こちらあみ子

著者 :
  • 筑摩書房
3.57
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本棚登録 : 1649
感想 : 333
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804303

感想・レビュー・書評

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  • 不気味でそれがちょっと面白いのに、悲しい。不思議な感情になるお話でした。
    客観的に見たらただの痛い子なんだけど、同じ視点に立つとその子の世界の中でその子なりに一生懸命なことがありありと伝わってきて、なんとも苦しい。
    大人になった主人公が、自分の世界の中での生き方を見つけられたように思える、最初と最後の描写は綺麗で良かった。

    ピクニックを読んで何も感じない人、の記事をいくつか読んだけど、その上でも、そこまでの悪意を読み取る事はできなかった。
    適当に流したり無視したりするよりも、ドブ掃除の道具をプレゼントしたり、色々煽って面白がってる点ではそれは悪意なのかもしれない。
    最後に七瀬さんなしで爽やかにピクニックしてるのも悍ましい光景ではある。

  • コミュ障の「感じ」がよく書けていると思った。
    表題作でない方も面白かった。虚言癖の人に周りが合わせてしまって、虚言の世界が現実のようになってしまっているが、どこか平和で悲壮感がない。新鮮。

  • 2023.04 図書館借本
    .
    「こちらあみ子」
    難しかった。あみ子の普通ではない行動に読んでて苦しくなった。お墓をあげたら喜ぶんじゃないかとか自分がチョコの部分だけ舐めとったクッキーを好きな子にあげるとか。歯の手術のシーンは痛々しくて読むのが辛かった。死んだのは本当は妹だったのに「弟の墓」でなんで母親の心が壊れるのかがわからなかった。「妹の墓」の方が心にきそうだけど…。なぜこんな子(あみ子)が生きてて自分のお腹の子は死んじゃったんだろうと思い詰めすぎたのかな。幽霊から助けにきた兄の登場はかっこいいけどシーン的にはよくわからなかった。
    冒頭だけ読み返したらあみ子は意外と普通の大人に成長したのが救いだと思った。
    .
    「ピクニック」
    やっぱり嘘だったのか…ってなった。七瀬さんとルミの関係性は気持ち悪いなと思った。ある意味七瀬さん宗教の信者にも見えるけど、携帯探すの見てるだけとか他人の人生の計画勝手に立てるとか、ただ変な人を見て楽しんてるだけなんだなと思う。七瀬さんが結局なんでそんな嘘をついたのか気になるし、嘘だとしたらタイミングよく体調崩した原因も気になる。(いろんな人の考察を読んで、自分が見世物になってたことに気づいて体調崩した説に納得)

  • イライラしたけど最終的にとても好きな話だった。
    私も小さい頃はあみ子みたいな感じあったなと思うし、多分今もあみ子が残ってる部分ありそう。
    すごくイライラしたしあみ子のことは好きじゃないけど、あみ子はあみ子で全力で生きてるんだよなあと思う。
    みんなが当たり前のようにできていることができなくても、あみ子の人生はみんなと同じ時間で流れていくしあみ子なりに疲れたり悲しかったりする。それなのにみんなから見下されたりしてしまうのが残酷だよなあと思う。でも私もあみ子には近づきたくないし、いたら白い目で見てしまうと思う。
    ラストの坊主の男の子とのシーンがとても良かった。
    せっかく男の子の存在を認識したのに、気づいた時にはもうお別れなのが切ない。でもあんなふうにあみ子のことを気にかけてくれる子がいたのは救いだよな…
    きもいとこ百億個挙げられるのはもう…愛じゃん…

    ピクニックは期待しすぎたのかそこまでざわざわしなかった。むらさきのスカートの女とか木になった亜沙を先に読んだのがいけなかったかもしれない。それとも私の見落としてるざわつきポイントがまだあるのかな…

  • 装丁:柳川貴代さん
    彫刻:土屋仁応さん
    撮影:竹之内祐幸さん
    写真提供:メグミオギタギャラリー

  • 今村夏子さん、はじめて読みました。凄く好きなスタイルです。

    始めは状況がよくわからなく、段々少しずつ「あ、そういうことか」と分かってくるけど、それと同時に主人公への申し訳なさと言うか、ある種の障害者に対してどうしても自然とわいてしまう気持ちを持ってしまい、ある種の心地の悪さを感じます。でも読むことを止められない。

    私は単行本で読みましたが、「チズさん」が書下ろしで収録されている文庫またはKindleをお勧めします。

  • 普通ではないあみ子は、周りに不協和音を起こしてしまう。けれど、あみ子にとっては普通に考えてやっていることなので、怒られる理由がわからない。
    案外このようなズレは、日常に起きているのかもしれない。とすると、普通とは何なのか?
    祖母と穏やかに暮らしていることに救いを感じた。

    ピクニックの七瀬さん、若い頃にはよく居そうですが、そのまま三十代後半までというのもあるのかな。

  • こちらあみ子
    今村夏子

    ∞----------------------∞

    中編が2話。やっぱり今村夏子さんの本は面白い。そして心にじんわりと嫌なものも残る。

    「こちらあみ子」

    このお母さん、しんどい道選んじゃったなぁ。障害を持った前妻の子を育て、自分の子は死産。あみ子は全く悪気も無ければ、悪くも無いんだけど、だからこそどうにも出来ない。

    のり君は普通の子だけど、クッキーと墓標の件では可哀想な被害者。
    習字教室にいたもう1人の坊主頭の男の子、この子が「おまえ、くさいよ」と言いつつも意外にちゃんとあみ子と会話してて、引越し前のこの子とのやりとりがすごく良かった。
    だったり、不良兄があみ子のトランシーバーの片割れ持ってたようで、背に夜露死苦とか書かれてるであろう戦闘服を羽織って幽霊から守ろうと現れたとこは、なんかジーンときた。

    でもやっぱり、お母さんは離婚した方が病気治るんじゃないかな?とは思ってしまう。

    「ピクニック」

    まず、初っ端から嘘満載な七瀬。彼氏(芸能人)との馴れ初め語ってるところからもう嘘だなーって思う。

    落とした携帯電話見つけて欲しいって彼女に頼むかな?(1日2日ならまだしも)というのも気になっし、同僚たちは探してる姿を近くで見てるだけだったり、ピーナッツを投げるとか意味不明で、せめて近くまで行って口に入れてあげなよとか思ったり、タモ贈るくらいなら手伝えよとか、腑に落ちない点だらけ。
    寧ろいじめてると疑われた生意気な新人の気持ちや行いの方がしっくりくる。
    暇なのか、日常がつまらないのか、七瀬を使って自分たちの人生を潤わせようとしてるのか。
    七瀬もおかしいけど周りもおかしい、新人さんが1番まともかも。

    何故か、笑っていいともと劇団ひとりが浮かんだ。

    2023/03/04 読了 (図書館)

  • 『こちらあみ子』 
    あたらしい娘 からの改題とのこと
    太宰治賞を受賞作とのこと
    納得。
    『ピクニック』
    あみ子が重かったからか
    こちらはサラッと読み終えてしまった

  • 今村夏子さんのデビュー作ということで読むのを楽しみにしていました。
    「こちらあみ子」では、作中で言及はされていないけれど、あみ子は発達障害を抱えていることが予測できます。あみ子の天真爛漫な悪気のない行動が、周囲を巻き込んで混乱させていく…その過程がなんとも言えずに悲しい…せめて、あみ子の人格を両親がしっかり受け止めてさえくれれば、あみ子の将来もまた別の形に変わるのではないかと感じました。
    「ピクニック」では、七瀬さんという同僚が芸人さんと交際していると職場で暴露し、その恋路を同僚たちみんなで応援するという展開…いや~わからない、どこまでがホントのことなのか、それともすべて嘘なのか…色々考えたら私の頭の中も混乱してきてしまいました(汗)。私的にはこの前に読んだ「とんこつQ&A」の方が好きだと感じました。

    • かなさん
      チーニャさん、こんにちは!
      今村夏子さん、最近私のマイブームです(^^)
      そうなんですよね~独特の世界観があって、
      特にこの「こちらあ...
      チーニャさん、こんにちは!
      今村夏子さん、最近私のマイブームです(^^)
      そうなんですよね~独特の世界観があって、
      特にこの「こちらあみ子」はそれが強く感じられて、
      一気読みでした!

      今村夏子さんは、私もまだ3冊しか読んでないけど
      他の作品も読んでみたいと思っています!
      『とんこつQ&A』は、今村夏子さんの3冊読んだ中で
      一番好きな作品です。
      ぜひぜひお時間のあるときに読んでみてくださいね。

      私も読みたいものばかりたまっています!
      これもブクログのおかげ~
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      2022/11/17
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      かなちゃん、
      わかりました~\(^-^)/良かった。

      今村夏子さんは、好みだから仕方ないことなんだけれど…、やっぱり好みが別れる作家さんで...
      かなちゃん、
      わかりました~\(^-^)/良かった。

      今村夏子さんは、好みだから仕方ないことなんだけれど…、やっぱり好みが別れる作家さんですよね。
      以前に、私の妹や、友達で、今村夏子は、あんまり好みでないの…、と、言われてさびしく思ったことがあって。それでちょっとだけ、気になりました~(笑)

      ほんとに、ブクログやってて良かった〰️!!かなちゃん、ありがとう、ございます。
      これからもどうぞよろしくお願いします~\(^-^)/☆☆

      2022/11/17
    • かなさん
      チーニャさん、コメントありがとうございます!
      今村夏子さんだからこその作風、ありますよねぇ~
      私はそう、4作品だった…読んでるけれど
      ...
      チーニャさん、コメントありがとうございます!
      今村夏子さんだからこその作風、ありますよねぇ~
      私はそう、4作品だった…読んでるけれど
      どの作品も一気に読み切りました!

      目が離せないというか、展開が気になってまって…ね、
      そういう面では今村夏子さん、結構私の好みにあってます!(^^)!

      また、他の作品も読んだらお話しできたら嬉しいです。
      こちらこそ、引き続きお付き合いお願いします。
      2022/11/17
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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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