こちらあみ子

著者 :
  • 筑摩書房
3.57
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感想 : 333
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804303

感想・レビュー・書評

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  • 3.58/1346
    『あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。』
    (「筑摩書房」サイトより▽)
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480431820/

    冒頭
    『スコップと丸めたビニル袋を手に持って、あみ子は勝手口の戸を開けた。ここ何日かは深夜に雨が降ることが多かった。雨が降った翌日は、足の裏を地面から引きはがすようにしてあるかなければならないほどぬかるみがひどかった表の庭に通じる道も、昨日丸一日の快晴のおかげで今朝は突っかけたサンダルがなんの抵抗も受けずに前へと進む。』


    『こちらあみ子』
    著者:今村夏子
    出版社 ‏: ‎筑摩書房
    単行本 ‏: ‎199ページ
    受賞:太宰治賞・三島由紀夫賞
    映画化(2022年)

  • 読み終わった時泣いた。どこまでも絶望。自分はあみ子かと思った。
    文章がとても綺麗。

  • あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。

  • あみ子は、その場の空気とか、人の気持ちが、分かりにくい、女の子だ。キモい、と散々言われているが、自由の気持ちにまっすぐな言動をする。
    それは時に、周りの人達を、傷つける。
    産まれてくるはずの、赤ちゃんを死産したお母さんに、「弟のおはか」を、プレゼントしたり、自分の舐めた後のクッキーを、大好きな、のり君に、食べさせたり……。そのことに気づいたのり君とあみ子の叫び 「好きじゃ」「殺す」「好きじゃ」「殺す」「好きじゃ」「殺す」「のり君好きじゃ」「殺す」……あげく、のり君にこぶしで顔面を殴られて、あみ子は前歯を三本失くすことになる。 痛い。

    あみ子がラスト近くで、あみ子をずっと見てきた、坊主頭に、自分のことを、「気持ち悪かったかね」と聞くシーン。
    「おまえの気持ち悪いとこ?百億個くらいあるでー」……「いちから教えてほしい。気持ち悪いんじゃろ。どこが」「どこがって、そりゃあ」「うん」……そのあとの、坊主頭の言葉に、救われた思いがした。あみ子はようやく、今まで眼中にもなかった他人と、心が繫がったように思えた。

    やさしくしたいと強く思った。強く思うと悲しくなった。……というあみ子の心は、変わっていくのかもしれない、と、思い、読後感は、案外明るかった。


  • 元気なときじゃないと読んではいけない系の本だろうと及び腰だったけど、読めてよかった。うん。なんとも言えない…。
    人間って時々ものすごく自分以外に残酷だよなあと思いつつ、自分もその人間だし、そうすると生きていくってやっぱり怖すぎることだなあ。自分の周りにあみ子や七瀬さんがいたらどんな反応をするだろう。今までも、もしかしたら無意識に視界に入れてなかったのかもしれないし、忘れてるだけかもしれないし、自分だって「面白いね」だとか「天然だね」と濁される側だったし。そういうことを考えて、なんとも言えねえ…となる。
    あみ子と周囲との、空振り続けるコミュニケーション。誰も悪くない気がする。家族なんだから、なんてことも絶対に言えない。みんな仕方がねえよなあとしか思えなくて。周りに距離感を持って助けてやれる大人がいたらとも思うが、難しいんだろな。
    でも、よく意味を理解できていないとしても、人から「異物」扱いされているということは絶対に傷つくことでストレスだ。最後にあみ子が他人から見た自分を知ろうとしたこと、坊主頭くんに優しくしたい、でもそう思うと悲しい、的な3行に少しだけ救われるような。でもやっぱり人は独りぼっちだから悲しいし、虚しい。
    ピクニックは、予想はつくのだけど怖い。じわじわと最後まで怖い。 

  • あまりに純粋な気持ちの痛々しさとおそろしさ
    伝わらない気持ち拒絶される怖さ
    埋まらない隔たり
    じわじわと侵食してくるこわさ

  • 不安定。どちらも「信用できない語り手」の話。「こちらあみ子」は読後はなぜかすっきり爽やか。「ピクニック」はあまりにも残酷過ぎる。。。

  • 土屋仁応氏の木彫作品の装丁が美しすぎる
    内容はいつもの今村夏子です、ウン

  • 今村夏子の『ピクニック』読み終えた(いつから読んでんだよ!!)んだけど、これはゾワゾワ感がすごい。
    読んでも悪意に気付かない人が居るというのも納得。
    読み手が今まで経験してきた他者からの扱いや視線、環境がダイレクトに影響するなぁと言う感じ。
    クラスで陽キャにクスクスされた事ある人ならピンと来るのでは…?

  • 『モヤミス:執着する人たちの異常なる日常』

    今村夏子作品の登場人物は、取り憑かれたかのように何かに
    執着する人が多い。日常生活を描いているようで、気がつくと異常な世界にいる。ミステリーのようでミステリーではない。読後感は『モヤモヤ』今村夏子さんは『モヤミス』の女王だ!

    『モヤミス』:ミステリーのようでミステリーでない、読後にモヤモヤ感が残るミステリー

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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