アジャイル開発とスクラム: 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント
- 翔泳社 (2013年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784798129709
感想・レビュー・書評
-
従来の開発手法ではビジネスの変化に対応できなくなったため、アジャイルが広まった。ソフトウェア開発のみならず、組織経営やチーム運営にも多くの示唆が含まれている。
第1部ではアジャイルとスクラムの基本的な説明、第2部ではリクルート・楽天・富士通でのアジャイル事例紹介、第3部ではそれらを踏まえた考察、という3部構成になっている。
スクラムで決められている役割はこの3つ。プロダクトオーナー、開発チーム、スクラムマスター。スクラムマスターはプロジェクトファシリテーションに注力するサーバントリーダー。管理者たるマネジメントリーダーではない。コマンドコントロール型の組織から、自律化・自己組織化したチームへと変わる。
ーアジャイル宣言ー
プロセスやツールよりも個人との対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、
価値とする。
ー以下、メモー
自社の開発プロセスにアジャイルを取り入れることをイメージしながら読んでいた。べき論を言えば、自社の開発プロセスの課題に答える形での改善活動が望ましく、フレームワークを取り入れるだけでは現場が困窮するだけだろう。つらつら思いついたことを残しておく。
・アジャイル思想導入における障害とは?
・やっつけでアジャイル導入した場合と、課題展開を行った上での対策としてアジャイル導入する場合の違いとは?
・AI開発プロジェクトにおけるアジャイルとシステム開発プロジェクトの違いとは?
・メーカーでの導入事例とは?
・システム開発以外の領域でのアジャイルとは?
通常業務、プロジェクトに取り入れること。顧客体験を最大化するために顧客の言葉で書く。可視化共有化のために、紙ベースのアナログを活用する。
この一冊をとっかかりにアジャイルやリーンスタートアップを読み漁ろう。チームの開発、成長のスピードアップへの強い示唆がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「合宿をしなさい」
-
事例紹介がいい感じ。
-
<目次>
はじめに プロローグ〜歴史的出会い
第1部 アジャイル開発とは何か、スクラムとは何か
第一章 アジャイル開発とは何か
第二章 なぜ、アジャイル開発なのか
第三章 スクラムとは何か
第四章 アジャイル開発の活動(プラクティス)
第2部 アジャイル開発とスクラムを実践する
第五章 スピード時代に独自のアジャイル手法〜ワンチームマインドで挑むリクルート
第六章 小さく始めて新党させる〜楽天のアジャイルによる組織改革
第七章 「IT新市場」におけるアジャイル開発に取り組む富士通の朝鮮
第3部 アジャイル開発とスクラムを考える
第八章 竹内・野中のスクラム論文再考
第九章 スクラムと知識創造
第十章 スクラムと実践知リーダー
特別対談 野中郁次郎x平鍋健児
<メモ>
オリジナルのスクラムの特徴(201)
1.不安定な状態を保つ
2.プロジェクトチームは自ら組織化する(自己組織化)
3.開発フェーズを重複させる
4.マルチ学習
5.柔らかなマネジメント
6.学びを組織で共有する(学習する組織)
3M「成功よりも失敗からの方が学べることが覆い。ただし失敗するときには、創造的に失敗すること」(214)
組織は、自然と成功したやり方を標準化して制度化する方向へと向かう。ただし、これが行き過ぎると逆に危険だ。外部環境が安定している場合には、過去の成功を「先人の知恵」として言葉で伝えたり、成功事例を元に標準を確立したりすることはうまくいく。しかし、外部の環境変化が速いと、このような教訓は逆に足かせになることがある。多くの場合、過去の成功体験を捨て去ることは難しく、外部環境の変化によって強制的に捨てることになる。(217)
「学びを組織で共有する」というオリジナルのスクラムにある考え方は、アジャイル開発に抜けた部分として、日本のオリジナリティが活きる領域だとも筆者は考えている。(218)
コンウェイの法則によれば「ソフトウェアの構造はそれを作り出した組織構造に従う」(221)
日本が忘れてしまった実践知
平鍋 実践知を駆使するには、やはり身体で動くことが不可欠なのですね。
野中 そうです。新体制をともなわなくてはいけないわけです。考えるだけではいけない。そういう意味でわれわれは昔から「知行合一」とかいろいろなことを言ってきましたが、90年代、2000年代の日本は「分析過多」「計画過多」「コンプライアンス過多」というのがはびこるようになってしまった。
日本のハードウェアや新製品開発が一番元気だったころに機能していた実践知リーダーシップを、われわれはいつの間にか喪失してしまったのです。それをなんと、ソフトウェアという新たなものづくりで復活させようという、平鍋さんたちの取り組みには感動しました。
2011年、ジェフ・サザーランドとガブリエル・ベネフィールドが、スクラムのトレーニングを日本で開催した際の参加者からの質問
「プロジェクトには、営業部門、マーケティング部門、サポート部門など、いくつかの部門にステークホルダーがいるのです。そして、どの機能を優先すべきかについて意見が分かれているのです。意見をひとつにまとめるには、どうしたらよいのでしょうか」
野中「形式的な会議で決めることはできない。いろんな背景をもった人の集合において、形式知で語れること、理解し合えることはごく一部だ。合宿をし、一緒に飯を食い、泊まって徹底的に話をする。そうすると、形式知は脱ぎ捨てられ、自分の主観で話をするようになる。そこで、なぜこのプロジェクトに自分が参加しているのか、という根源的な問いにまでたどり着けるだろう。そこからはじめて、一つの共通理解が生み出される。この過程をみんなで踏みなさい。」
2014.04.07 池上さんから借りる
2014.04.13 読書開始
2014.04.20 読了
2017.09.12 社内読書部 -
著者の一人である野中郁次郎氏は、論文「The New New Product Development」の中で、「専門集団によって設計され、文書化されたナレッジが、次の工程の専門集団にに引き継がれ、これを繰り返して物を作っていく」プロセスに対して、当時、キャノン、ホンダなどが行っていた「色々な専門家が一体となり、自律的組織として物を作っていく」プロセスを、ラグビーに例えて、「スクラム」と呼んだ。このスクラムは、海を越え、アメリカでトップ・プログラマたちをインスパイアーした。そして、スクラムは、その名前のまま、ソフト開発プロセスの新ムーブメントとなり、故郷である日本に帰ってきた。
ソフト開発は、現在のものづくりのみならず、会社経営にも非常に重要な要素であることは明らかであるが、日本のビジネスパーソンは、あまりにもソフトウエア・リテラシーが低い。私は、それが日本産業の生産性の低さの原因ではないかと思っている(残念ながら、これはわが社にも言える。特にソフト開発部門マネージメントのソフト開発リテラシーの低さは、悲惨を超えて喜劇的だ)。本書は、そういった状況を打破し、ソフト開発の改善、改革とそれを基盤にした経営改革にすばらしいアイデアを披露してくれるすばらしい本である。 -
おわりに、にむけた壮大な前振り。事例が一番伝達効率悪そうだなあと思った。
-
日本におけるアジャイル開発の第一人者の平鍋さんと、スクラムの父と呼ばれる野中郁次郎先生によるアジャイル開発の解説本。 アジャイル・スクラムとは何ぞや、から始まり、貴重な比較的大規模開発の事例の紹介とキーパーソンへのインタビュー、そして対談形式でアジャイル・スクラムの成り立ちや背景となっている思想が語られている。 アジャイルに限らず、方法論が語られることが多いが、本書では考え方や思想が強調されているところが非常に興味深い。 特にスクラムに大きな影響を与えているSECIモデルによる暗黙知→形式知のループの考え方は自分の思考方法について考えされられた、と同時に実践しないといけないと感じた。 今回、著書の平鍋さんにサインをいただくことができたが、サインに添えられた一言「仕事を楽しく変えて行きましょう!」にアジャイルの全てが詰まっていると思う。 楽しくなければやっていけないよね! アジャイルの考え方を学ぶにはとても良い本だと思う。エンジニアはもちろん経営者にもぜひ読んでいただきたい。
-
本が出て結構経っていることもあり
スクラムやアジャイルについては
インターネットで集めた情報と大差なかった。
個人的には暗黙知と形式知を循環させるSECIモデルが良い学びになった。
-
四年ぶりに再読。アジャイルやスクラムはある程度理解している前提で、何度読んでも会話の重要性は再認識する。ビジネスとエンジニアの垣根を超えるコミュニケーションはやっぱどうあがいても大事。政治的事情でよしとされない場合でも、ダマで勝手にやっちまおう。
しかし読むたびにtypeAからCの考え方混乱するわ。Aが普通のスクラムだとおもってたが、やっぱちがうな。