三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 475
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025777

感想・レビュー・書評

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  • なんとも不思議で面白い感覚。

    個性あふれる5人の登場人物が、手紙形式によって独白し、それらがつらなることでストーリーが生まれてくる。
    また、個性が表れた手紙のなかには、細かな心理描写や価値観なども散りばめられており、一つのエッセイのように楽しめる。

    私は文章を書くことはそれほど嫌いではなく、むしろ様々に書き連ねたいタイプ。
    昨今のLINEなどはどうも苦手。
    かつて、電子メールなどなかった時代、遠距離恋愛で数週間おきに手紙のやりとりをしていた頃が懐かしく思い出され、久々に手紙、書いてみよっかな...(^^)

  • 「三島由紀夫レター教室」読了。アンタらは魑魅魍魎か?と疑いたくなる複雑怪奇且つ簡単明瞭な、ひたすら自分は正しくてステキと信じている人達が「手紙」を主軸に闊歩しまくり、なんかイイ感じに鞘に収まる。終盤・トラ一君の「どうぞどうぞ〜」がステキ。一気に読める。てか、読むなら一気にいけ!

  • 文章の巧みさは流石.SNS時代にも通じる人間模様.
    「世の中の人間は.みんな自分勝手の目的に邁進しており,他人に関心を持つのはよほど例外的と解った時,初めて,人の心をゆすぶる手紙を書ける」というのはある意味秀逸.

  • じかに会っては話せないことも、手紙では話せるということがある
    顔を合わせないぶん、大胆な告白がすんなりできるし
    嘘をつくのに顔色をとりつくろう必要もない
    たいへん便利なものだ、しかしそれゆえに人は
    独りよがりな手紙というものも、書いてしまいがちなんだ
    では、簡潔でなおかつ人の胸をうつ手紙文とはいかなるものなのか
    それを三島由紀夫が教えましょう、という体裁の…
    まあ書簡小説ですね
    ハウツーというのではないな
    大まかな筋書きは「潮騒」の改変だが
    若い恋人たちを邪魔する中年の描写に、かなり熱がこもっている
    そして、島の神様に相当する役割は
    テレビ中毒の青年が担っている
    やさしい理想の世界はテレビのなかにしか存在しない
    そんな絶望が、60年代の若者にとってもリアルだったわけだ
    とはいえ、終盤に変節する中年男の描写を読む限り
    三島もやはり愛とヒューマニズムの夢は捨てきれなかったのだろう
    通俗ものだから、と言えばそれまでだけど…

  • 五人の物語。
    氷ママ子の、嫉妬のあまり相手の恋愛の邪魔をしてしまうというような気持ちがとても理解できる気がする。
    五人の手紙を読み進めながら話は発展していくが、手紙ならではのその人の心情だとか本音だとか(もちろん手紙でも嘘をつくことはできるが)が上手く表現されており、改めて手紙って素敵だなと思えた。

  • 彼自身の日本語美がおしげもなく披露されている一冊。

    5人の登場人物はそれぞれ人間らしい欠陥が見え隠れするが、美しい言の葉。悪人になりきれない性分。ユーモアセンス。どこか憎めない。

    私もぜひペンフレンドが欲しい
    と思わせてくれる。

  • 炎タケルくんと空ミツ子さん、二人の恋人同士のやり取りがとても微笑ましくて楽しく読みました。
    炎タケルくんは当時の若者よろしくインテリぶった、少し左がかった劇団員。知り合いの空ミツ子さんの事はちょっと見下していると思いきや、頼まれたら断われないし、他の男性と恋に落ちそうなのを見て説教するふりをして、その実心配でたまらない有様。

    炎タケルくんは、普段はとても小難しい言葉を並べ立てるのが好きなのですが、その空ミツ子さんに恋心を抱いて、ラブレターを書いた時、いつもの理屈っぽさなんて消し飛んで、精一杯自分の思いを伝えたいという若い悩みに満ち溢れた言葉でミツ子さんに告白します。
    要はとても言葉遣いが稚拙になります。芥川龍之介が結婚前に夫人に宛てたラブレターもちょうどこんな感じだったのを思い出します。

    ミツ子さんが妊娠したと知った時、タケルくんはもう狂喜乱舞です。ハイテンションで訳の分からない漢字を連ねた手紙を喜び一杯に認めます。
    この頃からこんなに素敵な喜び方をする男性がいたのだなと思います。

    タケルくんは、ちょっと抜けてて軽薄だと昔は見下していたミツ子さんを、結婚してからは妻として母として敬愛するようになります。
    ミツ子さんもただの今時の若い女の子ではなく、母としての強さを携えた女性になりました。


    そのミツ子さんのいとこ、丸トラ一くんも、今で言う「オタク」的なキャラだと思いますが、本来はとても根が良い青年なのだと思いました。
    彼の手紙に出てきた恋人との出来事、あれは多分事実なんだろうな、と思っています。

  • 三島作品初読です。何か読んでみたいと思ってたところ読みやすいとオススメにあったので読んでみました。
    面白かった!(笑)登場人物は五人、性格も年齢も性別も違う癖のある人物たちがそれぞれに手紙をやりとり。その内容がくだらなくって、でも真剣で読みやすかったです。真似はできないな(笑)

  • 手紙読本の形式をとっている為、章ごとにどんな手紙の内容であるかがわかる、ストーリーに悩むことなくすらすら読める三島流エンタメ。思わず手紙にしてしまう人間の醜くも愉快な行動、それに伴う心理描写が四者四様で見事であることは言うまでもなく、現代の人間模様にも通じる汎用性高い内容である点が、やはり三島の素晴らしいストーリーテラーさを文字通りあらわしていた。

  • 最高。

    文中の言葉を借りて、『「文は人なり」とは、まことに恐ろしい格言です。」の言葉通り、手紙に登場人物5人の人なりが染み出ていました。

    全て5人、筆まめであり、また機知に富んでいて読んでいて楽しいこと!
    「このキチンと封をされた紙の密室の中では、人々は、ゆっくりあぐらをかいて語ることもできれば、寝そべって語ることもでき、相手かまわず、五時間の独白をきかせることもできるのです」
    そう、手紙とはそういうものなのだ。
    相手にかまわず書けるもの。
    でも、最後の作者から読者への手紙のところで、
    自分に関心があるという前提で書いた手紙はすぐに紙屑龍行きになってしまうと書かれています。
    ああ、そうだなあと思います。

    手紙好きとしてはとても勉強になりましたし、
    5人の名言も一杯で、うん、うんと頷ける所が満載で、面白い!
    三島由紀夫がまた大好きになりました。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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