みみずのカーロ: シェーファー先生の自然の学校

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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772602433

作品紹介・あらすじ

南ドイツ・ライン川のほとり、ブドウ畑がひろがる丘のふもとの小学校は、ちょっとかわっています。たとえば、この小学校にはゴミ箱がたった一つしかないのです。この学校の子どもたちはこれまでに四万五千本以上の木を町の回りにうえたり、放課後にはミツバチをそだてたり、観光ガイドをしたり、ジャガイモづくりをしています。また、みみずが大活躍をしている学校なのです。でも、この学校でいちばんわかっているのは、ひょっとしたら校長先生かもしれません。ヨーロッパ環境賞、パンダ賞などに輝くすてきな環境教育を紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 光村国語教科書5年生紹介本

    南ドイツのメルディンガー小学校で行われている環境教育のドキュメンタリー。
    教育といっても自然のこと、環境のことを知り、子供たちが自分で動くことにより、地域を変えて自分に自身を持つことまで繋がります。
    本としても、取り組みとしても大変良い。

    ❐教室に「カーロ」という名前のミミズを入れた箱を置き、土の上に、庭の落ち葉、授業で出た鉛筆の削りカス、子供たちの食べた物の生ゴミやプラスチックなどを置く。
     カーロは自然に戻るものは土にするが、プラスチックなどはずっと残ったまま。そこで子供たちは「プラスチックや缶は自然に戻らないんだ」ということがわかり、自然に自分が使うものも「カーロが嫌いなもの」は避けるようになり、町全体のゴミがぐっと減った。

    ❐算数や国語もカーロを使って問題を出す。「葉っぱが10枚あります。3枚カーロが食べたら残りは何枚?」子供たちは身近に感じられて勉強を楽しむことができる。

    ❐町全体の環境回復に子供たちも参加できるようにした。このときにあまり「森林が枯れた。石油事故」ばかり言うと他人事だし気持ちも暗くなる。そこで自分に何ができるのかを考えて実際に参加する。町のぶどう畑を水害から守るために木を植える、など。それにより動物たちの巣が確保されるなど、自然のサイクルも分かる。

    ❐テスト問題にも自然サイクルのことなどを入れて、家庭の大人たちにもわかってもらうようにした。

    ❐これからは機械科で失業者も増えるだろう(本の出版が1999年なので、これを言われたのは今から20年以上前)。そんな子供たちが自分に自信を持つために、子供たちが自分の手で何かを作ることができることを体験させた。
    町の人々の協力を得て畑を作る手伝いをする放課後教室を作る。「じゃがいもを植えましょう」だけでなく、「鳥の巣箱を作る」などサイクルで活動する。
    体験は町の人々の必要なことがあれば色々あった。イノシシが盛り土をして困っている農家がいたら、「イノシシの盛り土を地ならしする」作業をして、イノシシ駆逐を防ぐなど。

    これは本当に生命の持続に自分がいるということがわかり、自分の手で良いことができる自信にもなる素晴らしい取り組みだ。
    自分たちがゴミを減らす⇒新しいゴミ焼却炉を作らなくて良くなった⇒焼却炉建設予定地の自然が守られた⇒自分の家のぶどう畑が守られた/動物たちの棲家が壊されなくて済んだ
    …ということが身をもってわかる。そこで「これからもゴミは減らそう」「水害が起きないように植物を植えよう」ということが自発的に行われ、自分も何かをしたという自信につながる。

    これは個人単位ではなかなか難しい。自治体や国でこれを考えられたら素晴らしいですよね。

  • シェーファー先生の自然の学校の話。子どもたちは、みみずのカーロを観察し、「自然に還らないゴミ」を学んだことをきっかけに、自然を守るためのさまざまな活動を行なっていく。

    ドイツに実在する学校と先生の環境教育の実践を子ども向けに紹介している本。よいゴミとよくないゴミのこと、ゴミの減らし方、自然を守るための地域でのアクションなどについて、先生のクラスの子どもの体験と気づきを通して学ぶことができる。

    少し古い話だが、読み物として面白く、わかりやすい言葉で自然を守る重要性や、自然を守るための工夫や知恵を語っていてよい本。子どもに勧めたい。

  • みみずが食べられないもの、というのが分かりやすい。校長先生のやっていること、日本だと許可、承認、手続き、、、とか必要なのでなかなか難しいだろうな。反対していた人々が応援団になってくれるところもいいね。教育や企業の理想モデルでしょう。

  •  言ってみれば、ドイツ版総合的な学習。

     校長先生自ら、環境教育、キャリア教育に取り組んでいく様子が、小学生にも分かるくらい、やさしく紹介されている。

     素晴らしいのは、それらの学習が、子どもの世界で終わってしまっていないこと。保護者や地域を巻き込んで、町全体に広がっているのが驚きである。

     ちょっと遠いけど、この町に行ってみたいなあ。

  • ちょっとしたアイデアと、それを自分達で実行してみることで、世界が変わるんだということを教えてくれる本。
    ドイツの小さな町の「ちょっと変わった」小学校の取り組みのお話。

  • これの本を読んだことがきっかけで、庭にコンポストを作ってミミズさんに生ごみを分解してもらっています。
    ミミズさんはどんどん増えていって近所の小学校にも分けてあげました。
    ミミズさんは、本当にすごいので、皆さんぜひよんでみてくださいね。

  • 以前から読んでおこうと思った本。大人と子供の本気、教育の大切さを考えさせられた。

  • ドイツのある小学校では、ゴミ箱が1つしかない。それは、学校全体でゴミを出さないようにしているから。そのキーとなっているのが、ミミズです。自然の循環を考えながら、それを日常に活かしていく実践。とある中学校入試の問題にもなっていたそうです。

  • 『森の幼稚園』を読んで著者の今泉みね子さんに興味を持ち、この本を手に取りました。
    この本は著者が子ども向けに書いたはじめての環境教育の本で、子どもたちの体験や学びを通して、生物多様性などについてやさしく書かれています。
    大人が読んでも目から鱗が落ちるようなアイデアや、勉強になることばかりです。登場するみみずのカーロが色々なことを教えてくれます。
    子どもたちにも読んでもらいたいなと感じたので、学級文庫にしたいと思います。小学校3年生以上の教室におけると思います。

  • エコ嫌いの私にまでゴミを減らそうと思わせる本。こういう小学校に通いたかったし、こういう町に住みたかったなーと思いました。

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著者プロフィール

東京都生まれ。
国際基督教大学教養学部自然科学科生物学(生態学)専攻卒業。
1983年から1986年に、西ドイツのフライブルク大学に子連れ留学する。1990年からフライブルクに永住、ヨーロッパの環境政策・対策について執筆・講演・調査、動植物や環境問題についての英語・ドイツ語書籍の翻訳を行う。

「2018年 『ようこそ、難民!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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