夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

著者 :
  • 扶桑社
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感想 : 344
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594075897

感想・レビュー・書評

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  • まぁーーーー、夫婦関係に年季が入ったヒビ割れのあるストーリーを期待したのに。序盤で、あっ、これは逆のやつ。あったかい話になるのではと不安がよぎった。

    筋違いの落胆は、散々ちんぽが入らなかった結婚生活の中盤にさしかかりガッツポーズに変った。よーしきた。落ちろ落ちろ。

    …もう人としてゴミだなと自分を呪う。
    実際、歪みきっていても心暖まるストーリーだった。


    作者の言う、身近な人にほど大切なことが伝えられない病。それを私の妻も患っている。彼女の苦しみを、この夫のように泰然と受け止められない。私も渇いているし、悔しいし力不足を散々悔やんできた。そんなダメ夫100%目線で読んでしまい、100%ブーメランで返ってきてさらに落胆。お釣りも出ない。

    妻に入らず風俗で紛らわす夫に対し、それでも尽くす気持ちを捨てなかった作者はバリカンを持って夫の髪を刈る。

    ── 夫の頭は、カラスに食い荒らされた玉ネギのようにデコボコになった。



    笑ったー。油断した。
    ふと漫画家のカレー沢薫先生の夫が頭をよぎる。
    なんだよ。どうしてみんな笑えるんだよ。
    笑えない自分だけが置いて行かれた気分。渇き。

    私も身近な人ほど大切なことを伝えられない病人だからなのか。そうなのか?

    そうなのか…と1%くらい思った。
    デコボコ夫婦まで、いや出来た夫まであと何冊本を読めばなれるかわからない。

  • H30.11.17 読了。

    ・タイトルが気になって、手にとった本でした。内容は深いですね。チンポが入らない理由は・・・。でも、夫婦が紆余曲折しながら、よくぞ20年も連れ添ってきましたねと感服しました。こだまさんの夫がこの本を手にするのはいつのことやら。

    ・「『どん底』を持っているだけで、私は強い気持ちになれる。」
    ・「誰とも比べなくていい。張り合わなくていい。自分の好きなように生きていい。私たちには私たちの夫婦のかたちがある。」
    ・「私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。それがわかっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。」

  • ひりひりする。
    タイトルに嘲笑い、発売当時に仲の良い先輩と「ノリで」買ったことを覚えている。

    最近、家に本を置く場所がなくなってきて、整理していたときに久しぶりに手に取った。
    「もうこんなふざけたタイトルは手放そう」と思い、最後にどんなんだっけと読み返したのがだめだった。

    ああ、ひりひりする。
    この作者の生きてきた人生。分からないようで分かる、異常なようで、誰にでもありうる普遍的な生きづらさ。「普通」という呪いにとらわれて苦しむつらさ。
    「どうしても入らない」という精神性。家族との関係。
    そして、最後の手書きの迫力。

    誰の人生もみな、「名作」になるのかもしれない。ひっそりと耐えて生きてきたこの人のように。

    読み終えた後にはやっぱり、まだ家に置いておこうと思わされた。


    (そして再読すると、あの時は知らなかった乗代雄介さんの名前があとがきに載っていて驚いた。いまや芥川賞ノミネート作家…!)

  • ずっと気になっていましたが、やっと読めました。とても良かったです。最後まで読んで、タイトルにすごく納得しました。

    文章も読みやすく、前半は思わず笑ってしまうほど面白かったです。

  • この感想が適切かはわからないけど、すごく良かった。なぜ適切かわからないと濁すか。それは、作者はきっと自分の人生について、夫を含めて最終的には肯定的に見ているように見えるのだが、読者である私からだと主人公だけが我慢しすぎてかわいそうだと思ってしまうから。
    教員、そして家庭生活の日々の中で唯一の捌け口だった、日記を書いていたサイト。主人公はサイトを訪れた相手の欲のままに抱かれるが、ずっと後になってから最初に会った男に指摘されるまで、実はそのサイトが出会い系だと気付かない滑稽さ。たとえ主人公がその日記に日々の苦しみを綴っていても、結局はそういうキャラ作りだと思われてしまう。これってなんて酷い話なんだろう。
    酷いのは夫もだ。入らないからって自分だけ咥えさせて顔射して寝る??夫とその後一緒にお風呂に入り、顔を洗っているとかならまだ愛があるけど、そんな性行為で主人公が得るのは虚しさだけだ。
    顔射する人間は女性の尊厳を傷つけていると思う。もっとも、主人公がそれで快感を覚える性癖なら何も問題ない。しかしどうもこだまさんの文章を読むと、そこに主人公が快感を得ている描写がないのだ。だからかわいそうという感想が浮かんでしまうのかもしれない。
    主人公がセックスで存在意義を感じるのはいい。それは勝手だ。しかしなぜ主人公に関わる全ての男、そして夫は、自分だけの欲求を押し付けばかりで、主人公と共に気持ちよくなることを考えていないのだろう。どうしてそんな男に囲まれた人生でも、主人公は肯定的に捉えられてしまうのだろう。

    ここまでが、読んで悲しくなったところ。
    「良かった」というのは、多くの女性が感じるであろう心の機微を文章にしてくれたこと。私も存在意義を感じたくて、気持ちよくないセックスをしたことだってある。そのとき感じた充実感と虚しさをここまで文章にしてくれた作品は今まであまり出会ったことがない。
    そしてその二つの感情を私が抱いていたのは若かりし頃の話だ。この主人公で言えば、処女を捨てた頃合いか。決して結婚してからではない。過去には自暴自棄なり、教員になってからも傷つき辞めた私も、今では人並みの幸せを夫と得ている。
    そう、これがすべてフィクションであるなら、私は問答無用で☆5を付けた。痒いところに手が届く最高の文学だから。ただ、実際にこの日本を生きる女性の随筆だからこそ、☆5は付けられなかった。

  • しかしインパクトのあるタイトルだ。読後感としては、色々考えさせられる予想外に重みのある作品だった。
    タイトル的に図書館にないかもと思ったが、ちゃんとあったw
    「されど私の可愛い檸檬」の書評から、この作品を知り、これからそちらも読む。

  • 仕事のできる彼は家庭の事で人に言えない悩みを持っているかもしれず、いつも明るくて優しい彼女は自分の性別に違和を感じているかもしれず、責任感が強く、いつも人に優しくありたいと願っている担任の先生は、ちんぽが入らないのかもしれない。
    いつだって人を傷つけるのは、想像力の無さから生まれる悪意の無い一言で、そんな言葉で傷ついた人を救ってくれるのは、世の中のふつうを押し付けず、ありのままを受け入れてくれる人の存在なんだと思う。
    話の内容は重いが、軽妙な語り口でとても読みやすい作品。タイトルで忌避せず、是非多くの人に読んでほしい。きっと明日から少し人に優しくなれる。

  • 驚きのタイトルですよね。独特なネーミングセンスだと思います。ただ、そのおセンスのおかげで、年頃の娘がいる我が家の本棚には並べる事が出来ず、電子書籍にて購入しました。

    夫のちんぽが入らないのは、この夫婦にとっての1つの問題・・・というか1つの”事実”であって、その他に様々なことが起こります。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/01/12/075658

  • 現代版「人間失格」とでも言えるような1冊でした。面白かったです。人に言えないことを抱えて、それでもなんとか人間のかたちを保ちながら生きている。そんな素敵な夫婦だと思います。

  • すごかった。読んでよかった。
    言葉にするのを躊躇うようなタイトルだけど、内容はさらに衝撃的。

    性交渉できない夫婦関係に加えて、あこがれだった教員としても上手く行かず、精神病を煩いながら、親や世間に普通を押し付けられながら生きていく筆者の、重たい人生が綴られます。
    重いだけではなく、自虐的なユーモアもあるので、クスッと笑えてしまうところも多い。真面目に読んでるタイミングでズルイと思いました。
    癖になる文章でした。

    以前読んだコンビニ人間を思い起こさせるような感覚がありました。
    語る人もズレているかもしれないけれど、その人に「普通」を押し付けて追い詰めていく構図がそう感じさせたのかも。

    結婚や子育ては人を成長させるし、とても貴いものではあるけれど、この世の中には様々な事情を抱えた人たちがいて、それが出来ない人もいる。
    歪みがあったり、健全ではなかったり、そういうことがあると正常化しようとする人は多いのだけど、歪むことでバランスをとっている人もいるし、そのあり方でないと生きていけない人だっている。
    ここまで壮絶ではないにしろ、この人の辛さは共感できる部分もあったし、自分ごとで気づくことも多い本だった。

    兄妹のように寄り添う夫婦のあり方に、惰性ではなく、切れない繋がりがあって一緒にいるのを感じた。
    愛だの思いやりだのとも少しちがった寄り添い方で、お互いを尊敬している部分も確かに感じて…本人たちにしかわからない感覚もあるんだろうけど、こういった夫婦のあり方は新鮮に感じました。

    胃にくるような重たい話です。
    こんな夫婦もいるんだという事実を知れてよかったと思うし、世の中の「普通」から外れて苦しむ人や、人に言えないことを抱える全ての人にとっても読む価値のある本だと思う。

著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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