戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422300511

感想・レビュー・書評

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  •  義務教育ではおざなりに教えられる戦後史、特に日米外交史について、最近判明した史実を取りまぜて、あぶり出している。正直言って目からウロコであり、新たに明らかにされる事実によって認識が変わっていくところは、まるでよくできた歴史ミステリを読んでいるかのようだった。

     元外務省の著者がキーワードにしているのが、米国の圧力に「追随」するか、わが国の「自主」路線を尊重するかの、割とはっきりした選択だ。もちろん両国の思惑がからむ部分だから単純にわり切れないところもあるが、これまでの内閣や外務省のスタンスを、この軸ひとつで解説してくれるのはわかりやすかったし、歴史の勉強にもなった。
    ・吉田茂政権は、なぜ長期続いたのか。
    ・戦後のジャーナリズムや大学関係者、経済同友会を作り上げたインテリたちは、なぜ親米派なのか。
    ・昭和天皇は、米国が沖縄を継続して統治することを望んでいた。
    ・現在まで続く日本と諸外国との領土問題は、米国が仕掛けたもの。
    ・米国は日米安保条約よりも、日米地位協定を改訂されることに抵抗する。
    ・条文の中の「~することを合意する」と「~できる」には大きな違いがある。

     さらに「在日米軍問題」と「中国問題」に対してどう対応したかで、その政権の行く末は予測できてしまうらしい。この視点でいまの安倍政権を見ると、どちらかと言うと国内の経済建て直しに注力しているよう(対米追随路線)に見えるので、しばらくは続きそう。

     なお、敗戦後すぐの日本が対米追随路線一色だったかと思いきや、当時の内閣や外務省の中にも「これ以上は要求を呑めない」と敢然と立ち向かった人たちがいたことは記憶にとどめておきたい。

     本書は高校生が読めるように、と書いたらしいが、高校生だけのものにしておくにはもったいない。巻末には「ポツダム宣言」と「降伏文書」も掲載されているが、初めて読んだし、多くの日本人も一度は読んでおくべきではないか。

  •   アメリカっていやな国だとは思っていたけど、上手に日本をコントロールするなあ。日本はこれからどうなるんだろうかと心配になるけど、政治家の中にも頑張っていた人がいるのを知って少し希望も見える。そういう人はたいていマスコミからはたたかれているから、こういう話は、マスコミではとりあげられないんだろう。
     私の子どもの頃の雑誌には、アメリカは自由の国あこがれの国懐の広い国としてえがかれていた。そうやってアメリカに対するあこがれが刷り込まれたんだろうなあと思う。大人になってイラクのあたりからやっとアメリカおかしいんじゃないの?と思うようになったんだからちょっと勉強不足でした。

  • 全体を通して、納得させられる内容だった。おそらく今の自民党政権は全力で「対米追従路線」を走っているのだと思うが、それは米国の理解も利益も図りつつ日本独自の指針を立てられるほどの想像力も外交力もないからなのかもしれない。ついこの間、渡辺謙扮する吉田茂のドラマが放映されていたが、一言で「すごく恰好いい」吉田茂が描かれていた。この本によればこれは大いなる誤解を生むもので、やはりメディアの報道の判定にはいつも慎重にならなければならない。というか、真実なんてどこにあんだ?とすら思う。

  • 日本が事実上アメリカの属国であるということは、アメリカに長年住んでいる自分にとっては容易く想像できることだったが、米政府の公開資料や日本の政治家の著作などから丁寧にそのからくりを明らかにしてくれたこの本は、これまで自分の言説を【陰謀論】だと一蹴してきた友人達に是非読んでほしいと思った。

  • 戦後就任した首相を、自主路線派と対米追従派の二つに分け、各々の施策を解説しているため、非常に読みやすい。この本によれば、米国の意向に従わない自主路線派はことごとく、あの手この手で失脚させられている。著者は自主路線派を標榜しているわけなので、額面通りには受け取れないが、中々説得力はある。ただ対米追従できた事で受けた恩恵も現実としてあると思う。結局の所、この国をどういう国にしたいのか?各論ではなく、大きな視点での議論を今の政治家には期待したいと思った。

  • すべてはアメリカが操作していた。一見ただの陰謀史観、でも納得してしまう。戦後史の中で評価の低い首相ほどアメリカの圧力に抵抗していた。アメリカの利益に反するとメディアの大半が属米で世論操作を行い、検察を使って疑獄を作り、陰に陽に恫喝をする。官僚もサボタージュする。強いものに巻かれるのが日本人の特性なのか。とにかくメディアを信じない。大きな国際社会とアメリカの目的の中で、今の政府がなにをしようとしているのかを自分で考えないといけない。個人的には福田康夫。アジア外交、内政含めいい政策をしていたと思う。応援していただけに何で内閣改造直後にあんな辞め方をしたのか不思議だったが、これを読んで納得した。

  • 戦後の外交を動かしてきた最大の原動力は
    米国から加えられる圧力に媚びる「追従・依存」路線と
    それに抵抗する「自主」路線のせめぎ合い、
    相克だったということを事実をもって説明している

    60年安保や米国に逆らった総理大臣の行方など
    大学教授などの専門的立場にある人を含めて
    一般の市民が思い込まされてきた常識と
    事実は掛け離れていたことを
    呆れてしまうほどに思い知らされる内容である

    冷戦の終わったことで焦ったアメリカの産業軍属複合体が
    軍縮問題にパニクって無理やりソ連の代わりとなる敵を作り出す
    それが現在の泥沼ギャング社会を表面化する引き金となった
    70年前後からニホンも経済敵国に指定され
    ヤクザのように開き直った強引な内政干渉が日常茶飯事と成る

    戦時中に国民から供出させた物資が軍属によって隠匿せれていたものを
    洗い出して没収するために米国占領軍GHQが検察内に作ったのが
    「隠退蔵事件捜査部」であり
    その後「特捜部」となって実質アメリカCIA直属に近い状態にあるという

    ニホンの総理大臣で「自主路線」にあった人々が
    退陣に追い込まれた裏には特捜部があったという
    重光葵・石橋湛山・芦田均・岸信介・鳩山一郎・佐藤栄作・田中角栄・
    福田赳夫・宮沢喜一・細川護煕・鳩山由紀夫

    アメリカ「追従・依存路線」にはまった人々は
    吉田茂・池田勇人・三木武夫・中曽根康弘・小泉純一郎・
    海府・小渕・森・安倍・麻生・菅・野田・・・

    一分抵抗した人々は
    鈴木善幸・竹下登・橋本龍太郎・福田康夫・

    更に報道機関にも追従組織を作り外務省・防衛庁・財務省・学界をも飲み込んできた

    自主路線の人々を失脚させる道筋にも行きつかのパターンが存在する
    占領時代では公職追放=鳩山一郎と石橋湛山・財界人追放・
    検察の立証とマスコミの報道によって潰す=芦田均と田中角栄と小沢一郎と金丸信
    政府内部を分裂撹乱して追い詰める=片山哲・細川護煕
    スキャンダル等でマスコミと大衆を動員して追い詰める=岸信介
    アメリカの不支持を強調して勢力を弱める=鳩山由紀夫・福田康夫
    選挙で敗北に追い込む=宮沢喜一

    こうして続けてきた暴力的アメリカの戦略に屈せず自主路線を歩んでいる国もある
    カナダは隣国にありながらも毅然とした態度貫いてきていまうし
    ドイツや北欧も自主的だと思います

  • 戦後の歴史と日米の関係(アメリカの日本にたいする圧力とその
    日本側の対応の歴史)が詳細に書かれた本。
    戦後の歴史という意味でも、かなり有用な本だと思います。
    これを読むと、ある程度割り引く必要があるかとは思いますが
    ある意味日本の敵性国家は、アメリカだとおもいます。
    日本の政争とアメリカの関係。アメリカの横暴。
    マスコミのアメリカの追従。世論の無知
    世論やマスコミで大きく叩かれた、鳩山や福田(子)
    岸・田中角栄・小沢・竹下の各歴代の総理がアメリカと
    戦ってきたこと。むかしの占領時代やその後の冷戦
    時代のほうが、アメリカに対して気概をもった
    対策を持った人物が多くいたこと。


    やっぱりアメリカって恐ろしい国だと思います。
    また、そこにやっぱり人種差別があるのではと思ってしまいます。
    今後の政権やこれからの選挙などで、対米方針の考え方
    について誰がどちらなのかを見極めたいと思います。

  • 昨今の「原発ゼロ」に関する政府の右往左往にしても、オスプレイ配備問題にしても、本書を読めばその背景がくっきりと見えてくる。要は日本がアメリカの意に反した独自の動きをしようとすると、必ずアメリカ側からの掣肘が入り、結局はアメリカのいいなりになってしまうという構図だ。
    「日本はアメリカに隷属している」という事実をまずしっかりと認識し、その現状を容認(対米従属)するのか、改善(自主独立)していこうとするのか、我々一人一人が考え行動していかなければならない。
    政治家や評論家・マスコミが個々の問題にどのような発言をし、対処しているかよく観察してみるといい。アメリカというご主人様にべったりと媚びへつらう奴隷根性まるだしの輩がわかってくる。

  • 戦後の総理大臣らを,対米自主派,対米追従派という区分けをして戦後史を振り返った本。アメリカがどういう場面で日本に容喙してきたか,歴代の首相が取ってきた行動がいかなるものであったかなど,世間にあまり知られていないことをわかりやすく,詳しく書いてくれている。尖閣について中国が無理筋な主張をしてくるのもアメリカが一枚噛んでいることや,アメリカの本当の目的は地位協定に落とし込まれていて,地位協定のための安保条約であり,安保条約のための講和条約であったことなど,興味深い話がたくさん。対米自主派,対米追従派という観点だけで語るのはやや無理があると感じられるところもあるが,読み物としてかなり面白い。

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著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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