ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

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  • Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784579402472

感想・レビュー・書評

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  • 僕は13歳の時、小さな島から長崎港の見える坂の上の一軒家に引っ越した。路地を挟んだ隣の家に、同じ年の男の子がいた。

    僕達は朝から待ち合わせて登校し、放課後も一緒にサッカーをし、夕暮れの細い坂道を一緒にだらだらと登り帰った。坂の途中、教会の脇の階段に座り込み話し込むこともあった。優しく慎重な彼が聞く。

    「県大会に行けるかなあ~」
    「行こうで。行けるさ!」

    生意気な転校生が答える。
    造船所のクレーンの影と海を挟んだ対岸の斜面に光る無数の灯が美しかった。

    一年後、目標であった県大会に出場したが、ふたりは別々の道を歩んだ。彼は高校卒業後地元で社会人、僕は県外で大学生。僕の家も再び引っ越して距離的に離れたが、二人はゆるくつながっていた。

    時は流れ、互いに結婚し、子供ができて、一緒に遊園地に行ったこともあった。彼が出場する社会人サッカーの試合を観に行ったこともあった。彼のお嬢さんが看護学生となり大学病院で挨拶したこともあった。銅座でばったり会って、カラオケバーに行ったりもした。

    振り返ってみると人生の岐路で僕と彼はなんとなく会い、いろんなことを淡々と話したように思える。僕たちの関係は、一言で言えば「ふたりはともだち」。

    先日、長崎県美術館で開催されている「アーノルド・ローベル展」へ行ってきた。おそらく誰もが子供の時に一度は手にした絵本『ふたりはともだち』や『ふたりはきょうも』の作者である。カエルのキャラクターを見れば、「あ~」とうなずくであろう。展覧会は、盛況であった。子供連れや女性が多かったが、僕らのようなおじさん年代もみかけた。

    本書は、内気で心配性の「がまくん」と、お人好しで行動派の「かえるくん」の日常を通して育まれる友情の物語である。おそらく作者の中に、「がまんくん」と「かえるくん」の正反対の二人が存在していたのだろう。誰しもが、自己の中に、陽と陰、光と影を抱えて生きていく。友達とは、ある意味、自分の写し鏡であり、分身のような存在なのかもしれない。
     
    僕は昨年膝を壊し入院した。コロナ禍であったので、元隣人の彼はスマホのメッセージや電話で見舞ってくれた。有難かった。

    今年は、彼が入院した。ある日の夕方見舞いに行った。僕と友達は病院の広い窓に椅子を並べて、ゆっくりとオレンジ色になってゆく風景を眺めていた。13歳のあの日のように、取り留めもない話をつづけた。サッカーや子供達や仕事の話。やがて日が暮れて坂の街に電灯が灯るころ、「来てくれて、助かった」と、友達は手を振った。僕は自分の無力さを感じながらもエレベーターに乗った。

    ふと、アーノルドの作品を思い出した。「君がいてくれてうれしいよ」と、互いの違いを認め合い支えあった「がまくん」と「かえるくん」、最後は「alone together (ふたりきり)」という言葉で締められた友情物語。ぜひこの夏、大人にも読んでもらいたい絵本だ。

    ▼所蔵情報
    ふたりはともだち / アーノルド・ローベル著, 三木卓訳
    請求記号: 726.6||L77
    図書ID: 1620474
    http://opac.lb.nagasaki-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN03739371

  • ふたりとも お互いが必要なのです

  • 優しい気持ちになり、
    思いやりとはどういうことかが
    感じ取れます。

  • 小2の息子が教科書で読み、懐かしくなって借りて一緒に読んだ。この本まるまる一冊読むのは初めてで、懐かしさと新鮮さが混じった不思議な気持ち。
    かえるくんとがまくんのキャラクターがチャーミングで、二人のやりとりが面白い!読み聞かせしながら笑ってしまった。自然体で好き。

  • 中学生以上なら英語で楽しむのもいい。

    https://www.ehonnavi.net/sp/specialcontents/essays/hitokuchi/sp_column.asp?no=22

  • 手紙書いてくれるかえるくん優しいなぁ
    教科書に載ってたよね〜
    かえるくん具合悪くなって、顔が青いよって言ったら「かえるなんだもの」って答えたのはかわいい笑

  • オープンな性格でバランス感覚を持ったかえる君と、引きこもりがちでサボりっぽいがま君の二人が織りなすショートストーリー。

    一見すると自堕落そうな印象を受けるがま君だが、彼の持つ悩みは人間が陥りそうな悩みを的確に反映しており、ストーリーを通して深く考えさせられる一面がある。
    かえる君はその悩みを解決してあげようと話を聞きアドバイスを与える存在。
    非常にクリティカルな問題に真剣に取り組む話がある一方で、時折投げやりだったりふざけていたりする解決策を提案するシーンもコミカルで非常に面白い。

  • 教科書で一部しか読んだことがなかったので、読んでみた。
    がまくんはずっとネガティブなキャラクターなんだなあ。
    4月のカエルくんの発言から、素敵な感性が感じられるのが良かった。
    かたつむりに郵便配達を頼むのは人選ミスでは?と思っていたけど、待っている時間のワクワクする気持ちも素敵なものですね。

  • すぐやるぜ!!

  • 私は小学校を途中で転校したので、千葉の小学校で1年生のときに、福岡の小学校で2年生のときに「おてがみ」を学習した。そのとき、先生によってこの話の解釈が違って、子ども心に「先生が言っていることが絶対に正しいわけではないんだな」と思い、自分なりに文学作品を楽しむことを覚えたような気がする。
    で、その頃から「おてがみ」は好きだ。それ以外にもこんなに楽しい話があるなんて知らなかった。
    とくにボタンをさがすお話が大好きです。
    絵本にこんなことを求めてはいけないのですが、自分のボタンがみあたらないがまくんが、「そのボタンはうすい、ぼくのはあついんだ」とか、「そのボタンはちいさい、ぼくのはおおきいんだ」とかくり返すので、対義語の概念が育ちます。ま、そんなこと考えなくても純粋におもしろく、見返りを求めない友情が心温まるストーリーです。
    いつもあたたかくがまくんを助けてくれるかえるくんが、川で水着を着て泳ぐおはなしのときだけ、他の動物たちと一緒にがまくんを笑いものにしちゃうところも、なんとも奥深いです。友情とは、ときにそういうこともあるのよ、と息子にも伝えたいです。

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著者プロフィール

アメリカ・ロサンゼルス生まれ。プラット・インスティテュートで学び、1961年、ハーパー&ブラザーズ社の編集者と知り合ったことがきっかけで『かえってきた さけ』の挿絵で、絵本作家としてデビュー。翌年には、文と絵の両方を手がけた『マスターさんとどうぶつえん』を発表する。1970年『ふたりはともだち』が誕生し、そのシリーズで絵本作家としての不動の地位を築き、54歳で亡くなるまで、100冊以上の作品を残した。

「2023年 『ダッドリーくんの12のおはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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