超ヤバい経済学

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314067

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。それが正直な感想です。小学校のときに「(ルパンの)五右衛門の斬鉄剣で銃弾を切れるか?」「ライダーキックの威力はどのぐらいか?」をテーマに扱った空想科学読本と似た印象を受けました。読んでいて苦痛を感じることはないです。

    経済学と銘打っていますが実際はそのなかで、ゲーム理論や情報の非対称性や統計学についての分析が主です。金利や為替や失業率についてのマクロ経済的な考察でなく、ミクロ経済を話の中心に据えた本です。本著最終章で述べていますが、スポットライトがなかなか当たりにくい学問領域なのでそういう意味では経済学について明るくない人にこそ是非読んでいただきたい。ですが、ひとつ注意なのが訳者の望月さんも指摘していますが地球温暖化に関してはミスリーディングがところどころあるというところ。地球環境問題はマクロ経済政策と同じくして、説明変数や制約が多いため幾つかのデータだけでは明確な答えを導きだすことが難しいということです。この本はそれについて賛否両論が起きているようなのでそこについては慎重に読み進めてもらいたいですね。

    第一章の立ちんぼ(娼婦)の経済学的考察はつかみとしては最高だった。一世紀前の売春婦は今よりも手取りが高かった、逆に今の売春婦は手取りが低い、それはなぜか?高級売春婦だと一軒家を建てるほど稼ぐこともあったそうです。これは是非本著を読んで答えを探してもらいたいです。ヒントは、売春婦のライバル(競合相手)は誰か?ということです。経済学者で、ある種下賤なテーマをえらぼうとする人は少ないので興味深いチャプターではあります。

    第三章の『身勝手と思いやりの信じられない話』についても面白かった箇所が幾つか。ここでは逆選択やモラルハザードについて実際にあった刑事事件を例に人間行動の非合理さを説明しています。ボランティアや寄付活動での慈善行為についても言及があり、人がしばしば行う「利他的な」行動というのはたいてい「利己的」であり思いやりがあるという評価を得る功利的な側面があるという指摘も新鮮な議論でしょう。先の100億円寄付するといった孫正義の内心は果たして?この章を読むとアンケート調査や、最近なら世論調査などの信憑性について客観的な見方が身につくかも知れません。

    第四章から最終章にかけて人間行動のトレンドを変えることの難しさをゲーム理論や行動経済学の立場から説明しています。人は癌になるとわかっているのになぜタバコを吸うのか?死亡率が高いと気づいているのになぜ飲酒運転やシートベルトをせずに乗車するか?地球温暖化に向かっているのになぜ人はそれでも今の社会を変えられないのか?ミクロ経済学の大きなテーマのひとつである、外部性もところどころ絡んできているのが面白い。これを書いている今、世間では福島原発が放出している放射線による被曝をおそれ東北の野菜を食べたくないという人が多数います。又、その前にはオイルショックよろしくトイレットペーパー(や食料)の買いだめが発生しています。風評には根拠がない、食料の供給は足りている、だからみなさん冷静にと蓮舫さんがお願いしようが集団のモーメントを変えることが難しいことを政策立案者は勉強するべきです。そして一般人である我々もそれについて一般教養として勉強して損はないと思われます。

    経済学とはなんぞや?ゲーム理論や統計学について軽く知りたい人は是非読んでみていただきたい

  • 社会科学って印象が強かったけど、これも経済学の一部分なんだろう。
    物事を多角的に観察してみると、こんなにも本来とは異なった答えが導き出されるんだなぁ。
    ただ、多彩な情報を基に導き出される考察には、最初からバイアスがかかってるんじゃないだろうかっていうのもあった。

    著者と訳者のウィットに富んだ文章が面白い。こーゆう文章って日本人には出来なさそうだなあ。欧米人だからこそって感じがする。

  • 経済学は全く知らないのだけれど、心理学や人間の行動に関する部分が主で面白かった。経済の話ではない気がするけど、面白いからどうでもいいや。

  • 本書では統計学的テクニックを使って社会の細々とした現象にメスを入れる。常識が覆される。前作に引き続く第2弾だが前より少しヤバいかも。英語が得意なら著者らが関わるインターネット上のコンテンツをいろいろ見ることもできる。賛否両論あるようだ(特に地球温暖化の章)。
    以下はamazon.comの紹介文のクイズを日本語化したもので本書で扱っている内容が見て取れるだろう。

    問1:インドの田舎の女の人の生活をよくするのに有効な援助をするならどれ?
    A. 男女産み分けの中絶を禁止する
    B. ケーブルテレビや衛星テレビを普及させる
    C. 女児を捨てなかった母親に補助金を与える
    D. インド人用(小さい)コンドームを市場に出す。

    問2:シカゴの売春婦が最も儲ける曜日は?
    A. 土曜
    B. 月曜
    C. 水曜
    D. 金曜

    問3:緊急医療室に運ばれてあなたの命が医師の良し悪しで決まるとき、医師の良さと関係ないのはどれ?
    A. トップランクの医学部の出身かトップレベルの病院で研修を受けたか
    B. 女医である
    C. 同僚から高く評価されている
    D. 治療費が高い

    問4;ガンに対する化学療法が一番効くのはどれ?
    A. 肺がん
    B. 黒色腫
    C. 白血病
    D. すい臓がん

    問5:心臓病による死が半減したのは何のおかげ?
    A. 安価な薬
    B. 血管形成手術
    C. 移植
    D. 検査

    問6:3歳以上の子供を致命的な怪我から守るためにチャイルドシートは普通のシートベルトより優れている
    A. はい
    B. いいえ

    問7:地球温暖化ガスを削減するのに個人ができる最良の方法は?
    A. ハイブリットカーを使う
    B. 週に1回くらいハンバーガーを食べる量を減らす
    C. 地産地消する

    問8:地球温暖化を止める最も有効な方法は?
    A. 消費を減らす公共的なキャンペーンをする
    B. 二酸化炭素排出枠(cap-and-trade)に対して合意する
    C. 火山を噴火させる
    D. 植林する

    問9:19世紀には出産の際に産褥熱によって母と子が死んでしまう危険が高かったが、その原因はなにか?
    A. 妊婦が着ていたタイトなペチコート
    B. 分娩室がある病棟の瘴気
    C. 医師が衛生的予防しないこと
    D. 分娩室で母親がすぐに起き上がること

    問10:9月11日のテロの余波でないものはどれ?
    A. 航空交通の現象とそれに伴うインフルエンザ蔓延の抑制
    B. ワシントンで警察がテロに対する警戒の為に人員を割かれたため他の犯罪が増えた
    C. 心理的効果のためアルコールの消費が抑えられ、交通事故が減った
    D. 国境警備の増強のためメキシコやカナダからマリファナが入ってこなくなったため、カリフォルニアのマリファナ農家が儲かった

    答1:B
    答2:A
    答3:C
    答4:C
    答5:A
    答6:B
    答7:C
    答8:C
    答9:C
    答10:C

  • 全体的に前作のほうがテーマは興味深かったと感じたが、温暖化のテーマは示唆に富み、考えさせられる。

  • ・前作「ヤバイ経済学」の計量経済学(統計分析)のテイストが面白かったですが、今作ではそこに行動経済学テイストが加わり更に楽しめました。

    ・独裁者ゲームの実験結果に対する「人には思いやりの心(利他性=不合理性)がある」という一般的な解釈に対して、観察者の存在が被験者の行動を歪めている可能性を示唆し、やっぱり「人はインセンティブに反応して行動する(合理性)」という主張は、とても新鮮に思えた。
     (この変の話は、「観察(の為の光)が、観察対象の微小な粒子に影響を与えてしまう」という量子力学を彷彿とさせて興味深い)

    ・腎臓移植の為の臓器売買市場を作るという(経済学者が好みそうな)案はアメリカでは否決されたが、なんとイランには実在する。
     つまりアメリカでは腎臓移植を受けられずに死ぬしかない人も、イランでは助かるのだw

    ・18世紀に流行した産褥熱の原因はなんとお医者さんだった。
     当時、医者は死体解剖した手をロクに洗わずに、赤ん坊を取り上げていた為、妊婦が細菌感染症に掛かっていた。
     その為、出産の死亡率は、産婆より医者の方が高かった。
     しかも、当時、手の消毒と産褥熱との相関関係に気付いたゼンメルワイスによる指摘があったにも関わらず、(今も昔も、医者という人種はプライドが高く、他人の忠告に耳を貸さない)大多数の医者は、「因果関係が不明だから」「そんな簡単な方法で、こんな難しい病気が防げる筈がない」とその忠告を無視していた。(パスツールにより、細菌が発見されるのは数十年後)

    ・「障害を持つアメリカ人法(ADA)」の為に、雇用者は障害者を雇用すると解雇しにくくなると、障害者の雇用を敬遠し、逆に障害者の就職が難しくなっている。
     →日本の非正規雇用規制の話にそっくりw

    ・地元で取れた食品を食べると、温室効果ガスは増える。
     食べ物絡みの温室効果ガスの80%は生産時に排出される。そして、大農場は小規模農家より生産効率がずっと良い。
     →日本のフードマイルや地産地消は、逆効果。

    ・人は普通、将来の問題を避ける為に大金を投じるのを嫌がる。特に、問題が起きる可能性がとても不確かなときは特にそうだ。
     日和見を決め込むにも一つもっともな訳があってそれは将来、今よりもずっと安く問題を回避できる方法が見つかるかもしれないからだ。

    ・太陽電池は表面の色が黒く熱を吸収する為、逆に地球を暖めてしまう。(吸収する熱エネルギー(極大) > (極小)発電する電気エネルギー)

    ・地球温暖化を防ぐには、発電所などが排出する亜硫酸ガスを細いホースで成層圏へバラ撒けば良い。しかも、この方法はとても安い。
     (巨大火山の噴火で、亜硫酸ガスが成層圏まで噴き上げられた結果、太陽光が遮られ気温が1度低下した自然現象の応用)

  • 行動経済学的な観点から世の中の出来事を論じるという本。彼らはそれをsuperfreakonomicsと呼んでいます。
    もとマイクロソフトの大金持ち技術集団が行っているアースエンジニアリング(地球のうえに排ガスをまけば地球温暖化解消!とかを考える人たち)の話に一番興味を惹かれました。やはり技術集団は世界征服とかを企まないと一人前じゃあない。
    書籍としてみると、私にはsuper freakonomicsとはなにか?ということが今ひとつ感じられなかったので(骨太のテーマ感?)これくらいの評価にしておきます。ただ、飛行機とかに閉じ込められたときに読むには良い本です。山形浩生好きなら一応抑えておきたい。一派の人が訳してるので。

  • 今話題の相撲八百長疑惑を統計データを元に分析し、限りなくクロに近いとずいぶん前に指摘していた著者の続編。
    行動分析の精度の話とか相変わらず面白い切り口で行動経済学の基礎を展開していくが、やや論文調なところもあって読み物として手軽さはさほどない。値段も高めだし。

  • 前作と同様、非常に読み応えがあり面白い。 物事を客観的に見る癖をつけることで何が事実が見えてくる。そんなことを気付かせてくれる。

  • ・前作に引き続きおもしろい
    ・身近な事例で惹きつける才能欲しい
    ・読みながら色んな事例で思うところあったけどまとめる気力なし
    ・こういう本は細切れじゃなくメモ片手に一気読みしないとだなあ

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著者プロフィール

スティーヴン・D・レヴィット
シカゴ大学経済学部教授
シカゴ大学経済学部教授。40歳未満で最も影響力のあるアメリカの経済学者に贈られるジョン・ベイツ・クラーク・メダル受賞。ヤバい経済学流の考え方を企業や慈善活動に応用するグレイテスト・グッドの創設者。

「2016年 『ヤバすぎる経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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