哲学者とオオカミ: 愛・死・幸福についてのレッスン

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560080566

作品紹介・あらすじ

気鋭の哲学者が仔オオカミと出会い、共に生活しその死を看取るまでの驚異の報告。野生に触発されて著者は思考を深め、人間についての見方を一変させる思想を結実させる。

感想・レビュー・書評

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  • 2018年は戌年、最初の1冊は干支にまつわるものと決めているので、以前から気になっていた本書をチョイス。

    哲学者である著者が、ブレニンと名付けたオオカミと共に生きた記録です。
    ある程度予想はしていましたが、哲学的な記述になるたびに私の苦手意識が頭をもたげてきて、読むのに少し時間がかかってしまいました。

    オオカミは問題解決の課題には優れるが、訓練的な課題ではイヌに劣る、ということは目からウロコでした。
    例えば、合図のあとに右回りをするように教えても、オオカミはなぜそうしなければいけないのかがわからないのです。(なんのために?なぜ左回りではだめなの?···となるのがオオカミなのです。)
    自然の中で生き延びるために、目的と手段の関係で物事を理解するオオカミの頭脳がよくわかるエピソードでした。

    オオカミの生態だけでなく、人間の生き方についても示唆に富んだ1冊でした。
    過去にとらわれたり、未来の不安に怯えるよりも、オオカミのように「瞬間を生きる」ということを意識しながら2018年もがんばります!

  • 哲学者による、「愛」「死」「人間とは」「幸福とは」を語るエッセイ。この手の本はいくらでもあるが、本書の特徴は、哲学者である著者がオオカミとの暮らしの中で得た気づきが中心になっていること。全く新しい視点を見せてくれる。「動物が他者を攻撃するのは本能に基づくものであるが、人間(サル)だけは悪意に基づく」「人が何かをすべきでないといときは、それが実現できないということを含む」「人間がもたらす邪悪のほとんどは、悪巧みの結果ではなく、道徳的な義務を果たそうと言う意思の欠如から」「幸せは感情ではなく、存在のあり方」「人間が死ぬ時に失うものは、それまでの人生で積み重ねた努力」「シーシュポスの幸せ」

    人間による人間の考察にとどまらず、動物の一種、特にオオカミから見てサルの一種である人間とはどうなのか、愛や死をどう捉えるべきかという切り口が新しく、学びになる。どうやら筆者は相当な変わり者だが、そのことがこの新鮮な体験・学び・記述になっていると思うと、ありがたい限り。

  • 何故ヒトはこんなにもオオカミという存在に惹かれるのか。その答の一つがある気がする一冊。

  • 平たく言い換えると、アル中の軍隊上がりの哲学者兼先生兼物書きが、純度96%のオオカミ犬を嫁に迎えた話。
    そんな中、先生の生き方に振り回されるオオカミ。逆にオオカミの幸せを追求しながら苦闘する先生。
    エッセイ的な要素だけでなく、途中途中に繰り広げられる哲学や神話も長時間の列車旅にはちょうどいい。
    (わざと砕いて書いてます。)

  • -生きる事がもっとも活気に満ちているときには、歓喜と恐怖は区別出来ない-
    驚くほど美しい本。オオカミと暮らす事になった哲学者の記録。その経験から垣間見える幸福、人生、愛、死。
    人生を直線と捉え、今この瞬間は過去と未来の不完全な変容対と人は考える。対してオオカミにはこの瞬間しかない。この瞬間は過去と未来から独立し簡潔しており、それ自体として意味を持つ。人間の人生は直線を飛翔する矢であり、オオカミの人生は円環である。(アリストテレスのエネルゲイヤ的人生)
    人間は瞬間を瞬間として捉える事が出来ない。存在しない未来の可能性と変えられない過去の狭間。そういえば禅は両者を頭から除こうとする。
    アリストテレスが試みた幸福の定義は本分中にも登場するけどそれ自体で簡潔した状態。(我々が日頃考える幸せとは"幸せな状態になる為に前提として必要とされるもの)
    はっとした表現は、「目標は一度実現してしまえば不幸になる」。これは社会的に成功した人がよく語る事でもある。
    瞬間を繰り返し辿り付いた先に訪れる生物学的な「死」こそが、それ自体完結した(解放された)幸福、という結論に反論は出来なかった。

  • 読みやすく、泣けた。

  • 哲学者が一匹のオオカミと一緒に暮らしその死までを見届けながら、幸福、死についてまとめた書である。同じように群れを作る習性があるサルとオオカミを比較し、騙す、謀るという知能をサル(もちろん人間も)が身につけることになった理由が性欲ではないかというところは納得がいった。人間社会の犯罪の多くは性に関係している。また、『人間は幸せジャンキー』とも表現しいろいろ分析しているが、結局最後は、最良の妻を持ち、お子さんにも恵まれ、皆が欲する幸せを得ているではないか、と突っ込みたくなった。

  • 面白い。この本を読んでオオカミはもちろん、イヌも好きになってしまった。
    擬人化か施されていないオオカミの姿は、オオカミと兄弟のようである人間(著者)であることを照らし出す、フラッシュのように擬人化されずに記録されている。
    後半のニーチェの永劫回帰からの展開が素敵だった。最高の瞬間と苦痛は矛盾しない。

  • 動物好きなので読んでみたけれど、オオカミの話が半分、哲学の話が半分で、ちょっとがっかり。
    オオカミとの生活がとても魅力的なだけに、その部分がもっと多かったらよかったのに(涙)。
    日を改めて“哲学書”として読むと、また違った感想になるかもしれません。

  • 哲学

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著者プロフィール

1962年ウェールズ生まれ。哲学者。著書に「哲学者とオオカミ」など。

「2013年 『哲学者が走る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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