稲盛和夫の実学―経営と会計

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  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532190064

感想・レビュー・書評

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  • 稲盛和夫の経営哲学をもとにした会計について簡潔に述べている。
    実態に則した会計とは?
    キャッシュベースでの経営
    1:1の対応を貫く
    ダブルチェックで管理をシステム化する
    時間あたりの採算制度
    アメーバ経営で各組織が利益を求める仕組みに

    様々なヒントがある。
    すぐに生産性の高い機械に飛びつくのではなく、現状との利益率との差分を正確に測るべきである。
    経営者は人の心の火を灯すものである。
    目標数値は「どうありたいか?」「社員の心」を読み解き、いざという商機を見つけたら大胆な設定をするのもまた良い。

  • ・経営者は先代から引き継いだ事業を存続させなければならない。存続させるということは、今までの事業を単純に続けることだろうか、それとも新たなチャレンジを始めることだろうか?

     トップから、「売上・利益何億円」という目標設定を聞くたびに、私は、この会社の経営哲学は、何なのだろう?と疑問が湧く。経営者に要求されることは厳しいのだという状況はわかるが、金額だけの目標を社員に課すということには疑問を感じざるを得ない。

     製造販売業なのだから、その時代の社会情勢に適応した商品開発の目的を明確にし、どのように事業を展開させ、その結果として得られる売上・利益は何億円を目標をしましょう。という話を聞きたいのは、私だけだろうか?

     売上・利益が上がれば、その手段は何でもいいのだろうか?今までの仕事を継続的に、できることをやっていればいいのだろうか?それとも、新しいことやりたいことに挑戦することが望まれているのだろうか?クールに分析し、クールに判断すればいいのだろうか?それとも、エモーショナルにチャレンジすることがもとめられているのだろうか?社員は、そんな経営者の葛藤を共有したいと思っているのではないだろうか?

  • ・常識と呼ばれる迷信を前提に経営すると、考える機会を放棄して他社の模倣となり横並びとなる
    ・儲かったお金はどこにあるのか?を経営者は常に問いかけ、利益ベースではなくキャッシュベースで考えないと資金繰りに苦しむ
    ・顧客を満足させることと経理処理を正確に行うことは全く別であり、どちらも徹底しなくてはならない
    ・投資とは、自らの額に汗して働いて利益を得るために、必要な資金を投下することであり、苦労せずに利益を手に収めることではない
    ・人間や社会にプラスになるような価値は、投機的活動によって増加することはない
    ・ダブルチェックの基本は、一人ですべてができるようになっていてはならないということである
    ・企業が発展するためには付加価値を生み出し高めていかねばならない。その付加価値を表現するために単位時間当たりの付加価値計算をして、付加価値生産性を高めるための指標を用意して現場で理解できるようにした
    ・売価還元原価法は、製造にかかったコストを積み上げて原価を求めるのではなく、その製品にあてはまる原価率をあらかじめ計算し、それを個々の売値にかけて、売価を原価に還元する方式
    ・良い制度があるから採算が上がるのではなく、現場が採算を上げようと思うから上がるのである
    ・目標が高いか低いかをどう判断するか、トップダウンかボトムアップか、という発想で考えるのでは、決して優れた経営はできない。そのような良い方法があるなら、経営なんて誰でもできる。問題は、目標値の高い低いではなく、経営者がこうありたいと思う数字を持つこと。経営目標は経営者の意志そのものであり、決めた目標を現場にやろうと思わせることが経営者のやること。そのため、人の心をどうとらえるのかが経営において一番大事
    ・目標は何か、いったい何をやりたいのか、ではそのために何をどうすればいいのかをシミュレーションする。中国の古典に、天の時、地の利、人の和という言葉がある。天の時や地の利を得たとしても、最終的にことを決するのは心のあり方なのです。

    基本原則
    ・キャッシュベースで経営する
    ・一対一の対応を貫く
    ・固定費を抑えた筋肉質の経営に徹する
    ・完璧主義を貫く
    ・ダブルチェックで会社と人を守る
    ・採算の向上を支える
    ・ガラス張りで公正な経営を行う

  • 人の心が何よりのベースであり、人として正しい経営とは、を突き詰めたときにある、会計のあり方が示されている。システムというよりは経営者のあり方とシステムが正しく社会に一貫していることがポイント。


    ・原理原則に従うこと、シンプルであること
    ・値決めは経営そのもの

  • 会計学の勉強のため読んだ。会計は何のためにあるか、を深く考えた筆者の会計ルールを説明している。会計とは、会社の儲けを大きくするための、正確なパラメーターでなくてはならない。そのために、京セラ式減価償却方法や、1対1対応での費用管理、ダブルチェックシステムを用いている等、会計のために必要な仕組みを紹介している。

  • 会計『オペレーション』の本。


    会計にはルールや原理原則の話が多く、実際に現場に会計の考えを落とす際の話が少ないわけですが、この本は会計の考え方を現場に反映させ、業務を安全にかつ会社の各部署が一つの成果を目指す時に参考になる本。


    最初の減価償却の話だけでも痺れます。
    ちなみに、ソフトウェアの場合だと原価償却はどうなんだろう、とか。


    ダブルチェックの原則とか、発注と受注の担当を分けるとかは、ソフトウェアV&Vの話に近くて面白かったです。これは、社員を罪人にしない愛の話。


    アメーバ経営における間接部門の話しや付加価値の話を、もっと具体的に読んでみたいです。付加価値に関してはハードの製造とソフトの製造でちょっというか、かなり違いそう。

    コンウェイの法則というのがあって、システムというのはその会社組織構造を真似てしまうし、会社の器以上のシステムって作れないと自分は考えています。ですので、出来るだけ多く受注、最小のコストで生産、というのにちょっとピンとこない。会社の器にあってないと、受注が溢れますし、受注の時点でも何を作るか決まっていることも少なく、合わせて作る相手方の会社組織も割と変わります。生産の工数自体が読みづらいとか、何を作るか都度決定する所にもコストがかかります。寧ろ何を作るのか、そのリストを常に状況や組織の変化に合わせて、都度変化し、意志決定していくのが、ソフトウェアの付加価値生産の極意なのでしょうか。

    この本の原価の話の中で、実際にかかった原価から求めるのではなく、売上に応じた原価を先に決めるのは、おそらく、自社でコントロール出来るのは、他社から仕入れる部品の買いたたきではなく、効率の良い生産工程や、コストとクオリティのバランスに優れた製品の設計だからでしょうか。それらならおおよそ先に決めることが出来ます。

    ソフトウェアは時間あたりの生産性そのもの、生産性全体にアプローチすることもあります。時間と空間を超えて希望を人にもたらすこともあります。そうなると、ソフトウェアというのは、組織のマネジメントの構築そのものとも言えるかもしれません。

    あと、営業外収益にちょっと触れてましたが、この収益が良くも悪くも企業の余白や遊びな感じがします。あくまでも余白や遊びであり、本業ではないわけですが。本業になると、バブルを起こすのですが、間接部門が稼ぐことを意識したり、時代の変化に強くなるための実験場としての機能を果たしたり。もうちょい読みます。

    こういう実際の業務の設計と運用の話は面白いですね。

  • 内容としては経営と会計。方向性としては几帳面で生真面目。実際に著者のもとで働いたらたいへんかも、とすら思う。でも本書を読み進むと、決して理想論とか堅苦しいとは感じなかったんだよね。むしろ、そこまで追求して考え、行動しなければ生き残っていけないという現実の厳しさと面白さを感じた。

     本として非常に面白く、そしてためになった。実は買って積読になってから数年たってるんだけどさ。本には読むタイミングというものがあるんだね。ふと本棚で目があって、手に取ったら一気に読み終える勢いだった。著者の他の本も読んでみよう。

  • 開始日、読了日ともに不明

    京セラをつくり、KDDIをつくった稲盛さんの経営哲学、会計哲学を記した本。
    端的に示しているのでとてもわかりやすく、京セラでの実例や、セミナーにおける相談内容なども掲載されており、稲盛さんがどうやって会社経営に望んでおられるかが良く分かる。

    目次と付箋紙を追っていけばだいたい内容が把握できるので、あとでコメントしておくこと。

  • 一対一の原則。完璧な主義を貫く。ガラス張りの経営。改めて重要性を理解し、業務を見直そうと思った。また、会社の採算システムの凄さとありがたさを知った。毎日判断できる重要な試指標があること、誰でもアクセスできること、状況が可視化されていること。本当にすごい。だからこそ採算を個人個人がしっかり管理することが大事。あとは、粗利が付加価値だという視点は良かった。

  • 分かり易いし企業経営の本質について語っている。

    「実学-経営と会計」と書いてあるが、必ずしも具体的事例が書かれてあるわけではなく、コンセプトの説明が中心となる。書き下ろしではなく、口述筆記か講演の書き起こしかと思われる。

    文章中に自画自賛的な雰囲気を感じさせる所もあるが、著者の経歴からすると嫌味には感じられない。

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著者プロフィール

1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長に就任。84年、第二電電(現KDDI)を設立し、会長に就任。2001年より最高顧問、2010年には日本航空会長に就任する。代表取締役会長、名誉会長を経て、15年より名誉顧問となる。84年、稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。2022年8月逝去。その他著書に、『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』『稲盛和夫のガキの自叙伝』『高収益企業のつくり方』『人を生かす』『従業員をやる気にさせる7つのカギ』『成功への情熱』『生き方』等がある。

稲盛和夫の作品

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