戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)

著者 :
  • 創元社
4.20
  • (296)
  • (252)
  • (100)
  • (17)
  • (10)
本棚登録 : 2432
感想 : 321
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422300511

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 米国の対日政策はあくまでも米国の利益のためにある
    米国の対日政策は、米国の環境の変化によって大きく変わる
    米国は自分の利益にもとづいて日本に様々な要求をする

    戦後の日本の外交政策は対米追随と自主路線の戦いである

  • 久し振りに本を読んで興奮し、そしてショックを受ける経験をした。
    戦後の日本が歩んだ歴史における"タブー"に真っ向から挑んだ著者である孫崎氏には敬意を抱かざるを得ない。

    本書における多くの書評にあるように、筆者は日本の戦後から2012年現在の野田政権までの歴史について、戦後の首相と外相を主人公として、様々な公式文書、論文、記事等を客観的証拠としながら、米国との外交を舞台に「対米追随路線」と「対米自主路線」という相反する対立軸を用いることで、「戦後日本史」というひとつの物語を展開している。

    そこには我々日本人がこれまで教えられたり、聞いてきたり、抱いてきた戦後歴史観とは全く異なる事実が浮かび上がる。
    米国がいかにして日本を利用しようとしてきたか、そしてこれからも利用し続けようとしているかが、平易かつ説得力のある文体であるがゆえに脳裏に焼き付くようである。
    本書で述べられている、戦後外交おける敗戦国(=日本)の屈辱、そして戦勝国(=米国)の圧倒的優位性が、21世紀となった現代までも"戦争というものの本質"としてあぶり出されていくのだ。

    高校生にも分かる文章で書いたというが、述べられている史実について若い世代も含めた多くの日本人に知って欲しいという著者の想いが痛いほど伝わってくる。
    同時に、残念だがGHQも含めた米軍、米政府、CIAといった組織の深慮遠謀には、まだまだ日本は遠く及ばないのかもしれないとも思わざるを得ない。
    米国は、戦争にせよ経済競争にせよ、とにかく勝つためであれば謀略でも何でもあらゆる手段を検討し尽くす。
    それが良きにつけ悪しきにつけ"戦略的"ということなのだろう。
    日本政府や官僚機構、そして日本国民がそこまで戦略的に米国と対峙できるか、甚だ疑問である。

    前述の対立軸を用いた戦後史の展開については賛否両論あると思うが、何より重要だと感じるのは、著者が記載していることの事実云々ではなく、日本の歴史教育そのものが海外も含めた"方々から"歪められているのではないかという危機感である。
    自分は大学入試センター試験で日本史を選択したが、現代史はほとんど試験範囲とならない。せいぜい第2次吉田茂内閣くらいまでである。
    そのため、自分自身も歴史が好きであったはずなのに、現代史については全く無知に近かったと思い知らされた。
    今となっては、故意に試験範囲から外しているのではないかとも思える。

    また教科書に記載されている内容そのものについても、多くの歴史評論家が語っているように、諸外国に配慮しすぎて史実が隠されたり、曖昧にされているため、多くの日本人が戦後から現代までのつながりを理解できないでいる。
    教科書問題については、とかく文科省が槍玉に挙げられるが、それだけの問題ではないということが本書でようやく理解できた気がする。
    竹島や尖閣諸島などの領土問題においても、正しい歴史認識を持たないことには、単なるつばぜり合いに終始し、マスメディアを喜ばせるだけとなってしまうであろう。

    歴史を学ぶことは、単に『教科書に述べられた過去の出来事』を覚えるだけではなく、過去を多角的に分析・検証し、これからの時代を生き抜くための指針を"自分なりに"思考し見出すことだと、改めて実感した次第である。

  • オーディオブックにて読了。

    *対米自主路線を貫く代表政治家、重光葵、鳩山一郎
    *鳩山由紀夫氏は、対米対立路線、そのあとの民主党二人の総理は対米追随路線
    *TPPは、製造業で衰退しているアメリカが、サービスにて、資本を海外から吸い上げるための政策。アメリカのためのもの。日本はこんなのものに入れなくてよい
    →ナショナリストである、トランプが脱退したのをどう説明するか
    ・トランプは、製造業びいき?
    ・筆者の主張が間違っている?


    本書は、多くの政治家が対米追随路線にあることを語っていたものの「なぜ政治家たちは日本ではなくアメリカの利益を優先した行動をとるようになるのか」という観点については、十分な説明が少なかったように思う。そこが非常に気になるところなので、今後、要勉強。本書を聞いていると「そりゃ、アメリカよりも日本の利益を日本の政治家は優先すべき。アメリカに従属するやつらは何をやってるんだ」という気持ちになる。だが、どう考えても、政治家が、本気で日本を貶めようとしているとは、思えないし、別世界のロジックが働いているのではないか。

    *本書のメッセージ
    ・日本の外交を、アメリカからの圧力という観点から整理すると、大きな流れが見えてくる

  • 戦後の自主路線と対米追従路線について、分かりやすく書かれている。
    かつて国のために懸命に動く政治家がいた事実、
    現在の米国の顔色伺っている現実、
    どこまで事実を記しているかまだ理解できないが、疑問に感じていた事が少し解れた気がする。

    特に印象に残った事は、
    条文の文面ひとつで、意味合いが大きく違ってくる事。世の中利権争いに塗れている。

  • ●戦後史の日本政治のキーワードは「自主路線」と「対米追随路線」であることがよくわかった。

  • 2012年の創元社のベストセラー。2017月10月の衆議院選のころ読む。
    日本の戦後政治と米国米軍との関係について、元外務省官僚の視点から叙述。
    気づいたこと。
    1、自民党結党時からの綱領の「改憲」とは、鳩山一郎総裁の「自主外交」とセットだったこと。自主外交とは、米軍に出ていってもらうこと、その上で防衛力を備えるための改憲のことだった。同じ憲法のまま、今の自衛隊は世界7位の軍隊になっているので、もはや、改憲は必要ないことになると思う。「自主外交」はいまだ達成されていない。
    2、著者は岸内閣の再評価が必要という。著者のいう反安保デモCIA陰謀説はいかがかと思うが、日米安保条約の内容は評価すべきとしている。すなわち、安保条約での両軍の軍事行動は、日本および日本の近海において、日本が攻撃を受けたときに限られる。これは先守防衛ということだろう。さらに、両国の国会決議などが必要であり、国連軍的な行動であること。集団的自衛権を認めていないのである。それでも当時は平和を求める国民の半数以上が安保には反対だった。
    3、1のように1950年代までは米軍の撤退のスケジュールについて発言する日本の政治家は少なくなかったし、60年代のベトナム戦争にも日本は自衛隊を派兵していない。そこから離れて、対米従属に大きく舵をきったのは00年代の小泉内閣のときだと著者はいう。しかし対米従属がいつから強まったかというと、日本が経済力をつけた80年代の中曽根内閣のときに大きな変化があったようにも思う。
    戦後72年。それにしても米軍は、100年も200年もいる気なのだろうか。

  • 自主路線と対米追随。日本がいかにアメリカのいいようにされてきたかがよくわかる。日本が今後いかにして真の独立国となるかを考えさせられる本。政治家は皆読むべき。

  • 今すぐ読もう!以下、抜粋です。

    「検察は米国と密接な関係をもっています。とくに特捜部はGHQの管理下でスタートした「隠匿退蔵物資事件捜査部」を前身としています。その任務は、敗戦直後に旧日本軍関係者が隠した「お宝」を摘発し、GHQに差しだすことでした」

  • 「自主」か「追随」か。米国からの圧力に対する2つの路線を軸に、日本戦後史を総括しようとする。
     日本が8月15日を「終戦記念日」と定めていることの欺瞞から、著者は筆を起こしている。本当に戦争が終わったのは降伏文書に署名した1945年9月2日。つまり、日本人は「敗戦記念日」に向き合ってこなかったのだ。日本は戦争に負けた、アメリカに無条件降伏したという厳しい現実から、ずっと目をそらし続けるための「終戦記念日」なのだと。
     巻末に、戦後の歴代首相を「自主派」「対米追随派」「一部抵抗派」で分類しているが、長期政権となったのは見事に「対米追随」グループというのが面白い。おおまかにみればアメリカに都合の悪い政権は長続きしない、どこかで足をとられる、追い落とされるということになっている。そういう仕組み(経済界や検察、マスコミ)が備わっているのだと説く。本書のスタイルは、戦後史を俯瞰して、この現象を実証していくということになる。
     具体的に見てみよう。評価の高い吉田茂はたんにアメリカのイエスマンであり、日本に米軍基地が居座り続けのもこの首相による密約が原因だったこと。「昭和の妖怪」岸信介が意外にも「自主」路線の持ち主で、それがゆえに安保騒動で潰されたこと。米国の意に反して中国との関係改善に力を尽くした田中角栄も、アメリカとそれに従属する勢力によって政治的に葬られたのだということなどが、証拠をあげつつ論じられている。
     歴史的な事実はともかくとして、その解釈として、個別の反論はあるだろうが、それをもって本書を「陰謀論」扱いするのは間違っている。「米国の圧力」という補助線を引きながら戦後史を見るという本書の視線は、全体として正しいものと考える。むしろ、そういう視線をこれまでとることができなかったということが、(敗戦から)「目をそらし続けている」証拠なのだ。
     日本の右翼がなぜ「親米」なのか、戦後の権力の構造をもとに理解できたという点でも、自分にとって価値の高い1冊となった。

  • ツイッターでこの人を見つけて気になった。
    日米関係を軸に戦後史を考える本。自立するのは大切だ。

全321件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

孫崎享の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
レイチェル・L....
佐藤 優
内田 樹
ジャレド・ダイア...
古賀 茂明
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×