百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術

著者 :
  • CCCメディアハウス
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484222332

作品紹介・あらすじ

文章術『三行で撃つ』で話題の「朝日新聞」名文記者による読書術。
読書とは、人を愛するレッスンだ。

巷に存在する、あまたの読書法。そのロジックを理解すれば、より深く読める――
◎速読/遅読 ◎批判する/憑依される ◎偏食選書/健康選書 ◎かんたん書物/難解書物 ◎抜き書き/暗唱 他

読書なんて人それぞれ。が、どうせ読むなら本を血肉にし、明日の糧にし、善く生きたい。そうした読者の一助となるノウハウを伝える。目指すのは百冊読書家だ。誰でも買える。誰でも持てる。百冊で耕す。カルティベイトする。ただし注意が必要なのは、「本は百冊読めばいい」ではない、ということだ。自分にとってのカノン(正典)百冊を、自力で選び、深く読み、そして最終的にはその百冊さえも必要なくなるほど、己の一部にする。そのための方法論を11のテーマで解説していく。各テーマは「速読/遅読」など、対立する二律背反で構成されている。速読か、遅読か? ではない。速読も、遅読も。そうした多様な読み方ができれば、本と共に生きていける。一面的ではない、重層的な読書家になる。そのためのコツ、ロジックを一緒に考えていく。

本は百冊あればいい。
この読書法と、筆1本。
それだけで、35年間、書き続けてきた。

また、同時に、本書は「読むという行為について考え抜くことで、新しい己を知る」思想書でもある。読書のご利益とは、結局、何なのか? なぜ、わたしたちは読むのか? 勉強とは? 孤独とは? 愛とは? 幸せとは? 生きるとは? 読むほどに、自分が鍛えられ、豊かになる。その果てに、他者を、世界を愛し、変わった自分を発見する。

わたしにしか、見えない問いが、世界を変える——
読書とは、問いを獲得するための冒険だ。
終着駅ではない。始発駅に立つために、本は読む。

感想・レビュー・書評

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  • 何だろう、著者と読書のスタイルもスタンスも一致しないのだが、それで良いと思うし、その違いも含めて純粋に楽しかった。この本を読むことが、楽しい時間だった。「読書好き」を共通点として、〝オレの読書論“に触れる。アメトークの読書好き芸人みたいでもあるし、文学的に言えば、枕草子みたいに、速読も遅読も趣き深く、酒を飲みながらLP聴いての読書はいとおかし、という主張本なのだ。

    正解の無い私感、自己主張の中に、そうした楽しみ方もあるかとか、こだわり、そんな考え方をしているのか、という発見がある。本から会得した語彙力は感情を言語化する能力を高めるので、人に安心感を与えるとか、外国語で日本文学を読む事で解釈を得るとか。

    私にとっては読書は生活の大半を占める行為だから、今更、努力を要するものではなくて、それは待ち時間や移動時間、コーヒーを飲む時間と共にあり、テレビや交友やネットの時間を削ってでも得たいという至福の時間だから、それを苦行として考えたことはない。だけど、頑張って読書をする人には、そのモチベーションが上がる本になるのではなかろうか。ちなみに、何が一番好きな本かと問われると答える事は不可能だが、最も好きな読書のスタイル、というのは幾つか思い浮かぶ。夜行列車や夜間の国際線、雪国の暖炉前、年末年始のスカスカの山手線、夏のキャンプ場など。

  • 名文記者の読書法。
    第1章から11章のA面・B面となっている各章のサブタイトルは以下。
     速読の技術/遅読の作法、
     本を買う/本を借りる、
     理想の積ん読/狂気の積読、
    「分る」読書/「分からない」読書、
     批判して読む/憑依あsれて読む
     私が選ぶ/先人が選ぶ
     孤独の読書/みんなの読書
     あわいの娯楽/挑むべき修業
     読むことは相さえっること/読むことは愛するということ
     母語でじゅうぶん/原書にあたってこそ
     抜き書き帳/暗唱カード

    ”<沈着><油断><自発>ーーー読書の三大実益”、
    ”読書とは、問いを、自分で言葉にできるようにする、遠回りの、しかし確実なトレーニング”、
    ”偏食読書の本質とは、自分の興味がふかくなっていくこと”、
    ”幸せな人とは、本を読む人のこと”

    私も、【百冊読書家】を目指したい。

  • 読書のあり方を改めて考えさせられました。
    ベストセラー本などの読書にあまり価値を置いていない点や書籍に読んだ痕跡を残すことを推奨する点など意見を異にする点はいくつかありますが、自分なりの100冊に本棚の蔵書を絞っていくという考え方は実践していきたいと思いました。

  • 文章の達人だけあって、つかみが上手い。
    「はじめに」を読んで、近藤さんってこういう面があったんだ、と驚き、一気に親近感が湧く。
    アロハでサングラスは攻めた格好に見えるが、色々あってのやむにやまれぬ最終形であるのだ。(それは私たちの周りにもよくあることだ)

    そもそも自分も読書好きなので、この本とは最初から相性は多分いいわけで、すぐに近藤さんの読書の世界に連れて行かれた。
    いい旅行だったー。

    私塾の始まりのエピソードにびっくり。私も多分近寄っていくだろうな。遠巻きに見ていた人がワラワラと集まってきたのはよくわかる。
    村上春樹へのダメ出しに唸った。そう、確かに!

    私は外国語で読むのは無理だけど、近藤康太郎選の100冊は読んでみたくなった。読んでいない古典、いつか読もうと思っている古典にチャレンジする気持ちが沸き起こった。15分で次の本へ。これは同時並行で何冊も読む私も取り入れたい。私は今のところ、30分なのだけど、難しい本は15分と決めれば、読めるかも。

    読み終わるのが惜しい本だったけど、読み終わった今、これからの読書に繋がっていくだろうと確信する。

  • 本を読むことは孤独に対する耐性が出来ること。
    本を読んでいる時は一人で読むものだから、寂しい等とは微塵も思わない。
    逆に周りに人が居たとしても本を読んでいたら、集中するためか周りのことも一切気にならない。

    この本を読んでとてもわかりやすい表現だったのが、本は聴覚ではなく、視覚。
    文字を〈読む〉のではなく〈見る〉という言葉に衝撃を受けた。
    読書法の本は、これまでいくらか読んできたが今回のように自分でハッキリと認識出来たことはなかったように思う。
    新しい視点を得ることが出来て本当にラッキーだった。
    これからは今回の本で得たことを自分の行動として積み重ねていきたい。

  • 読書は好きではなかった。読書好きな兄弟と比べられてきた。親に対する反抗だったかもしれない。

    この本に出会えてよかった。最初はかっこつけの読んでるフリでもいいから、プライドを持って本を読みたい。考え続けたい。

  • 近藤康太郎(1963年~)氏は、慶大文学部卒、朝日新聞社に入社し、川崎支局、学芸部、「AERA」編集部、ニューヨーク特派員等を経て、文化くらし報道部で「朝日新聞」の文化面、読書面、音楽面を担当した後、2014年より諫早支局長、日田支局長、天草支局長を歴任。いくつかの著書を持ち、社内外の記者、ライター、映像関係者に文章を教える私塾を主宰している。
    本書は、これまで膨大な読書をし、書いてきた著者が、「百冊読書家」になる、即ち、数限りない本の中から、自分にとってのカノン(正典)100冊を選べるようになるための方法を綴ったものである。
    私は習慣として読書をし、読書論・術の類の本も、これまで、ショウペンハウエル、M.J.アドラー、小泉信三、田中菊雄、清水幾太郎、加藤周一、松岡正剛、ピエール・バイヤール、斎藤孝、佐藤優、小飼弾、成毛眞等による古今東西のものを読んできたが、本書は、読書の技術よりは、「なぜ本を読むのか」、「本を読むとはどういうことなのか」に重きを置いた内容となっている。
    著者が、読書の技術の最終段階と位置付けているのは「抜き書きをする(そして、それを読み返す)」ことなのだが、それに倣って、印象に残った部分の幾つかを抜き書きすると以下である。
    ◆「本棚の背表紙というのは、その人の脳を見せているようなものだ。・・・深みのある本棚を最初に作ってしまえば、その人は、いずれ深い人間になる。美しい本棚の持ち主は、やがて美しい人になる。本棚が人格を作る。」
    ◆「「自分の好み」が変わっていくのでなければ、読書なんてなんのためだ、と思う。自分の好みが増える、好みの層が厚くなる。自分が変えられる。わたしにとっては、それが読書の最大の目的だ。」
    ◆「個々の読書体験が、ふとしたことでつながる。<分かる>とは、そういうことだ。・・・<知る=follow>行為が堆積していって、<分かる=understand>が発火する。ある日、ある瞬間、「ユーレカ!(分かった!)」と叫ぶ。読書の楽しみといって、これ以上のものはない。」
    ◆「読書とは、あらすじではない。・・・本を読むとは、本のシノプシス(梗概)を言えることではない。・・・むしろ、作品の<空気>を感じることが重要だ。本を読んでいたとき、どういう<空気>に包まれていたか。自分は何歳で、どんな環境にあって、どういう不安や悩みを持っていて、本を読むことで少し変わったのか、変わらなかったのか。自分が浸っていた<空気>を感じること。はっきり言語化できること。それが、「たしかに本を読んだ」というあかしだ。実感として何年たっても残る、読書の本体部分だ。」
    ◆「読書とは、答えや結論を得る方便ではない。読書とは、新しい問い、より深い問いを獲得するための冒険だ。「問い」が、そのまま「答え」になっている。終着駅ではない。始発駅に立つために、本は読む。そして、問いを発見した人が、世界を変える。答えは、世界を動かさない。なぜなら、世界にも、人生にも、そもそも「答え」はないから。・・・人生に答えなどないと覚悟を決めたなら、その人生は<迷宮>である。答え、正解がない。そんな答えも包含する。飲み込んで、新しい問いを生ぜしめる。無限の宇宙。」
    ◆「強い人とは、与える人のことだ。報いられることを求めない人のことだ。迫害されても、自分の人生を愛する。そのためには、ひとりきりでいることに慣れる。孤立を求めず、孤独を恐れず。本を読む。その、もっともすぐれた徳は、孤独でいることに耐性ができることだ。読書は、一人でするものだから。ひとりでいられる能力。人を求めない強さ。世界でもっとも難しい<強さ>を手に入れる。読書とは、人を愛するレッスンだ。」
    ◆「<百冊で耕す>とは、ついに、人を愛せるようになるためだった!そして、人を愛せる人こそ、自分を幸せにする人だ。自分を愛するのが幸せなのではない。・・・幸せな人を、よく観察するといい。幸せな人は、必ず、人を愛している人だ。・・・なぜ、本など読むのか。勉強するのか。幸せになるためだ。幸せな人とは、本を読む人のことだ。」
    読書について語りつつ、最終的には、人生とは何か、幸せとは何か、に行き着く、味わい深い一冊である。
    (2023年6月了)

  • 新聞の書評に関して、なるほど参考になった。

    地方紙の書評には不満があったが、図書館で全国紙を閲覧するとは!
    図書館で新聞を読んでる親父さんたちの中に入り込むのは、少々勇気がいるが(笑)

    積読はしたことがないけれど、のんびり書店に行って探してそして数点購入してみようと考えてる。

  • 自分の100冊を見つけ、人生を通じて更新していきたい。

  • 心の中で音読するなはぜひ身につけたい
    ゆっくり丁寧に読まなくても自分にとって重要な文章は目に止まるっていうのは納得
    本は基本的に冗長だと日々思っているので不要そうな文章はもっとサラッと飛ばして良い

    フロムの引用があったのは個人的にテンション上がった

    読書は浪費

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著者プロフィール

1963年東京都生まれ。朝日新聞社入社後、「AERA」編集部、文化部、長崎県諫早支局などを経て、現在大分県日田支局長。著書『朝日新聞記者が書いた「アメリカ人アホ・マヌケ」論』、『おいしい資本主義』他。

「2023年 『アロハで田植え、はじめました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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