インザ・ミソスープ

著者 :
  • 読売新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784643970999

感想・レビュー・書評

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  • 気持ち悪い。。。

  • 後半の殺戮シーンは良かったけど、もっとフランクの詳細が知りたかった。
    最後が腑に落ちん。尻切れトンボ…

    2013.05/28 読了。

  • 「もう飲む必要はない、ぼくは今ミソスープのど真ん中にいる、コロラドの寿司バーで見たミソスープには何かわけのわからないものが混じっていた、野菜の切れ端とかそんなものだ、そのときは小さなゴミのようにしか見えなかったけど、今の僕は、あのときの小さな野菜の切れ端と同じだ、巨大なミソスープの中に、今僕は混じっている、だから、満足だ」(235)


    ケンジは、外国人相手に風俗的な観光のアテンドをしている。
    年末にかかってきたフランクからの依頼の電話でその物語は始まる。
    フランクは猟奇的殺人鬼で、幼い頃から人を殺してきた。



    「…人を殺すとき、どれほど緊張してどれほど集中が必要かケンジにはわからない、極度に研ぎ澄まされる、そいつが発している信号がわかる、信号は、脳を巡る血流からくる、退化している人間は脳を巡る血流がものすごく弱い、殺してくれという信号を無意識に発しているんだ、だからぼくは殺す、…」(234)


    戦慄を覚えるような殺人現場の描写は、恐ろしいほど淡々としていて、恐怖だとか同情だとか、そういった類の陳腐な感情は組み込まれていない。
    これが妙に居心地がよく、そして妙に落ち着かない。



    誰だって一度や二度は人を殺したいと思うような悪意を持ったことがあるはずだ。でも、何かが歯止めをかける。その人の空洞から生まれた悪意が、その人の空洞の底で止まり、やがて忘れられて、別のものに、たとえば仕事に対する熱意のようなものに変わったりする。フランクは違う。フランクが殺人者かどうかはわからない。でも、彼には間違いなく底のない空洞がある。(102)



    人間は想像する。
    他の大型獣に比べて圧倒的に非力だった人間が生き延びていくためには、想像する力が必要だった。
    それはポジティブに発揮されれば武器になるが、
    ネガティブに発揮されれば恐怖や不安や憎悪という形になって返ってくる。
    自分が他の誰かの血をもう一度飲むのではないかという想像力の不安にフランクは耐えられなくなり、自分の手首を切る。
    人は、自分の想像の恐怖に駆られたとき、それを現実の世界にスルーさせて自分や世界が崩壊するわけでないことを確認する。



    フランクには、殺したいとか苦しむところを見たいとか、そういった欲求はないと思う。
    ただ、日常的に、他人に注意をするような感覚で、
    この人間を殺そう、という流れになるのではないか。
    恐らく彼にとってはそれが「普通」で、
    でも、世間から見ると異常なことで、
    彼は、「ウイルス」のような人間だと見做される。



    ケンジの前で、ウイルスになる必要がなくなった彼は、
    まるで人間の汗のような匂いがする、
    そのくせ見た感じがどこか妙に洗練されて上品な変なスープのなかに浮かぶ「その他大勢」になった。



    人混みに紛れながら思う。
    私もウイルスなのかもしれない。
    その恐怖が、埋められない空洞になったとき、
    私もフランクになるのではないか、と。

  • ホラー・サスペンス的な要素の多い小説。
    ただ、さらに評価できるのは、その中に現代社会に生きる人間の心理を描いている部分だと思う。
    歌舞伎町の風俗街に代表するように、現代人はお金が第一と考える一方で、その消費方法として自分の寂しさや孤独を紛らわせることを採用している。

  • 読んでて嫌悪感を覚えさせるような表現力の高さはすごい。暴力的な描写は読んでて鳥肌が立った。

    ただこの小説、たいしてストーリーがなくて、作者の日本や日本人に対する(政治的な事ではない)不満と、白人に対する憧れとコンプレックスをそれらしく文章化しただけのように思える。

  • 小学生の頃、新聞の連載を毎日くらいつくように読んでた。
    その頃は途中から読み始めたから最初の展開を知らなかったけど
    高校生の時に改めて文庫版を読んで、やっぱりこの本は小学生時代の私のバイブルだと思いました。

    理由なんて、どこにもない。

  • 描写がストレートなので、かなり刺激的だった。

  • 想像を裏切られた!思ってたのと違う!!いい意味で?悪い意味で?
    もっちろんいい意味で!

    友達にドグラマグラと同じ系列で挙げられたものなんだけども読んでみたらスラスラ進んで、疑うべき所を簡単に呑み込まれて、ぽっかりと空いた穴に思いもしなかったものが入れられてしまう。

    何を考えながら読めばいいのか?
    単にこのカバー並みの顔を思い浮かべて登場する外国人の背中を追えばいいのか、そんな覚束無い気持ちを主人公は代弁する。
    案外、飛び込んでいく気持ちで読みにかかった方が自由を感じれて良いのかもしれない。

    個人的には「いい本読めたな」って気持ち。心には残らないとしても、それがいい本なら問題ない。

  • 題名からすると身近な題材かと思いきや人間の深い暴力的欲求を描く内容でした。
    外国人の視点から見る日本や日本人の理解できない部分が、時におかしく時に深刻に描かれ考えさせられました。
    リアルな描写に気持ち悪くなりました。

  • 飛行機の乗るときは、本を必ず持っていきます。そんなあたり前の行動の中、選んだのこちら「イン ザ・ミソスープ」。よし!これから仕事だってときにこのテーマは、重たすぎますね。と否定的な書き方ですが、中身は最高です。人間の内面を飛んでいくように描写していて、あっという間に読んでしまいます。人間について書く作家さんが少ない今、こういう作品は重宝しますね。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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