青空の卵 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 772
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488457013

感想・レビュー・書評

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  • 一言で言うと、優しい気持ちになる小説。

    ただ、主人公が作者の名前なこともあって、
    おそらく作者の理想や夢、こうあってほしいという思いを
    小説にして空想の翼を豊かに広げているように思う
    (つまり、現実はいろいろともっと厳しい)。

    小説を読んでいる間くらいは人の優しさを信じてみたい、
    そういうときに読むといいのかなと思った。

    疲れた時とかやさぐれそうになったときに、
    甘いケーキを食べたくなることがあるけど、
    そういう心地よい甘さが含まれた小説だった。

  • 順番が前後しちゃいましたが。
    子羊の巣とに続いてこちらを読了。
    坂木&鳥井コンビの第一作であり作者のデビュー作。

    このふたりの関係を気持ち悪く感じる方も多いようだけれど
    わたしはなんだかうらやましい。
    性別を越えた魂レベルの信頼関係という結びつきが。
    それから鳥井の作る料理を食べられる坂木にジェラシーw

    以前も書いたけれど
    坂木司ワールドは本当にほっこりして読後感がいい。
    このシリーズ3巻目にして完結編の動物園の鳥を早く読まねば。

  • 久しぶりの良作でした。満足です

    まずひきこもりと聞いて連想したのがオタクやニートとかだったのですが違いました(笑)

    登場人物のキャラが濃く、その上分かりにくい設定だったため感情輸入がしにくくて最初少し読みずい部分がありましたしかし、物語が進んでいくとどんどんそのキャラがかわいらしく見えてきます

    探偵役の鳥井は大人と子供両方を兼ね備える精神不安定者。そのギャップに幾度も戸惑いました。

    異色な探偵と変わってワトスン役の坂木はいわゆる普通のお人よしなのですが、答えのない迷路でずっと迷っている感じで、どうにもにも煮え切らない印象を受けました
    (坂木は作者である坂木司自身でしょうから、作者自身が煮え切らない感じだったのかもしれません。)

    しかし、話が進むにつれこの二人のいびつな関係と世界観にどんどんのめりこんでいってしまいます!
    人との輪が広がり、ものの価値観、考え方をあらゆる面から考慮し事件(?)の解決に導きます
    分かりにくい精神不安定という状況をこうも鮮やかに書いてくれるのか!っと正直度肝を抜かされました
    最初辛辣な印象だった鳥井はどんどんもろく弱い存在になっていきます
    そんな彼が少しづつですが人とのコミュニケーションをし大きく前に進んでいくのが感動的でした、人情ミステリーまさにそ言葉がぴったりん作品です!

    こういう文を書くのはあまりないことなのでちゃんとかけていたかが不安です。どうか、暖かい目で見てやってください。
    ここまで読んでいただき、ありがとうございました

  • 優しい気持ちになれた。
    昔の自分を思い出せた。
    2013.8.15

  • 坂木と鳥井の友情は素敵だった。
    この本に登場する人物皆、大好き。

    1冊で1つの謎を解明するのではなく、
    1つ1つの章で謎が出来、解明されていくのがとても清々しかった。

    物事の解決は、身近なものを見てつなげていくことが大事なんだと思い知らされ、
    もっと自分の身近にあるヒントに着目しようと思った。

  • ひきこもりの友人を外につれだそうと努力する坂木さんの葛藤がせつないです。
    反面料理上手な鳥井くんが作る料理やお取り寄せの銘菓を自分も食べたくなりました。

  • 以前に書いた「仔羊の巣」のシリーズ最初の書です。
    このシリーズは「青空の卵」、「仔羊の巣」、「動物園の鳥」と言う3部作となっていて、あろうことか私は嘲笑する仔羊のジャケに捉まってしまい、「仔羊の巣」を先に買ってしまったのでした。
    そして今回は「青空の卵」を手に。
    そうです、ある意味「ポロロッカ現象」です。笑

    さてこの作品、最初読んだ時は男同士でこんなに密な関係って・・・と思ったんですが、読み進めると面白い。
    心に傷を持つひきこもり青年、鳥井。
    彼は他人との距離がうまくとれなくて、時に人をバッサリ切ってしまう物言いや、パニック状態になるなど問題を抱えているが、繊細な分、洞察力や推理力に長け、ただ一人心から信頼する友、坂木が持ち込む日常の事件を見事に解決する。

    坂木は鳥井の中にある自分にないものに惹かれ、自ら友人になると申し出て今日に至っている。
    坂木もこの鳥井のこととなると、仕事さえほっぽらかして駆けつけたりと、並みの友情ではないんだな・・・
    坂木はすぐ泣いちゃうし、坂木が泣くと鳥井パニック。(苦笑

    だけど、すごく優しい気分になれるお話です。
    事件も血なまぐさいものじゃなくて、日常にある謎解き。
    それが明かされると、とても清々しい気分になれます。

    個人的には鳥井の父が出てくるお話が好きですね。
    息子との間に出来た深いわだかまり。

    父が言う
    「真一(鳥井)が幸せでない限り、私は幸せにはなれないんだよ」の言葉、とてもじーんときました。

    人は弱いから逃げたりすることもあるけれど、逃げているうちは決して幸せにはなれないんでしょうね。
    当座の問題はやり過ごせても、自分の心からは逃げられないということか・・。

    鳥井の父の覚悟や、愛情に親として共感しますね・・。

    そして、坂木に見守られて、恐る恐る父の気持ちを受け入れようとする鳥井。
    周りの人たちもそれぞれに自分の問題に向き合おうとして・・。

    なのに、鳥井の口は相変わらず悪い。笑

    面白いので、完結編の「動物園の鳥」も読んでみようと思いました。

    初回が「卵」(殻を破れ)ってことなの?
    ラストのひよこはそういうこと?

    次回が「仔羊」(迷ってる?!)仔羊たちが集まっちゃったね、居心地のいい「巣」に。

    じゃ、三部目の「鳥」は鳥井?そんなベタな・・・。

    坂木の「鳥井が刀なら自分は鞘」って喩えはいかがなものか?!笑

  • 私たちの心は壁にぶつかったり、穴に落ちた時に支えが必要になる。
    それは宗教かもしれないしお気に入りの写真かもしれないし、親や友人かもしれない。
    その支えが安定しているほど自分の心も安定することができるのではないかと思う。
    坂木と鳥井はお互い不安定な人間だ。
    なのに二人の繋がりはとても強い。
    だから二人で一緒にいつもゆれている。
    外からそれをみている私は、ゆれる二つの影を奇妙に思ったり、不安を感じたりする。
    それでもその不安定さは、安定しているものよりも目を引くし、どんな風にバランスをとっていくのか気になってしまう。

  • 鳥井はすごい動物感があって引かれる。その点では坂木と同じなのかも知れない。でも鳥井という友達がいる坂木にも憧れる。鳥井の情緒不安定なところが好きです

  • 平凡であるがために非凡に焦がれる精神のまま、絶望の淵へとにじり寄っていく少年に手を伸ばした少年。邂逅を経て依存と呼ぶにふさわしい関係性を揺蕩う彼らを「日常の謎」が手招きする。

    ひきこもり探偵とお人よしの語り部が出会う出来事はいつだって人間が起し、人間が攪乱していき謎足らしめている。謎に結末をもたらしてからあるときは帰結しあるときは開始されていく人間関係はどこか温かく情があった。その度に潔癖なまでのお人よしさを半ば嘘であると自虐している語り部は世界の美しさと救いに涙し、感情を引きずられてなく探偵から手を離さないといけないのではないかと自問自答を重ねていく。

    やさしい話の集まりはどこか美しいが切ない。
    壊れてしまいそうな繊細さが常に雰囲気として漂っている。

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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