うだろう。

    彼女の介護と愛は完璧だった。だからこそ奇跡は起きたし、瑞穂の生命力を感じることができたのだと思う。瑞穂は母の愛をきっと喜んでいる。それで十分だと思う。

    瑞穂の弟の生人を怒り飛ばしたり、従姉妹の若葉を傷つけたり、先生に対しての態度も、薫子には寄り添えないこともたくさんあった。

    生人だって我が子なのに。生人の苦しみ、若葉の秘めた想いになんとも言えない気持ちになった。東野さんらしいなぁ。

    ドナーを待つ親の気持ち。ドナーが現れたと言うことは、誰かが子供を失ったと言うこと。

  • ⭐️3.4

    もしも自分の子供がプールで溺れて脳死になったら、と考えたら母親の辛さも分かるし初めは感情移入したけど、徐々にエスカレートする行動には狂気を感じた。
    『この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供のために狂えるのは母親だけなの。』脳死は本人に意見が聞けないし親に決断が委ねられるけど心臓は動いているし眠ってるだけと思うといつか目が覚めると希望を持ちたいよね。
    ラストエピローグの男の子がプロローグの男の子と繋がって終わり方が良かったなぁ。

  • プールで溺れた6歳の娘、瑞穂。意識は戻らない。

    「脳としての機能は失われている可能性が高い」

    進藤医師は言う。

    別居中の夫、和昌と話し合い、薫子は脳死判定検査とその後の臓器移植に同意した。

    瑞穂は以前、見つけた四つ葉のクローバーを摘み取らず、「他の誰かのために残しておく」と言った。

    そんな瑞穂なら、他の困っている人の役に立ちたいと思うだろう、それが臓器移植に同意した理由だった。

    別れの挨拶のため、和昌は自分の手のひらに瑞穂の手をのせ、その上に薫子が手のひらを重ねてきた。

    そのとき、瑞穂の手が、ぴくりと動いた、ような気がした。

    「まだ生きてる」

    確信した薫子は、瑞穂を守り続けることを決めた。

    読み進めることがつらかった。

    良作であるのは間違いない。現実に同じような体験をされた方はもっと過酷な毎日を送られているだろう。

    「自分ならば」と考えると、何もできない自分が浮かび、これを読むのがやっと。

    それも著者が読みやすくしてくれているから。

    ・プロローグとエピローグに、瑞穂の臓器を提供されることになる宗吾少年が登場すること。

    ・薫子が臓器移植を待つ立場の両親から、「臓器移植は要求したり期待したりするものでない」というドナー側を思いやる発言を直接聞いたこと。

    ・瑞穂が亡くなる直前に薫子の枕元に現れたこと。

    ・薫子の3年間の献身のおかげで、移植を可能にするほど、瑞穂の健康が維持されていたこと。

    これらのキセキ(救い)のおかげで最後まで読むことができた。

    でも生きている限り、こんな過酷な状況でないにしても、生死には向き合っていかざるを得ないのだろう。そのときは、こんな僕でも逃げてばかりではいられない。

    akodamさん、いつもながら、いい本の紹介ありがとうございます。

    これからも引き続きよろしくお願いいたします。

    • akodamさん
      shukawabestさん
      おはようございます。
      レビューを拝読し、先般視聴した本作品の映画の光景が蘇りました。

      shukawabestさ...
      shukawabestさん
      おはようございます。
      レビューを拝読し、先般視聴した本作品の映画の光景が蘇りました。

      shukawabestさんが仰るように、我々は常に生死と向き合って生きていくしかないのだと私も思います。

      もしも自身が脳死と診断された時の意思表示を予め整理し明確にしておくこと。

      これもまた、死生観と向き合う一つの準備事だと改めて感じました。

      レビューありがとうございました。
      2021/10/05
    • shukawabestさん
      akodamさん
      コメントありがとうございます。もっと強くならねばと思います。それも、自分と繋がってくれている人たちに違和感を持たれることな...
      akodamさん
      コメントありがとうございます。もっと強くならねばと思います。それも、自分と繋がってくれている人たちに違和感を持たれることなく自然な形で。

      この作品や「虚ろな十字架」のような「重い」本を読む意味は、自分を見つめ直す、というところにあると思います。

      これからもよろしくお願い致します。
      2021/10/05
  • 【感想】
    かなり残酷でディープで、救いようのない物語でした・・・
    脳死した自分の娘を臓器提供せずに何とか生きつないでいく母子の物語。
    読んでいるとやはり母親の狂気性が目に余りましたが、いざ自分が同じ立場になったら決して非難できるものではないのかもしれないとも思えた。

    娘の死後、母親が言った台詞が胸に響きました。
    「何とも思いません。私がその人たちを説得する理由なんてありませんから。
    たぶんその人たちが私を説得することもないでしょう。」

    必ずしも、それぞれに色んな価値観がある中で、人と人とは分かり合えないものなのかもしれない。
    というより、他人と分かり合う事なんてそもそも必要ではないのかもしれない。
    色んな価値観を否定することなく生活する事は、普通に生きていく上でも必要な考え方だと読んでいて感じました。


    【あらすじ】
    答えてください。娘を殺したのは私でしょうか。
    娘の小学校受験が終わったら離婚する。そう約束した仮面夫婦の二人。
    彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前。
    娘がプールで溺れたー。
    病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。
    そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。
    過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか。
    愛する人を持つすべての人へ。感涙の東野ミステリ。


    【引用】
    p126
    横隔膜ペースメーカー。
    人工呼吸器を付けなくとも自発呼吸ができる。
    一言でいうと、横隔神経に電気刺激を与えることで、人工的に横隔膜を動かす装置。
    心臓のペースメーカーと発想は同じら、

    考案されたのはかなり前で、1970年代にはすでに成功法がある。

    日本では殆ど実施されておらず、器具の入手が困難な上、メンテナンスも複雑で、おまけに費用が高額である。


    p426
    「何とも思いません。
    私がその人たちを説得する理由なんてありませんから。
    たぶんその人たちが私を説得することもないでしょう。
    この世には、意思統一をしなくていい、むしろしないほうがいい、ということがあるの思うのです。」

  • 娘が溺水事故でおそらく脳死という状況になることから物語が始まる。母親の一人称から読み取ると、娘を懸命に看病する親と見れるが、他人の視点からでは死体を玩ぶ異常者のように見える。そんなキミ悪さが伝わる作品だった。
    また日本の脳死判定、臓器移植制度にもかなり精通しており、問題課題も浮き彫りとしているのも特徴的だった。

全898件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

東野圭吾の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×