資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

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  • / ISBN・EAN: 9784822246419

感想・レビュー・書評

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  • 教育バウチャーなどの話を整理するならこの本で。
    フリードマンを読むのなら、アダムスミスの本あたりも読んだ方が良いかな。

  • 自由とは何か、それを追い求めるのが本著である。著者はノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン博士。サッチャーやレーガン等から彼の理論は持てはやされ、小さな政府がその後の主流となっていく。しかし、この書籍が出たばかりの頃には異端視されていた。

    自由主義(liberalism)という物について本著では、政府の果たした役割についての言及と、過去から現在(1962年)まで続けられるケインズ経済主義へのバッシングを行っている。

    ミルトン・フリードマンは2006年に残念ながら永眠された。

    この著書はその4年前の2002年に巻頭の序文を付け加えた形で2008年に発行されている。
    私と経済学が初めてであったのは2006年のことで、今から4年も前であり、そのころひとりの老人から渡された、スティグリッツ教授の書籍が私のバイブルなのである。

    その後も個人的にはスティグリッツの経済政策を中心に読み込んでいくため、この資本主義と自由については違和感を覚えたのは事実だ。

    実は今回で読むのは2回目で、1回目の時は理解に苦しんだ。その後、いくつかの経済書を読んでいくうちにアメリカ人の考え方リバタリアニズムやリベラリズム等に触れるうちに、理解はできるようになっていった。

    この書籍で言いたいのは、政府が果たした役割についてニューディール政策のような箱物、バラマキ政策や税制は今すぐやめて、税金を安くし、還元しろ。貧困層には負の所得税つまり補助金を現金で還元し消費させろと言っています。

    だからといって、社会保障を0にするというような突拍子も無いことを行っているわけではなく過剰で過保護な政策を辞めなさいとも言っているのです。

    フリードマンが認めた政府が行ってきたこと<084>
    ・法と秩序を維持する
    ・財産権を明確に定める
    ・財産権を含む経済のルールを修正出来るようにする
    ・ルールの解釈をめぐる紛争を仲裁する
    ・契約が確実に履行される環境を整える
    ・競争を促す
    ・通貨制度の枠組みを用意する
    ・技術的独占に歯止めをかける
    ・政府の介入が妥当と広く認められるほど重大な外部効果に対処する
    ・狂人や子供など責任能力のない者を慈善事業や家族に代わって保護する

    勘違いされやすいが、
    スジの通った自由主義者は、けっして無政府主義者(アナーキー)ではない。
    そして、その後に農産物の買取価格の決定権から有料道路の保有までの14項目にわたり政府がやらないほうが良いリストを上げているあたり、筋金入りである。

    また、フリードマンは権力の集中を恐れた。もちろん自由が阻害される要因であるからだが、
    ある人の自由を他の人の自由を妨げない限りにおいて個々人の最大限の自由を守ること
    そして、
    この目標を実現するためには権力の分散が必要
    と考えるのだそうだ。ところが、この後に来るのが通貨問題である。この通貨の問題とはすなわち為替、貿易時に起こる為替差がそれに当たってくるというのだ。
    この当時いまだ、金本位制を敷いていたため、現在のような変動相場制ではないため、1ドル=XXX円などと固定レートでの貿易を行っていた。そうすると当然、海外への輸出が増えれば儲かるが、輸入が増えれば損することになる。元々は戦後の体制からこのような金融・外交政策をとっていたわけだが、ある程度世界経済が復興してくると輸出量よりも輸入量が増加してくる傾向になったというわけだ。もちろん、それは日本の製品品質が安くてよかったからということに起因しているわけなのだが、それでは貿易赤字はどんどん増えていくため、このような固定相場制からの脱却を促していたわけだ。ここらへんは中学ぐらいでも十分習った範囲である。(もちろん、商品本位制や、金銀本位制などの記載もあるが割愛)

    そして、FRB(連邦通貨準備基金)の創設についても触れられていたりと、非常にマクロ政策よりの記述が多いのが特徴である。

    上記についてはp92以降に書かれているのだが、フリードマンの提言はp142に記載がある。ここについては現在ではほぼ達成されているので割愛する。

    ここで、注目したいのがp144以降にある「貿易統制の撤廃」なのだが、ドラッカーと同じくしてこの人もよく日本を研究していた研究者であると言える。なぜ、ここでアメリカの取引相手として日本を選択したのかを確認したいが彼は故人であった。
    だが、何かしら日本への対する危機感があったのかもしれない。

    この後は教育問題や就業問題、人種差別問題、経済活動への政府の介入範囲、累進課税に対する言及、そして社会福祉や貧困対策と幅広く政策提言されている。そのなかで気になったのが以下の文面である。

    自由主義と平等主義<352>
    自由主義の根底にあるのは、個人の尊重である。自由主義では、各自が自分の考えに従ってその能力と機会を最大限に生かす自由を尊重し、このとき、他人が同じことをする自由を阻害しないことだけを条件とする。
    この内容は貧困対策の最後に書いてあるのだが、どうして貧困対策の最後なのか、という点だ。つまり、人は等しく基本的人権を持ち、尊重され自由に生きることが出来る。それにはお金も地位も名誉も人種も性別も年齢も職業も、何もかもが関係がないということなのだ。ただ、相手を尊重することだけは最低条件で守りなさいということであり、これがヨーロッパから迫害され渡ってきた自由を求める民の心情なのかもしれない。

    最後に、ミルトン・フリードマンは結論でこのように語っている。<362>
    しかしこれらすべて、自由市場を通じて展開された個人の創意工夫や意欲の果実であって、政府の施策は少しも貢献しておらず、ただ邪魔しただけである。
    政府の施策がもつ重大な欠陥は、公共の利益と称するものを追求するために、市民の直接的な利益に反するような行動を各人に強いることだ。
    と政府や地方自治体への悪口部分だけ抜き出してみたのだが、この前にもちろん政府が果たしている公共性へのリスペクトや配慮は十分にしているのだが、あまりにも長いので割愛した。実際には公共衛生も反トラスト法も作ってきたではないかと敬意は払っているものの、それ以上に働きが甘いといわゆる「喝!」をいれているのがなんとも面白い。

    これの書籍が今から約50年ほど前に書かれたものだとはとても信じられないぐらい、我々の今の生活を予言している。案外、人間は変わらないのかもしれない。

  • 自由とは何か、それを追い求めるのが本著である。著者はノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン博士。サッチャーやレーガン等から彼の理論は持てはやされ、小さな政府がその後の主流となっていく。しかし、この書籍が出たばかりの頃には異端視されていた。

    自由主義(liberalism)という物について本著では、政府の果たした役割についての言及と、過去から現在(1962年)まで続けられるケインズ経済主義へのバッシングを行っている。

    ミルトン・フリードマンは2006年に残念ながら永眠された。

    この著書はその4年前の2002年に巻頭の序文を付け加えた形で2008年に発行されている。
    私と経済学が初めてであったのは2006年のことで、今から4年も前であり、そのころひとりの老人から渡された、スティグリッツ教授の書籍が私のバイブルなのである。

    その後も個人的にはスティグリッツの経済政策を中心に読み込んでいくため、この資本主義と自由については違和感を覚えたのは事実だ。

    実は今回で読むのは2回目で、1回目の時は理解に苦しんだ。その後、いくつかの経済書を読んでいくうちにアメリカ人の考え方リバタリアニズムやリベラリズム等に触れるうちに、理解はできるようになっていった。

    この書籍で言いたいのは、政府が果たした役割についてニューディール政策のような箱物、バラマキ政策や税制は今すぐやめて、税金を安くし、還元しろ。貧困層には負の所得税つまり補助金を現金で還元し消費させろと言っています。

    だからといって、社会保障を0にするというような突拍子も無いことを行っているわけではなく過剰で過保護な政策を辞めなさいとも言っているのです。

    フリードマンが認めた政府が行ってきたこと<084>
    ・法と秩序を維持する
    ・財産権を明確に定める
    ・財産権を含む経済のルールを修正出来るようにする
    ・ルールの解釈をめぐる紛争を仲裁する
    ・契約が確実に履行される環境を整える
    ・競争を促す
    ・通貨制度の枠組みを用意する
    ・技術的独占に歯止めをかける
    ・政府の介入が妥当と広く認められるほど重大な外部効果に対処する
    ・狂人や子供など責任能力のない者を慈善事業や家族に代わって保護する

    勘違いされやすいが、
    スジの通った自由主義者は、けっして無政府主義者(アナーキー)ではない。
    そして、その後に農産物の買取価格の決定権から有料道路の保有までの14項目にわたり政府がやらないほうが良いリストを上げているあたり、筋金入りである。

    また、フリードマンは権力の集中を恐れた。もちろん自由が阻害される要因であるからだが、
    ある人の自由を他の人の自由を妨げない限りにおいて個々人の最大限の自由を守ること
    そして、
    この目標を実現するためには権力の分散が必要
    と考えるのだそうだ。ところが、この後に来るのが通貨問題である。この通貨の問題とはすなわち為替、貿易時に起こる為替差がそれに当たってくるというのだ。
    この当時いまだ、金本位制を敷いていたため、現在のような変動相場制ではないため、1ドル=XXX円などと固定レートでの貿易を行っていた。そうすると当然、海外への輸出が増えれば儲かるが、輸入が増えれば損することになる。元々は戦後の体制からこのような金融・外交政策をとっていたわけだが、ある程度世界経済が復興してくると輸出量よりも輸入量が増加してくる傾向になったというわけだ。もちろん、それは日本の製品品質が安くてよかったからということに起因しているわけなのだが、それでは貿易赤字はどんどん増えていくため、このような固定相場制からの脱却を促していたわけだ。ここらへんは中学ぐらいでも十分習った範囲である。(もちろん、商品本位制や、金銀本位制などの記載もあるが割愛)

    そして、FRB(連邦通貨準備基金)の創設についても触れられていたりと、非常にマクロ政策よりの記述が多いのが特徴である。

    上記についてはp92以降に書かれているのだが、フリードマンの提言はp142に記載がある。ここについては現在ではほぼ達成されているので割愛する。

    ここで、注目したいのがp144以降にある「貿易統制の撤廃」なのだが、ドラッカーと同じくしてこの人もよく日本を研究していた研究者であると言える。なぜ、ここでアメリカの取引相手として日本を選択したのかを確認したいが彼は故人であった。
    だが、何かしら日本への対する危機感があったのかもしれない。

    この後は教育問題や就業問題、人種差別問題、経済活動への政府の介入範囲、累進課税に対する言及、そして社会福祉や貧困対策と幅広く政策提言されている。そのなかで気になったのが以下の文面である。

    自由主義と平等主義<352>
    自由主義の根底にあるのは、個人の尊重である。自由主義では、各自が自分の考えに従ってその能力と機会を最大限に生かす自由を尊重し、このとき、他人が同じことをする自由を阻害しないことだけを条件とする。
    この内容は貧困対策の最後に書いてあるのだが、どうして貧困対策の最後なのか、という点だ。つまり、人は等しく基本的人権を持ち、尊重され自由に生きることが出来る。それにはお金も地位も名誉も人種も性別も年齢も職業も、何もかもが関係がないということなのだ。ただ、相手を尊重することだけは最低条件で守りなさいということであり、これがヨーロッパから迫害され渡ってきた自由を求める民の心情なのかもしれない。

    最後に、ミルトン・フリードマンは結論でこのように語っている。<362>
    しかしこれらすべて、自由市場を通じて展開された個人の創意工夫や意欲の果実であって、政府の施策は少しも貢献しておらず、ただ邪魔しただけである。
    政府の施策がもつ重大な欠陥は、公共の利益と称するものを追求するために、市民の直接的な利益に反するような行動を各人に強いることだ。
    と政府や地方自治体への悪口部分だけ抜き出してみたのだが、この前にもちろん政府が果たしている公共性へのリスペクトや配慮は十分にしているのだが、あまりにも長いので割愛した。実際には公共衛生も反トラスト法も作ってきたではないかと敬意は払っているものの、それ以上に働きが甘いといわゆる「喝!」をいれているのがなんとも面白い。

    これの書籍が今から約50年ほど前に書かれたものだとはとても信じられないぐらい、我々の今の生活を予言している。案外、人間は変わらないのかもしれない。

  • 政府事業を民営化する「小さな政府」構想の理論的背景の本。

    市場の自由競争は、経済だけでなく政治における自由も実現する。
    政府とは、人々が自由を実現するための手段のひとつに過ぎない。

  • 何十年も昔に書かれたと思えない内容でした。今の日本、世界の状況をそのまま予測している感が面白い。とても参考になりました。自由主義経済を語るにはミルトンフリードマンの本は1冊は読まないといけませんね☆

  • 1338夜

    半世紀近く前に書かれた本書を読み返すと、そこでフリードマンが提案している政策が、今でも新しいことに驚く。

  • 純粋自由主義に限りなく近い主張の本。面白い。

    教育機関についての提案(デポジット制)というのはとても面白い。
    面白いが、国が補助金を出すことは好ましくない(※1)というのはどうだろう?
    確かに投資を回収できるのであれば本人が全ての費用を負担することも可能だろう。
    しかし、補助金を出すことは生まれながらの不公平を是正することに繋がる。
    生まれながらの不平等は当然あるとはいえ、出来る限り押さえることは、
    社会全体の機会への挑戦に対するモチベーションを高め結果社会全体の利益となる。
    まあ、この問題は感覚的な算出をせざるを得ない(※2)だし、バランスの問題でもあるからなあ。難しい。

    経営者についても自分とは意見が異なる。
    「資源を有効活用して利潤追求のための事業活動に専念すべきだ。これが、企業に課されたただひとつの社会的責任である」
    この見解は明らかに古い。顧客は、利潤を追求する会社を拝金主義だと罵り時には不買運動まで発展する。
    そこから導き出される答えとは、社会的責任は時代において変化するということだ。
    昔はそうでもよかったかもしれないが、今はそうじゃない。
    経営者は、顧客・雇用者・株主に対して責任を負っているし、時には活動している市場の病巣にまで責任を負う。
    いや、負わなければならなくなった。企業は外部環境の僕なのだ。
    顧客要望を一定量(あるいは全て)受け入れなければたちまちそっぽを向かれてしまう可能性を秘めている。

    免許についても少しいきすぎな気がする。
    フリードマンさんは情報の非対称性は考慮していないのだろうか?
    自分は、依頼人が情報を取得しづらい状態にある場合に、
    ひとつの手段として免許制というのは好ましいと考える。
    「必要なのは誰が腕がいいのか情報を公開することではないか(P274)」
    といっているが、フリードマンさんが言っている医師免許だとするなら
    情報が確定するまで生贄を差し出さなければならないことになるだろう。
    それは果たして正しいことなのだろうか?
    自分は医師免許という障壁の上で情報公開が望ましいのではないかと考える。
    米国医師会を批判しているが、免許を発行する組織の独占をさせなければよいのではと思った。

    基礎年金についても、ぶっ飛んだ主張が展開されている。
    フリードマンさんはこう言う。
    「刹那的な生き方を確信犯的に選んで(中略)貧しい老後をわざわざ選択する人がいたら、どんな権利を持ってそれをやめさせることができようか(P338)」と。
    まあ、確かにそうといえばそうだけどさ。まあ、
    「自分の老後に備えなかったものは社会の負担になる(P339)」
    とも言っているしまあそうだと思うんだけど、その後の話は可能性で留められている。
    俺も、最低限の老後セーフティネットは必要な気がする。民間がやるのが望ましいとは思うけど。

    基本的に人は悪い方向に力を使うことを常に想定しないと駄目な時代に来ているのだろう。
    悲しいが、現実はそのとおりだ。共産主義が軒並み失敗した原因のひとつにもなっているし、
    官僚制社会主義国家の日本だって、官僚が200兆以上のお金を自由に使えるという強大な力を持っていることが大きな原因となっている。

    出来る限り最適な状態で神の見えざる手が機能するためにも日本も今より小さな政府を目指さなければならないと考える。
    ただ、どこまで小さくするのかは議論しなければならないが。
    法整備等資本主義が適切に機能するための組織が必要なのはもちろんだが、
    セーフティネット、機会の平等などを実現するための最低限の仕組みは必要だと自分は考えている。
    一般的には、自由主義者だけど、フリードマンさんほどの自由主義者ではない感じかな。
    ってか、この本初めは1960年代に発表されていたのか。。驚いたわ。

    (※1)正確には「税収から捻出して職業教育や専門職教育を行う学校に補助金を出すことであり、政府はもっぱらこのやり方をとってきた。しかしこのようなやり方は明らかに好ましいものではない。」
    (※2)統計を出すのなら、多くの場合人権を侵害することになるだろう

  • 「乗数効果」の欠陥を詳しく記載しているので、その点は良かったが、あとは読みにくい感想を持った。

    資本主義のメカニズムというより、思想をつらつらと書いた印象

  • 2010.5.19

    面白かった。主張の一貫性は強い。
    自由が大前提。言い換えれば、強制されないこと。
    共産主義であってもそれを主張する自由は認める点、結果において平等主義とは相いれない点もはっきり書かれていて好感が持てる。
    例外に対する記述もあるし、免許制度の弊害や教育バウチャー制度なんかは、参考になる。
    40年以上前に書かれたのか。すげー。

  • 民主党政権になって、規制緩和・構造改革路線が大幅に鈍化していますが、なぜ構造改革が必要かという原点を確認するために、折りに触れて読むようにしています。
    解説にある、
     ①政府が政策で介入してもいい
     ②でも、国営で行う必要はない
     ③民営でもできる
    この3つの視点から考えることを忘れず、今後も規制緩和・構造改革の進展をみていこうと思います。

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