ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
- ダイヤモンド社 (2014年10月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478016381
感想・レビュー・書評
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ピクサーの理念や創造的な仕事をする上で大事なマネジメント、バランスの大切さを学んだ。
適切な環境、人材がいてこその優れたアイデアなんだと学んだ。どんな作品も始めは駄作といった言葉が印象に残った。その駄作を試行錯誤を繰り返して納得のいくものに作り変える根気と発想力、協力する力を身につけたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021京都外大図書館プロジェクト Library Explore Mission(L.E.M.)学生選書
京都外大図書館所蔵情報
資料ID:649410、請求記号:778.77||Cat -
ピクサーの技術的な話ではなく、クリエーターを取り巻く環境について書かれた一冊です。特に内製で商品やサービスを制作している企業の方は、クリエーターを取り巻く環境について改めて考えさせられると思います。
ピクサーの誕生からスティーブ・ジョブズとの思い出を辿りながら、会社としてチームとしてどう成長してきたのかを知ることができる一冊でした。 -
1.映画では常にヒット作を出し続けるピクサーがどんな会社なのか、内情を知りたくて読みました。
2.ピクサーは誰しもが情熱を持って仕事をしており、自分の創造力を常に発揮しながら映画を制作しています。これは、自分自身の力だけでは衰退してしまったり、削いでしまうことがあります。マネージャーとして、ピクサーがどうあるべきなのか、どうしたいのか、どのような人を採用し、育てていくのかが述べられています。
また、著者自身がどのような経験を経てピクサーを育ててきたのか、周りの人間関係をどのように乗り越えてきたのが述べられています。
3.常に情熱を注げられる組織にすることはとても難しいと感じました。大抵の人はできない理由を探し、「でも、だって、いや」と否定の言葉を繰り返し、指摘することで優越感に浸っています。ですが、それによって与える影響を考えてません。自分に囚われ、創造力が欠落しているしています。
ピクサーは創造力が勝負のお仕事です。いかにして、やる気を出させ、クリエティブな能力を形成していくかが会社の明暗を分けます。
人を基点に置いて物事を進めていく様子をみて、見習いたいと思いましたし、もっと人とコミュニケーションを取って行きたいと思いました。 -
ピクサーを特別足らしめているもの、それは「問題は必ず起こる」と思って仕事をしていることだ。問題の多くは隠れて見えない。それを明るみに出すことが自分たちにとってどれほど不快なことであっても、その努力をする。そして、問題にぶち当たったときは、全社全精力を挙げてその解決にあたる。盛大なイベントでも、砲塔のある仕事場でもなく、それがあるから私は毎朝会社に来たいと思う。私にやりがいと、明確な使命感を与えているのはそれなのだ。
…問題について考え、対処するのは、爽快でやりがいのある仕事だった。我々の目的は、ただヒット作品を生み出すスタジオをつくるのではなく、問いかけを続ける創造的な企業文化を育てることにある。
…映画をつくり続ける中で、私がそれまでピクサーが成功してきた理由だと思っていたことの中に、後で勘違いだとわかったことがいくつかあったが、まちがいようのないことが一つあった。それは、持続する創造的な企業文化を築く方法をみつけること―率直さ、卓越さ、コミュニケーション、独自性、自己評価といったものが重要だと口先で言うのではなく、それがどれほど不快な思いを伴っても、それを有言実行すること―は、片手間ではできない。日々努力のいるフルタイムの仕事だ。そしてそれを私はやりたいと思った。
…いいアイデアよりも、適切な人材と適切な化学反応を得ることのほうが重要なのだ。
このころ、ジョンが新しいフレーズを考えついた。「品質は、最良のビジネスプランである」。品質は、行動の結果ではなく、どう行動するかを決める前提条件であり心の持ちようだと彼は言う。品質が大事だと誰もが言うが、言う前に実行すべきだ。品質は日常の一部であり、考え方であり、生き方であるべきだ。最高品質の映画しかつくりたくないと社員が訴えたとき、そしてその理想に対する覚悟を証明するために限界に挑んだ時、ピクサーのアイデンティティは定まった。この会社は決して妥協しない。失敗をしないという意味ではない。創造に失敗はつきものだ。だが失敗したときには、自己弁護せずに向き合い、変化を厭わない。『トイ・ストーリー2』の制作での苦労を通して、内なる目が芽生えた。自分を批判的に見つめ直し、自己認識を改めるきっかけになった。この瞬間がピクサーを決定づけたと言ったが、私はそれを動的な意味で言っている。内省の必要性と実践はこのとき始まったばかりだった。
アンドリューが言うように、「それが批評と建設的な批評の違いです。後者の場合、批評すると同時に建設している。壊しながら建てている。たった今バラバラにしたピースを使って新しいピースを生み出している。それ自体が一つの技でしょう。どんな指摘をするにしても、相手を考えさせることが大事だとつねに思っています。『あの子に宿題をやり直したくさせるにはどうしたらいいか』というふうに。だから学校の先生と同じことをします。問題点を言い方を換えながら五十回指摘すると、そのうちのどれかが響いて相手の目がぱっと開く。『ああ、それならやりたい』って思ってくれるんです。『このシーンの脚本がイマイチ』と言う代わりに、『見終わった観客にあのセリフよかったよねって言ってもらいたくない?』と言う。挑発ですね。『これがやりたいんじゃない?やってよ!』って」
…まちがいは、新しいことを試みたすえの当然の結果だ(だからその価値が認められるべきだ。それなくして独創性はない)。けれども、失敗を受け入れることが学習において重要だといくら言っても、それを認識するだけでは不十分なこともわかっている。なぜなら失敗は苦痛を伴い、それが失敗の価値を理解する妨げとなっているからだ。失敗のいい点と悪い点を分けて考えるためには、苦痛という現実と、その結果として得られる成長というメリットを両方を認識する必要がある。
…一般的に言って、やり方を考えることにエネルギーを注ぎ、行動に移すのは早すぎると言っている人は、何も考えずにどんどん進める人と同じくらいの頻度で失敗している。計画が入念すぎる人は、失敗するまでに人より時間がかかる(そしてつまづいたとき、失敗したという感情に押し潰されやすい)。これも当然の結果だ。時間をかけて考えたぶんだけ、そのやり方に対する思い入れが強くなる。それがぬかるみの轍のように頭の中で凝り固まる。そこから抜け出せなくなり、一番やらなくてはいけない「方向転換」が困難になる。
要は、マネジャーが部下と腹を割って話せるかどうかだ。秘密主義で部下に何でも隠し、かえって失敗しているマネジャーは多い。それはまちがいだ。マネジャーの基本モードは、秘密主義ではいけないと思う。秘密主義のコストとリスクを比較してほしい。秘密主義に走るのは、相手に信用できないと言っているのと同じ。率直に話をすることで、相手の信用していること、何も恐れる必要がないことが相手に伝わる。部下を信頼して大事な話をすると、相手はその情報に対して当事者意識を持つ。そのため、打ち明けられた情報を人に漏らす可能性も低い。私はそれを何度も見てきた。
独創性はもろい。…本当に醜く、ぎこちなく、いびつで、攻撃されやすく、不完全だ。時間をかけて辛抱強く育てなければ、一人前にはなれない。それはどういうことかというと、野獣との共存は難しい、ということだ。
「見えないものを解き明かし、その本質を理解しようとしない人は、リーダーとして失格である。」
■マネジメントについての私の見方
①人の知覚は自らのメンタルモデルによって歪められ、目の前にあるものを正しく認識することができない
②人間の認識において、外から入ってきた新しい情報と、確立された既存のメンタルモデルの間に境目はなく、両方を一つの経験として認識している
③自らの個人的な解釈に無意識に囚われていると、頑なになり、目下の問題に対処する能力が低下する
④仕事や生活をともにしている人のメンタルモデルは、互いの近さや過去の共有により、互いに深く(ときに絶望的なほど)絡み合っている
■ピクサーが集合的な思考の意識変換を図るために使用しているメカニズム
①全員で問題解決
②現地調査でつかむ本物感
③制約の力
④テクノロジーとアートの融合
⑤短編で実験する
⑥観察力を養う
⑦反省会
⑧学び続ける(ピクサー・ユニバーシティ)
■反省会をやる理由
①学んだ教訓を集約する
②水平展開する
③わだかまりを残さない
④反省会の「予定」が反省を促す
⑤次につなげる
■反省会を最大限活用するためのテクニック
①やり方を変えながら実施する
②どれほど促しても、出席者はあからさまな批評をしたがらない、ということを忘れてはならない
③データを活用する
過去や未来に関する自分の思いや考え方に邪魔されることなく、この瞬間に注意を向けることが重要だ。なぜかと言うと、それによって人の意見の入る余地ができるからだ。人の意見を信頼できるようになり、さらに重要なことに、それが聞けるようになる。新しいことを試みたいと思うようになり、失敗する可能性のあることでも安心して試せるようになる。自らの意識に働きかけ、注意を向けることがいっそう注意力を高めるような自己増殖循環を生み出す。創造的に前進するためには何かを手放さなくてはならないことに気づかせてくれる。
・よいアイデアを凡庸なチームに与えればそのアイデアを台無しにし、凡庸なアイデアを優秀なチームに与えれば、それをテコ入れするかもっといいアイデアを返してくれる。よいチームをつくればよいアイデアに恵まれる。
・人を採用するときには、そのときの能力レベルよりも、これからの伸び代を重視すべきである。今できることより、将来できるようになることのほうが重要である。
・つねに自分より優秀な人を採用するよう心がける。それが脅威に感じられる場合でも、つねによりよいほうに賭けること。
・組織の中に、アイデアを自由に提案できないと感じている人がいたら、それは損失だ。 予想外のソースからのアイデアを軽視すべきではない。 インスピレーションは誰にでもある。
・他人のアイデアを受け入れるだけでは不十分。能動的かつ継続的に社員の集団的知力を動員すること。 マネジャーとして、スタッフからアイデアを引き出し、定期的な貢献を促すこと。
・職場で社員が率直に意見を交わさないのには多くの理由がある。その理由を見つけて対処するのはマネジャーの仕事である。
・同様に、自分に同意しない人は、理由があってそうしている。マネジャーはまずその結論の元にある理由を理解しなければならない。
・さらに、組織の中に不安や恐れが生じている場合、それにも理由がある。マネジャーは、①その原因を突き止め、②理解し、③その根絶に努めなければならない。
・他の視点を遮断したいなら、自分が正しいと確信することほど効果的なことはない。
・一般的に、人は波風を立てるようなことを言いたがらない。 自分の考えを言ってもいいということを強調するためにプレイントラスト会議、デイリーズ、反省会、ノーツ・デイなどがある。これらはすべて真実を明るみに出すための自己評価のメカニズムである。
・会議室より廊下で真実が語られているとしたら、会社として問題がある。
・人より後に部下から問題の報告を受けたり、会議で初めて問題を知らされたりすることをけしからんと思うマネジャーが多いときには、対処が必要である。
・問題を小さく見せようとして慎重に発した「メッセージ」を、社員はマネジャーに嘘をつかれ、裏切られ、無視されたと受け止める。問題を分かち合うことで社員に当事者意識や事業全体に対する責任感が生まれる。
・成功や失敗から最初に導き出す結論はまちがっている。プロセスを評価せずに成果を正しく測定することはできない。
・ミスを防げば、ミスに対処する必要がなくなるという幻想に陥ってはならない。実際には、ミスを防ぐためのコストのほうが、ミスに対処するコストよりはるかに高くつく場合が多い。
・変化と不確実性は、人生につきものだ。それらを組むのではなく、予想外の出来事が起こったときに回復できる力を養うことが必要である。つねに目に見えない問題を明るみに出し、その本質を理解する努力をしなければリーダーの資格はない。
・同様に、リスクを回避することはマネジャーの仕事ではない。リスクを冒しても大丈夫なようにすることがマネジャーの仕事である。
・失敗は必ずしも悪いことではない。むしろ、まったく悪いことではない。 新しいことをするときに必要な成り行きである。
・信頼とは、相手が失敗しないことを信じるのではなく、相手が失敗しても信じることである。
・計画実行の最終的な責任を持つ社員には、問題が起こったときに承認を得なくても問題に対処できる権限を与えなければならない。問題を見つけて対処するのは全社員の仕事である。誰もが生産ラインを止められるべきである。
・物事を何でもスムーズに運ぼうとするのは、まちがった目標である。それは社員を問題解決能力ではなく、失敗に基づいて評価することにつながる。
・人に見せる前に完璧にしようとしないこと。早くに人に見せること。途中段階は見られたものではないが、だんだん見られるようになる。 そうあるべきだ。
・会社の意思伝達構造は、組織構造を反映したものであってはならない。誰でも好きな相手と話せるべきである。
・規則をつくりすぎないこと。規則はマネジャーの仕事を楽にするかもしれないが、問題を起こさない九五%の社員にとっては屈辱的だ。五%の社員をコントロールする目的でつくってはならない。常識の乱用には個別に対処する仕事は大変になるが、そのほうが結局のところより健全である。
・限界を課すことで創意工夫が促進される場合がある。卓越性は厄介な状況や、理不尽とも思える状況から生まれることがある。
・並外れて困難な問題に取り組むことで、新しい考え方が生まれる。
・組織は、それを構成する個人よりも、集団として保守的であり変化を嫌う。基本合意だけで変化が起こることを期待してはならない。 メンバーが揃っていても、グループを動かすには、それなりのエネルギーが必要だ。
・各部門のアジェンダは違えど、相互依存の目標を持つ部門によって構成される組織が健全な組織である。一つのアジェンダが勝れば、組織はだめになる。
・「すばらしいアイデアが生まれるためには、すばらしくない段階が必要」なことを理解しない人から新しいアイデアを守ることが、創造的な環境におけるマネジャーの仕事である。 過去ではなく、未来を守ること。
・新しい危機の訪れを必ずしも嘆く必要はない。 会社の真価を試し、実証するからだ。問題解決のプロセスは社員を結束させ、組織文化を維持させる。
・「卓越性」「品質」「優秀」は、自ら言う言葉ではなく、他者から言われるべき言葉である。
・まちがっても安定を目標にしてはならない。 安定よりもバランスのほうが重要である。
・プロセスと目標を混同してはならない。 プロセスをよりよく、より簡単に、より効率的にする努力は不可欠で、継続しなければならないが、それは目標ではない。すばらしい商品をつくることこそが目標である。 -
分厚いタフな本だったが、
スティーブ・ジョブズが登場したあたりから、
やはり面白くなりました。
日本のアニメ映画業界だけではないと思いますが、
まあ勝てないですよね…。この企業文化に。
でも、身近なチームから、出来る範囲から、
こういうのを意識するべきですね。
とても参考になりました。 -
ピクサー作品の制作秘話だけでなく、ピクサーという組織のあり方についても言及した一冊。
いつか自分が組織を束ねる時、部下をマネジメントする時にも読み返してみよう。 -
創造力についての本というよりは、大企業になったピクサーの社員が、創造力の阻害となっているものとその対策、頑張って生み出そうとしている試行錯誤が書かれている。特効薬的なテクニックがないということがわかり、それでも大切にするべきことが書かれている良書。惜しむらくはその記載されている内容は文章にすると当たり前に感じてしまうため、体験の1/100にも満たない理解にとどまってしまうことである。経験は何者にも勝るの典型であり、ぜひピクサーで働いてみたいと思う。