人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか―― スペイン サン・セバスチャンの奇跡(祥伝社新書284)
- 祥伝社 (2012年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396112844
感想・レビュー・書評
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この記事(http://lrandcom.com/san_sebastian)が面白かったので、本も読んでみたのだけれど、サン・セバスチャンの人たちのパッションが半端ない。そして、人を育てる&触発し合う仕組みが素敵。
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スペイン、バスク州サン・セバスチャン。大西洋ビスケー湾に面したフランス国境の人口18万の街にはイギリスの「レストラン」誌が選んだ「世界のベストレストラン50」の2位ムガリッツ、8位アルサックという2軒がランクインしている。ミシュランも三つ星が3点、二つ星が2店、一つ星が4店と星も人口一人当たりでも、面積あたりでもこの街が世界一だが昔から有名な観光地だったと言うわけではない。1970年代にまだ若いアルサックがヌーベル・キュイジーヌと出会い衝撃を受けバスク料理にこの手法を持ち込んだ。アルサックを中心にサン・セバスチャンの若いシェフが作り上げた料理はヌーベル・キュイジーヌのブームが去っても残り、「ヌエバ・コッシーナ(新しい料理)」としてスペイン中に広まり、その後世界一予約の取れないレストランとして有名になったカタルーニャのエル・ブリにより世界に知られるようになった。
ヌエバ・コッシーナは例えばエスプーマという何でも泡にする器具を使った調理や、真空調理、液体窒素での瞬間凍結などの伝統的ではない技法を使っている。これらは分子ガストロノミーという学問分野となりレストランに併設される料理研究室で専任スタッフが調理法や料理を科学的に研究するようになった。味皇様が登場しそう・・・。2011年にはバスク・クリナリー・センターという4年制の大学が開校し料理学科は正式なカリキュラムになった。阪大の料理生物学は時代の先端を行ってたのかもしれないと思うと残念だ。サン・セバスチャンシステムでは誰かが新しい調理法を開発するとそれを教え合う。見て覚える和食やフランス料理の徒弟制度とは全く考え方が違う料理のオープンソース化だ。そしてこの新しい料理を産業として輸出することまで考えている。街全体が美味しい料理だらけだと聞けば行きたくなる。それが狙いだ。分子ガストロノミーのレストランは「タパス モレキュラーバー」「レフェルヴェソンス」など日本にもある。残念ながらテレビで見たことがある程度で食べたことはないが・・・
スペインレストランはイタリアン同様ドレスコードは緩くカジュアルだ。またサン・セバスチャンの街のもう一つの楽しみは小さな立ち飲みバルでの食べ歩き。街中が阪神百貨店B1のスナック・パークだと思えばそれはつまみ食いでも楽しかろう。しかもこう言った店のピンチョス(小皿料理)もオープンソースによりレベルが上がったという。本のオビには「ゆるキャラとB級グルメでは、世界の観光客は集まらない」とあるがピンチョスはB級グルメっぽい。
もう一つサン・セバスチャンが観光の街として成功した要因はヨーロッパのインフラにもある。LCCの発達、ユーロ、域内ではパスポートが不要など気軽に旅行できる環境が揃っている。またホテルも日本とは違い部屋単位で借りることができ安上がりだ。サン・セバスチャンは一生懸命観光すると言うより昼から飲んで食ってゆっくり昼寝してまた飲んで食ってと言う様な場所なんだろう。バスク人は割と時間に正確らしいが。それと例えばムガリッツでは予約で日本人と言ったわけでもないのに「感じ、想像し、回想し、発見する150分 瞑想の150分」と言うカードが座席に準備されており、20カ国語分の用意が有るらしい。観光産業に力を入れるバルセロナ市内のツアーバスは各国後ガイドが聞けそれを国旗で表すなどキャッチーでわかりやすい工夫がされている。ちゃんと受け入れ態勢がないとうまい料理だけで観光客が集まるわけでもない、当たり前ですけど。サン・セバスチャンは2016年の欧州文化首都になっている。
作者はハイパーメディアクリエーター改めハイパーノマドの高城剛。ノマドなのでスペインにも住み、物書きも仕事の一つ、しかし今一何をしてる人なのかわからない。うまいものを食ってることは確かな様だ。 -
スペイン サン・セバスチャンの奇跡。
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「観光」にどう取り組んでいけばいいのかのヒントに気づかせてくれた1冊。
中でも特にこころに残ったのは、国内から国外へ旅行すれば、その人が広告塔になる。だからまずは自国の人を外へと送るべきというのはまさしく。また、料理業界のオープンソース化の話は料理に限らず、色んなジャンルで応用できること。
家作りや町づくりなど、もっと情報をオープンにしたほうがいいところはたくさんある。情報はアップグレードされてこそのものと改めて思った1冊でした。 -
ヌーベル・キュイジーヌ
ポール・ボキューズ、ミシェル・ゲラール、クロード・ロペ
ヌエバ・コッシーナ
新しいキッチンツール
テクスチャー・シリーズ エル・ブリ
エスプーマ、真空調理
分子料理
あらゆる料理は物理化学の式で表せる
単なる料理人の経験則であった料理を科学的に検討することを可能に
エルベ・ティス&ピエール・ガニエール
料理研究室をレストランに併設する
料理は「見た目が同じ」か「素材が同じ」しかない
ルイス・イリサール -
サン・セバスチャンとビルバオに行きたい
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本屋の立ち読みで読了できるくらいの内容量だけどメッセージは濃かった。この本を読んだ人は普段考えないようにしている日本の先行き暗い未来をもう一度見つめ直し、自分が何とかしなければいけない!と思ったことでしょう(いや、高城フリークの人間ならばw)。実際に地域活性というのはそれだけ重要なことで、内需に媚を売るのではなくグローバルな視点を持って地域をブランディングしていくことが大事だと説く。ここでもやはり日本で大事なのは世代交代なんですよね結局。相変わらずブレ幅の少ない高城さんの言うことはもっともっといろんな人のもとに届いて欲しいと思う。提言的なものだけでなく、サンセバスチャンの事についても色々と載っていて、歴史文化など非常に興味深く、いろいろ考えさせられる。バスク地方と日本を対比して考えたとき、やはり決定的に日本が間違えたのはアメリカナイズしたことだったんだろうなと。。その斑の部分が浮き彫りになったからこそ、脱アメリカがやっぱり日本が閉塞感から立ち上がる手段なんだと思うけど。うーん。