岸辺のヤービ (福音館創作童話シリーズ)

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  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834081978

感想・レビュー・書評

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  • 学校の先生をしているウタドリは、ある日ボートに乗っているとき、クーイ族の小さなお男の子ヤービに出会います。思わず手にしていたミルクキャンディーを彼に差し出しましたが、この事から、彼女は彼から、彼らの生活についてのいろんな話を聞かせてもらうことになるのです。

    このお話の大部分は、彼女が彼から聞いたことを書いたものですが、最後の、環境破壊に伴うお引越し問題については、続編での展開が望まれるところです。

    日本版ムーミントロルといった感じ。

    梨木香歩流の自然描写が、美しくも楽しい。

    物語自体は平易だが、結構な量があるため高学年向きでしょう。

  • 図書館の方に勧められて読みました。
    子供向けだけれど、私は好き!
    ちょっと、ムーミンみたいな世界観だなぁ、と思いながら読みました。
    登場人物は多くないのに、カタカナの名前が覚えられないのは、年齢のせいかな?とか思いながら、楽しく読めました。そこだけが残念でした。
    最近梨木香歩さんにはまっています。

  • これは大好きな世界だ!ヾ(゚▽゚*)挿し絵もすっごく可愛い(*´∇`*)水中を自由にうごきまわれるスーツが欲しい!(^o^)♪ヤービ一族と関わるのはウタドリさんだけにして欲しいけれど…

  • 梨木香歩の世界観である、鳥や植物、水辺、カヌー(この物語ではボート)、自然破壊への憂いなどなどが散りばめられた物語。日本のような、英国の田舎のような、著者のエッセイ本を読んだ人ならそのどちらの空気も感じ取れると思う。

    ムーミンを思い描く人も多いと思うけど、あのシリーズのようなシュールさは無く、優しい日本語で綴られてる。これ子供の時に読んでいたら「ぐりとぐら」のようにいつまでも心に残る本になってただろうな。

    それ程長くない章ごとに区切られているので、眠る前に読むと柔らかい気持ちで眠りにつける。

    続編も買ったので読む。

  • コロボックルとか、ガンバとか、ニングルとか、ムーミンとか、湖沼地帯の描写のどこかに潜んでいるドリトル先生とか、懐かしいモチーフが温暖化の時代に出てきていて(あの頃は氷河期の心配をしていたような気がする)うれしくなった。
    この人ならではの静かさと奇想天外さと。

  • 教師のわたし(ウタドリ)がマッドガイド.ウォーターの岸辺に棲む、小さな生きものヤービを語る物語。 章ごとのタイトルとサブタイトル、語り口調、字のフォントなどが可愛いらしくて、どこか懐かしい作りになっている。 物語自体もさほど、ハラハラドキドキする場面は少なく、やさしく、穏やかに進んでいく。 でも、たくさんのテーマがみてとれた。 環境問題、経済問題と親のイライラ等。私は、名前について話す場面が印象的だった。叔父さんが、ヤービたちの名前の考え方を、そのもののためだけの特別な名前に変える時期じゃないかな?というところ。私が子育てをしていた頃、「〇〇ちゃんのお母さんって言われるのは嫌だ」って言われ始めた。それを思い出した。名前ひとつにしても、時代やコミュニティの社会性を映し出す。

  • ファンタジーなのかな?と少しためらっていたけど、2巻も発売されたことにより挑戦。
    ウタドリさんが、ヤービから聞き出したヤービ族たちのお話。
    冒険もあるけど、ドキドキよりほんわかしている。
    ヤービたちの暮らしが楽しそう。
    ウタドリさんの暮らしも。

    続編もたのしみです。

  •  ヤービ、かわいい!大好き。
     他のものの命をいただいて生きることに感じる罪悪感。切なさ。梨木香歩さんはこんなふうに一つ答えをくれた。
     ムーミンの世界と読み比べてみたい。

  • ガーナのおすすめ本商会(5)

     今回は「岸辺のヤービ」という本を紹介します。この本は私のお父さんが読んでみたら?と買ってきてくれた本です。

    ちなみにうちのお父さんはいつも本を買ってきてくれます。私が本に興味がなかった頃からずーーっとです。朝起きると机の上に山積みになっていたりして「え、なにこれ!?」

    と引いたこともあります。

    最初の頃は全然興味のなかった本でも、見た目がきれいとか、箱に入っていて豪華とか、そんな理由で読んでみたり、でも前置きが長くてつまらない!と読むのをやめてしまったり。それでも本を買い続けてくれるお父さんの趣味が私と合ったというか、私が好きそうな本を選んで買ってくれていたのかなぁと。いつからか本は楽しいと気づいてからは、読むのが先か、買ってくるのが先か、と競争になったりしたこともありました。(その頃は、お父さん、本を買うお金大丈夫かな……と心配したこともあったけれど、実は10円の古本だったなんてこともありました)

     前置きが長くなりましたが、見た目は大事なんです。この「岸辺のヤービ」も本の装丁がとても綺麗でずっと取っておきたくなる本。昔の箱入りのリンドグレーンの名作みたいな印象です。手にしただけでキュンとする雰囲気なんです。挿絵も素敵で、見開きに地図が描いてあったり、ワクワク要素は満点です。

     本のはじまりかたも、ある島で働く人間の男の人についての話から、その男の人が出会った「ヤービ」という小人のような未知の生物についての話で、ヤービから聞いたいろんな話を男の人がしてくれる、、という流れなので親しみやすいし、想像しやすいと思います。私のすぐ隣にいそうな雰囲気で物語が進んでいきます。例えばムーミン谷の話はおもしろいけれど、すごく遠くに感じます。

    ヤービはもしかしたら裏の山奥にいそうな感じです。この本を読む子どもたちに、ヤービの存在を否定して欲しくないなというメッセージを感じたりします。

    もちろんこういう本が好きな人には大好物な部分もあります! ヤービたちの生活スタイルには、芋虫のスーツを着たり、魚の泳ぐスーツを着て滝を登って行ったりとか、鳩に乗って空を飛ぶとか、そんな幻想的な部分です。そんな不思議な話でも、島に住む人間の男の人が聞いた話という設定なので、唐突な不思議さではなく、人間とヤービの関係も暖かくて、ヤービはその男の人を「歌鳥先生」と親しみを込めて呼んでいるほどです。

    この物語に出てくるヤービは、蜂の子を食べたり、虫を食べたりしながら生きているささやかなヤービの生活の中で、私が印象に残ったところは最後の方で「炎の革命家」というヤービがやってくるところです。

    どんどん生きているヤービの数が減ってきていて、その原因は人間がもたらした環境汚染なんです。ヤービの住むところが少なくなってきている現実に「どんなに行くのが大変な場所でも人間に汚染されてるところじゃなければ住める!」と、最後に炎の革命家がみんなに話すところが印象深いです。これって、この作者さんが今の地球というか人間を表しているんじゃないかなぁと思いました。人間がリサイクルとかリユースとか温暖化対策とか気配っていると言っても、前まで住んでいたところがコンクリートになったりとか、自然のままの土や木がなくなっていくことが拡大していけば、自然の生き物が住める場所がなくなっていく。人間は環境にいいことを少しでもやろうとしていても、こういう生物にとっては、そうじゃないんだよなぁと感じました。人間はなんだかんだいって、自分たちが住みやすいようにしちゃうわけだし、だけどこの生物にとっては住みにくい環境になっていく、ということです。これって、人間の世界だって同じだと思うんです。いろんな種類やタイプの人がいて、いま出会っている人以外にこれからもっとすごい生き方や考え方をする人とも出会っていくんだろうし、それを否定したり自分のやり方を通してばかりじゃダメなんだろうなとも思えました。

     シリーズ2冊目も出ているので、必ず読みたいです!(と思っていた朝、机の上に2冊目が!お父さんが買ってきてくれていました!)

    人間関係に悩むガーナでした。

    2019/10/09

  • こことは違う、確かな世界がそこにはある。この感覚って、子どもはもちろん大人にとっても大切だと思う。

    危機は急激に来るわけではない。
    静かに迫ってきて、みなで針路を見出していくのだ。決断していくのだ。

    知らない世界を知るためには、自分が取り戻された、静かな瞬間が必要。

    時が来るまで、自らの心の中で、彼らの生活を見守る覚悟も必要。

    挿絵が素晴らしかった。

    生きるに値する世界をこれからを担う世代に伝えている作者に敬意を持つ。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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