- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480025777
感想・レビュー・書評
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こんな面白い、辛辣で瀟洒な本がまたとあるでしょうか。
最高に面白かったです。
言わねばならないことを述べるには率直であること。
相手をこてんぱんにしているようでも
どこか読み手の心には一筋の退路を確保する
温かさを持つこと
言いたいことはいうけれど、自分でコントロール出来ないほど
自分自身の気持ちに夢中になって乱れないという姿勢。
なりふり構いながらも、今、まさに動いている
心を見せるという、相反した付き合いの極意。
行き過ぎないたしなみの良さ。
世の中自分の思い通りには運ばないものだという
冷静な了解がある上で、ほんの少し覗く書き手の真情。
それがある手紙は、きっと素敵です。
それと、人間って、「可愛げ」がないとダメだなって
ほとほと思いました。媚じゃなくって「可愛げ」。
多分文章のほうがそういうものが伝わりやすいのかも
しれませんね。
三島の作品は、恥ずかしいことながら初読でしたけれど
あっという間に読みました。
この本は美文麗文を書くには向きません。
でも上に挙げたような大事なことを身につけて
手紙をしたためるには、最高の本です。
これと、アンブローズ ビアスの「悪魔の辞典」と
ラクロの「危険な関係」をセットにして読みたいですね。
その時点で私のひねくれかげんがわかってしまうと
いうものですけれど。
小説の方はなんとなく難解なのかなって思い込んで
いましたから、彼の随筆を片っ端から読んでみましょう。
三島由紀夫という人に惚れたら、その時初めて小説を
読み始めてもいい気がしてきました。
中毒になりそうな、予感がします。
知的で、アイロニカルで、でも優しい―。
ひと夏、その背中を追いかけてみようと
決心しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
れっきとした小説。
男女5人の手紙のやりとりだけでストーリーが展開していくという変わった小説だが、構成がマジで巧み!!!!!!!
登場人物の名前も「炎タケル」「氷ママ子」などとかなりユニークだし、各章のタイトルも「借金の申し込み」「処女でないことを打ち明ける手紙」など、最初パラパラと本を捲っただけでは、なんじゃこりゃと言いたくなる本だ。
が、少ない情報量や話しかけるような手紙の何気ない一文によって、登場人物たちの性格や人生、ストーリーの上での感情の動きなどを明らかにしていく作者のセンスが光る。
皮肉とユーモアたっぷりの独特な世界観の中で、どこかコミカルなテンポで進んで行く文章の中にも、人生の悲哀のようなものが感じられる。
あまり力を入れずに読むことができる。三島由紀夫は苦手という人にもおすすめ。
最後のほうはストーリーの流れに読み込まれてしまって、私は三重県鈴鹿市のローカル線で乗り過ごしてしまいました。 -
中学生のとき、朝読の本を変えるのが面倒でずっとこの本を繰り返し読んでた。全く飽きない、1回読んだだけじゃ勿体なくて、7回は読むべきだと思う。全部の話を覚えても面白く読めるからすごい。
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これくらい気軽に手紙書きたいなぁ…となる楽しい書簡形式のお話でした。文例集にすると危険な気がする。
面と向かって直接は言えなくても、手紙でなら言えそうだし、実際にそういうお手紙も載っています。
現代だと、LINEとかで思ったその時に相手に伝えることが出来るけど、手紙は相手に届くまでにタイムラグがあるので、受け取ったときには書かれてる「こうしようと思う」は実行済みだというのが面白かったです。キー!となっても後の祭り。
解説で群さんも引用していた、「ともすると、恋愛というものは『若さ』と『バカさ』をあわせもった年齢の特技で、『若さ』も『バカさ』も失った時に、恋愛の資格を失うのかもしれませんわ」は好きな文面です。
「恋は愉しいものではなくて、病気だわ。いやな、暗い発作のたびたびある、陰気な慢性の病気だわ。(中略)恋が愉しいなんて言っている人は、きっとひどく鈍感な人なのでしょう」も。
結婚する報告のお手紙にあった「末期資本主義的頽廃は、芸術を無限に崩壊させ、その自由をファシスト(たとえば三島由紀夫のような男)の手に売り渡す役にしか立たないでしょう。われらの未来万歳!」は笑って良いのか、困りました。 -
読書アカウントでおすすめしてもらった本。
「命売ります」をよんで、三島由紀夫作品にもこんなに読みやすく、肩の力を抜いて楽しめる作品があるんだ…!と驚いたけど、こちらもユーモアたっぷり。とても楽しめた。
とくに丸トラ一の手紙にはクスクスきた。お前ってやつは……。
そういえば手紙を書くことも本当に少なくなってしまったなあ。ペンフレンドという響きが逆に新鮮に感じる。
文通など始めてみても楽しいかもしれない!
⚫世の中を知る、ということは、他人は決して他人に深い関心を持ちえない、もし持ち得るとすれば自分の利害にからんだ時だけだ、というニガいニがい哲学を、腹の底からよく知ることです。 -
前職で一緒だった人と久しぶりに再会し、
夕食を楽しみました。
そのときにおすすめしていただいた一冊。
近代文学とかあんまり得意でない、
(国文学出身のわりに。笑)
という気持ちがあったため、
読めるかどうか不安でしたが、
手に取りました。
面白い!そして読める!
私、三島さんの言葉読めてる!!笑
…が最初の感想でした。笑
登場人物たちがそれぞれとの手紙のやり取りをして
展開していくのですが。
みんなクセが強い。笑
そして策略家とうか、したたか。笑
人間味があって、ずるいところがあって、
途中からはミステリーのような謎解きのような気配もあり、
とにかく一瞬で読み切りました。
最初は登場人物も覚えられるか不安だったのに、
「あいつからあいつへの手紙か…」とか思いながら読めてる自分に驚きでした。笑
メール、SNSではなくて、手紙。
あっち行ったり、こっち行ったりする手紙。
次は、普通の小説にもチャレンジしてみたいと思います。 -
書簡体の本。なんか昔だなあって感じ。
ライトに手紙書きたい。 -
「たいていの女は、歳をとり、魅力を失えば失うほど、相手への思いやりや賛美を忘れ
しゃにむに自分を売り込もうとして失敗するのです。もうカスになった自分をね。」
「ともすると、恋愛というものは『若さ』と『バカさ』を合わせ持った年齢の特技で、
『若さ』も『バカさ』も失った時に、恋愛の資格を失うのかもしれませんわ」
以上が、とくに好きな台詞の引用です。
登場人物の1人である氷ママ子はこのように機知に富んだ元美人の「悪女」であるにもかかわらず、のちに若い男に恋をしてずいぶんと取り乱した手紙を書いて5人の人間関係を掻き乱すのだから、人間って不思議ですね。
5人の手紙は、ちょっとした言い回しや言葉の端々に、それぞれの性格がよく表れています。
三島由紀夫の、人の内面の些細な事柄を言葉に変換する巧さが気軽に味わえます。