虹ヶ原 ホログラフ

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 3884
感想 : 363
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778320201

感想・レビュー・書評

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  • 「僕はどうしてか、今日も僕だ」

    浅野さんの漫画には、はずれがないですね。
    歪んだ街と、そこに住む歪んだ人たち。

    けれどその歪みは決して絶望的なものじゃなくて
    ただ人が人であるためにだけ存在している。そんな気がする。

    大都会、ではないけれど
    街という場所が身近になった今、誰しもが感じるものがあると思います。

  • 登場人物たちが小学生だった時代と現在が交互に語られ、また物語を見る視点もいろいろな人に飛ぶが、断片的な話をつなげていくと、ストーリーが浮かんでくる。プロットは割としっかりしていて、冒頭の双子と、二つに割れた蝶が最後につながっていく。ずいぶんあっちこっちを見比べたが、それはそれで楽しい作業だった。

    中心線は鈴木という少年で、彼は別の父親の元で育てられているが、屋上から飛び降りて、過去についてはぼんやりとした記憶しかない。様々なエピソードを経て、過去が明らかになる。双子とは、植物人間になって10年以上眠ったままの木村有江だった。有江は実の父親から性的虐待を受け続けているようで、それは植物人間になっても続いている。有江は病室で蝶となり、記憶をさかのぼるために故郷に帰ってきた鈴木の前に現れる。胡蝶の夢の引用が途中で出てくるが、明らかになる過去も、どこかぼんやりとしている。

    いじめ、虐待、殺人など、出てくる話がみんな暗い。それぞれが抱えている弱さが淡々と描かれている。彼らにとって家族・学校・友人といった人間関係が互いに傷つけあうものだ。いにおが若い世代に人気があるのは、その生きづらさをきっちりとらえているからなのか。とするなら少々つらい。

  • NHKの「ニッポン戦後サブカルチャー史」で紹介されていたところ、息子の本棚にあったので拝借。
    Wikipediaでは「夢と現実の不確定性を強調して描いたサスペンス作品」と作品解説されているが、ちょっとそれだけではないような気がする。
    2000年代の若者たちが感じていた(であろうと、昭和生まれのオジサンは推察する)閉塞感や世界認識をリアルに描いた作品なのではないだろうか。
    たぶん、平成生まれは共感を持ってこの作品を読み、昭和生まれは違和感を持ってこの作品を読むのだろう。それとも、自分たちには理解出来ない世界がそこにあるという疎外感なのかもしれない。

  • 一度読んだだけじゃ分からない、けど、
    何度読んでも分からない、のが正直なところ。
    ぶっちゃけ、何度も読み返して読み砕いて、
    細かい部分に目を向けて考察することは出来るけど、
    そこまでする気になれない。そこまで入り込めない。
    自分なりの解釈でいいかとも思うし、
    漂う暗さや怖さ、不気味さや難解さを感じ取れれば
    もうそれだけでいいやと思った。
    言い方アレだけど、雰囲気漫画。好きは好きだけど。
    浅野いにお世界観に酔いしれるのも疲れた年頃。

  • 難解な世界観が好きになった。
    1回読んだだけでは理解できなかったが、ページを捲る手が止まらなかった。
    浅野いにおの作品を機会があったら読んでみようと思う。

  • 全然噛み砕けてないけど、浅野いにおが本当にすごいことはわかった。一冊の漫画の重さじゃない。世界には不毛な人生が人間の数だけあって、漫画である以上切り取られてはいるんだけど、漫画の枠を超えてちゃんと世界がみえる。

  • おやすみプンプンは、途中で挫折してしまったけど、これは最後までイッキ読みしてしまった
    不気味な雰囲気に引き込まれました。よく分からないところは多いのでもう1回読みます…

  • 不気味すぎる。
    気持ち悪くなる。すごい。

    時代がコロコロ変わるので
    わかんなくなってくる。

    一回じゃ理解しきれない。

  • 登場人物たちの断片的な記憶からストーリーを掴むのは難しいが、つなぎ合わせて初めて全体像が見える映画のような演出方法は好き。
    イラストのタッチが写真みたいで、漫画というよりも映画を見ているみたい。

    蝶は魂の象徴であり、キリスト教では「復活」、仏教では「輪廻転生」、ギリシャ神話では「不死」という意味があるらしいが、この物語の中ではどんな意味があるのだろうか?
    黒い蝶ではないから「不幸」や「不吉」の象徴というわけではないと思うが。

    過去と現在が交差する様子は「胡蝶の夢」のようだと思った。
    小学生時代の回想なのか、小学生時代に見た夢なのか。
    個人的にはヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」とかも考えた。
    そうしたら「エーミール」はあの子で、「僕」は彼女以外の全員になるのだろうか。
    蝶を壊したのは誰なのだろうか。

    個人的には、
    「いつまでもお前の寝たふりが通用すると思うなよ」
    という言葉が印象に残ってる。

    話は変わるが、ブリキの缶には何が入っていたのだろうか?
    私は蝶だと思った。
    そうしたら「蝶」はあのこなのか、あの子に翻弄された人たちなのだろうか。

    話が曖昧で何か考察しようと思うのに、何も考えずに読みたい作品。
    長文失礼しました。

  • 爽やかな鬱。浅野さんはノスタルジアを表現するのがものすごく巧い。トンネルの向こうに浮かぶ少女のシルエット、足の間を流れる血の意味。伏線を張り巡らせながら、視点を変えながら見せて行く過去と今と未来を結ぶ細い糸。泣き叫びたくなる。不条理な大人に、無力な自分に、冷たくもあたたかいセカイに。

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著者プロフィール

1980年生まれ、漫画家。1998年、デビュー。日本の青年誌漫画を牽引してきた作家のひとり。主な作品に、『ソラニン』『おやすみプンプン』『うみべの女の子』『零落』など多数。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を連載中。

「2019年 『漫画家入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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