文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫 ダ 1-1)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218780

感想・レビュー・書評

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  • 歴史叙述の目的とスタンスがはっきりしていて、アメリカ人らしく(?)結論から論じてくれるので読みやすく分かりやすい。それでいて歴史読み物として楽しめるのは、著者の博学もさることながら謎に対する結論が次の謎に繋がる構成による部分が大きいと思う。秋の夜長の御供に非常に良かった。

  • 国家間、人種間、大陸間…あらゆる現代の格差の本質的な原因は何なのか。僕が子供の頃に抱いていた、素朴だが誰も応えてくれなかった疑問に対して真正面から挑んでくれている。そして全ては「運」と言い切ってしまうところが面白い。

    これまで学校で習ってきた「歴史」を通じて、人類は単調に進化してきたような印象をもっていたが、この本によるとそんなに単純な話では無いようだ。

    栽培に適した植物の存在は、あくまで狩猟民族から農耕民族へ移るために必要なきっかけに過ぎない。その上で何千年もの時間を掛けて「運良く」栽培化に成功し、さらに適度に野生動物が減少していることで農耕を選択するインセンティブが十分にある等の条件が全て揃ってようやく農耕民族が生じる。

    農耕技術の伝播に関しても、気体のように順々に伝わっていくのではなく、その地その地で技術の価値が認められる土壌が整っていなければ、それが定着することは無い。

    生産性が向上し、余剰人員により軍を組織したり新しい技術を生み出すことができたのも、農耕を選択したことで「結果的に」そうなったに過ぎず、誰の意思も、才能も、大して意味をなさないという著者の主張は清々しさすら感じた。

  • 大学教授が薦める本として、手を出さない所に踏み込んでみた。

    きちんと理解したとは言えないのだが、問題提起の仕方と、その方法論に学ぶ所があるなぁと感じた。

    大局的に歴史を観るというのは、私にはものすごいことだと思うのだが。
    人類がどこで、どのように移動していったか。
    そして狩猟から農耕へ変わったのは何故か、また、変わらなかったのは何故なのか。
    更に、家畜と病原菌の関係。

    特に、根本的に著者が答えられなかったヤリの質問が胸に刺さる。
    先進国から入ってきた物は確かに便利である。それらの中に自国の物が含まれていないのは何故なのだろう?と。

    そのため筆者は、支配国が優れ、被支配国が劣っていたことを明らかにすることを目的とはしていない。
    どのようにコンディションが整っていれば、その状況になり得たのかを、かなり丁寧に観ることに主眼を置いている。

    下巻に進む。

  • なぜユーラシア大陸は文明の優位性を持ち、南北アメリカ大陸やポリネシアを征服したのか。なぜその逆ではなかったのか。生物学的な観点から文明の発展の成り立ちを探る。リサーチクエスチョンの立て方がとても秀逸。そして、研究者として、自分の研究成果をこんな風に世の中の人に伝えられるような本、ぜひ書けるようになってみたい。生物学で文明の成り立ちをここまで説明できるとは思わなかった。

  • なぜいま自分がここにいて、こういう生活をしているのか?という大きな疑問に答えてくれる、博識と文脈に富んだ本。

    とどのつまり、いまのユーラシア系白人が世界の大半を支配してて、別途中国に漢民族がたくさんいる構図は、ユーラシア大陸が東西に長く、食糧生産と家畜化が可能な野生種の動植物が他の大陸よりも豊富にいた事が根本の要因らしい。

    これはほぼたまたまの要因なので、そこに黒人が最初に住み着いていたら黒人の支配になっていたし、オーストラリア大陸に生産・家畜可能な動植物が豊富だったらアボリジニがアジアを広く支配していたかもしれない。とにかく、人種による能力の差ではなく、本当にたまたまなんですよー、と作者は莫大な知識に基づいてそれを説明していく。

    この「環境による発展の決定的な差」の知識は、ビジネスに置き換えても何か使えるような気がするのだが、それが何なのか置き換えられない。。うーん、もっと勉強せねば。

  • こんなに読みやすくおもしろい本だとは?!!もっと早く読めばよかったです。文庫化したのは2013夏くらいだった気がしますが、本当にありがたいです。
    著者は生理学者、進化生物学者、生物地理学者。そういうことを極めていると、しぜん歴史が見えてくるのかもしれません。1万3千年の進化が。
    ゴンブリッヂの世界史は挫折してしまったのですが(おそらくドイツの子供達に向けて書かれた本だったため。キリスト教圏外の人間には、まずキリスト教信者になった自分を想定して、頭の中で一度文章を変換する必要があった)、これは2日あれば読めそうです。
    問いがはっきりしていて、しかも一つなので、私のような基礎教養のない人間でもとても読みやすいです。

  • 上下巻、まとめての感想ですが、長い、とにかく長いし、話が冗長です。興味は深い内容ではあるものの、同じことを何度も何度も何度も繰り返されると、それさっきも聞いたから、と言いたくなります。上巻はそれなりに面白くは読みましたが、下巻は完全に余剰だと思います。題材がこの人の手に余っている感じ。同じことを繰り返すのをやめて、論文風(あくまで“風”ですが)に詳しく経過を書くのをやめて、ざっくり1冊に短くまとめた方が面白いんじゃないか。好きなことを好きなだけ書くのもいいですが、重要なのはいかに削るかですよ、なんて偉そうに言ってみる。
    そもそもこのタイトルと内容があっていないような。確かに銃・病原菌・鉄はありますが、一番主張しているところって、そこじゃないので。どうなんでしょう?
    内容としては、ふむふむと納得しそうになりますが、Amazonのレビューあたりを読むとトンデモの気配もあるので、こういう考えも面白いよねーと話を差し引いて受け止めておいた方がよいのかなと。

    ついでに、日本語訳が読みづらいです。たぶん文法的に正しく訳してらっしゃるとは思うのですが、個人的には日本語の読み物として読みやすくはなかったかなと。

  • 本当の名著。誰もが深く考えずに決めつけてる偏見をあっさり覆す。上巻だけでもいいかも。

  • 知識をインプットしようとしなくても、読むだけで賢くなれるような気がする本だ。

    理路整然と語られていく文章に、頷きながら食い入るように読み耽っていたら、気付いた時には上巻が終わってしまった。

  • なぜシマウマは家畜にならなかったのか?
     「幸福な家庭はどれも似たようなものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸なものである」というトルストイの小説アンナカレニーナがある。 男女が幸せであるためには、金銭感覚とか宗教とか親類への対応といった色々な重要な事柄について一つでも欠けてしまうと、幸せな家庭にならないうのが、アンナカレニーナの原則だ。 シマウマは気性が荒いという一点で普通の馬とは異なり、人間の家畜になることはなかった。 同じように、アフリカ原産のキリンも、カバも、象も、サイも水牛も、人間の家畜になることはなかった。 人を襲う、成長に時間がかかる、複雑な生殖行為を行うなど、家畜として重要な事項が欠けていたのである。一方、ユーラシア大陸は、牛、馬、ロバ、豚、羊、ヤギなど家畜に向いた気性の動物が豊富であったため、大型の家畜が田畑を耕し、穀物を運び、穀物生産を増加させ、ミルクや食肉でたんぱく質を人間に提供し、人口増加と文化の進展に重要な役割を果たしたのである。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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