夜が暗いとはかぎらない

著者 :
  • ポプラ社
3.66
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本棚登録 : 2028
感想 : 190
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162743

感想・レビュー・書評

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  • 本棚を整理していて、間違えてデータを削除してしまいました。寺地さんの作品。図書館に本を返却してしまったので、本文が消えてしまったのがちょっと悲しい。読後前向きになれた。

  • 気になっていた一冊。
    この表紙のねずみが登場して暗躍するとは思わなかった。
    朝が明るいとはかぎらない、昼の月、夜が暗いとはかぎらない。

    大阪市近郊のどこにでもある小さな街にある、あかつきマーケット。
    そこのゆるキャラであるあかつきんが失踪して…。
    この街に住む人達の群像劇。

    あかつきんの生み出した花屋のおばさん、育児に悩むお母さん、嫁が実家にべったりで帰ってこない男性などなど。こうでなければいけない、こうしなければいけない、という枠に囚われて、くるしんで、それでも進んでいく。

    けむり、赤い魚逃げた、グラニュー糖はきらきらひかる、青いハワイがお気に入りでした。読み終わって、あたたかいスープを煮込みました。

  • ぐいぐい引き込まれて一気読み
    そこここの普通の人の悩み、喜び
    うまく掬い取ってるよねえ
    登場人物が多いけれど、そこここの人ばかり
    その人たちがゆるくつながっている
    ゆるキャラ「あかつきん」を軸に
    構成が面白いなあ、すごいなあ、うまいなあ
    ちりばめられた何気ない言葉にはっとさせられる
    すごいなあ、うまいなあ
     
    ≪ 暗い夜 明るい朝って くそくらえ ≫

  • 大阪市近郊にある、あかつきマーケット。
    そのマスコット・あかつきんが失踪した?
    あかつきマーケット周辺の人間模様を
    えがいた15編のお話です。

    タイトルと表紙絵をみて、
    ぬいぐるみ大活躍な、ほのぼの小説??
    かと思いましたが、少し違いました。

    確かに「あかつきん」という
    ゆるキャラ着ぐるみは活躍するし、
    ちょっぴりほかほかする話もありましたが、

    薄いレースのカーテン越しに
    物語をみているような感覚が
    読んでいる間、つねにありました。

    あかつきマーケット周辺と
    思われる場所であっても、
    あかつきんが登場しない話もあります。

    各お話同士はゆるくて薄い点線で
    つながっていますが、
    登場人物が多いため、
    再登場しても「これは誰だったかしら…」
    というときもありました。

    でも、こころに響くお話もあったりで、
    総合して☆3つにしました。

    「グラニュー糖はきらきらひかる」は
    仕事と子育てがしんどくなった心に
    甘さをあたえてくれるお話なので、
    オススメです。

    終盤のお話
    「生きる私たちのためのスープ」を
    読みきったときに、

    タイトルの
    「夜が暗いとはかぎらない」の意味が
    すうっと心になじんでいきました。

  • 生きていると、虫唾がはしるような人たちに遭遇する。

    その時、怒りをぶつける人もいる、我慢する人もいる、無感覚・失感情、ないしは解離することでやり過ごす人もいる。

    そのように日々の日常を過ごしていると、つい最近まで存在していたはずの大切な何かがなくなっていたり、失ってしまったことに遅ればせながら気づく時があるだろう。

    P.197『私たちは、そこにあるものがいつかなくなってしまうという可能性を、いつだって忘れがちだ』

    この物語の登場人物たちは皆なにかを失い、孤独に打ちひしがれる。

    失ったものは大切な他者であったり、理想の自己像だったり、様々ではある。

    そうした喪失感や孤独感を癒すのは、ほんの少しの善良さなのかもしれない。

    この物語にあるように善良さが広がってほしいとも思う。

    そうすればこの国ももうほんの少しだけ生きやすくなるんじゃないか。

    この本も時間を置いて再読したい。

  • あかつきんは 特に活躍しませんが
    あかつきんの中の人も
    この紡がれた物語の一人として
    少し成長してくれます
    連鎖的に何かが影響され 響き 変わっていく
    そんな温かさを感じる話になってます

    • さてさてさん
      musamikaさん、こんにちは。
      私も大好きな物語でした。musamikaさん書かれている通り、あかつきんは直接には何かする存在じゃない...
      musamikaさん、こんにちは。
      私も大好きな物語でした。musamikaさん書かれている通り、あかつきんは直接には何かする存在じゃないんだけど、なんだか存在感が大きくて、また、今度はどんな形で出てくるのかな?という期待感もあって、なんだか存在自体もいじらしく感じました。
      とてもあったかいお話だったと思います。
      ありがとうございます。
      2020/07/29
    • musamikaさん
      心があったかくなるお話って読むと
      みんな頑張ってるんだなぁって元気が出ますよね コメントありがとうございます。
      心があったかくなるお話って読むと
      みんな頑張ってるんだなぁって元気が出ますよね コメントありがとうございます。
      2020/07/29
  • 夜寝る前の、締めの読書として一日一章ずつ読んでいた。
    なかなか本屋で初見では手に取られにくいかもしれない一冊だけど、もしこの本と出会えたらきっと「読んでよかった」「出会えてよかった」と思えるはず。
    まもなく閉店するあかつきマーケットに関わる人たちと、あかつきマーケットのゆるキャラあかつきんとのほのかだけど確実にそこにあったいくつもの物語たち。
    突然失踪したのに町のあちこちで人助けをしているあかつきん。いつもそばにいる若い男性。彼らの正体は、そして目的は…
    生きているといろんなことがある。楽しいことばかりじゃない。でも、夜が明けたら朝が来て、朝が終わればまた夜が来る。
    そうやって私たちはいちにちいちにちを積み上げていくんだな。
    誰かのことを大切に思うこと、自分のことを誰かが思ってくれること。その思いが繋がっていく小さな幸せ。

  • たまたま大阪が舞台の作品が続いたが、今回は特段大阪らしさはなかった。人それぞれ悩みがあり苦しんでいる。それをほんの少し和らげることが出来るかもしれない。

  • あかつきマーケットという古びた市場と、そのゆるキャラ「あかつきん」を軸に、様々な人たちの物語が紡がれていく。
    登場人物がとても多い。でも、一人一人の上辺を掬い取るのではなく、一点を深く刺すような文章。
    短いお話のなかに、その人が何に悩み、何を求めているのか。心に訴えかけてきた。

    表紙に描かれてるのはまさに「あかつきん」。
    作中で言及されている特徴を完全に再現してる!

    一編一編は短いんだけど、はっとさせられるような、人生の真理とか、ままならなさが書かれていて、読みながら何度か涙を拭いました。
    数珠繋ぎ方式で、ひとつの話が終わると、その話に登場した別の人物を主人公にした次の話が展開していく。
    よくこんなに繋げたな〜!と、途中で感心してしまった。

    この本に登場する人たち、一度会うだけの繋がりの人もいれば、家族や友達同士の長い付き合いの人同士もいるけど、みんな、なんか良いな。
    寺地さんの本には、憎いだけ、嫌悪感だけって人が出てこないんだよな。
    誰が一番印象に残った??と問われれば、わたしは「時枝さん」。
    多分、読了した人の多くが「時枝?誰だっけ?」と思うでしょう。蝶々愛好家の会社員の男性です。
    時枝さん、自分が誰かに影響を及ぼしたって気付いてなさそうなところが、すごく良い。

    星満点じゃないのは、私が寺地さんの小説がとても好きで、勝手にハードル上げてしまっているからです。
    読み物として素晴らしいんだけど、寺地さんの他の作品からもらった感動と比べると、この本は少しライトだったかな。

  •  あかつきマーケットを中心にした町で暮らす人々を描く群像劇。
     3章仕立てで、第1章はプロローグを含め9つの短編、第2章は5つの短編で構成され、第3章のみ単独でエンディングとなっている。

          * * * * *

     閉店決定的のマーケットや、起死回生策として作られたゆるキャラ「あかつきん」のイマイチのイメージによくマッチした、垢抜けない町の垢抜けない住民たち。
     その1人ひとりに温かな光を当て丹念に描いた、いかにも寺地はるなさんらしい作品だったと思います。

     また、各話の主人公がリレー形式でつながっていくのもよかったけれど、章題がシャレていて感心しました。

     住民たちの悩みや困難を描く1章。
     闇の中にいるようでありながら、各話とも好転の兆しを仄かに感じることから、それは暁闇であることがわかります。
     
     次に「昼の月」のように頼りなげではあっても、希望の光を人々がきちんと認識したさまを描く2章。

     そして、町の中心だったマーケットが閉店となりお得意客も働く人々もより所をなくしたかに見える3章。
     それでも、悩みを抱えていた人々はそれぞれに少し強くなり、次のステップを踏み出していきます。その姿を、表題にもなったタイトルの『夜が暗いとはかぎらない』が見事に表していると思いました。参りました。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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