- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834081978
感想・レビュー・書評
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きちんと主人公(初めて会った大きい人)に敬語を使うヤービの礼儀正しさ、きちんと育てられている子というところがまずかわいい。こどもを丁寧にみつめる、育てる大人が登場人物である、というところが児童文学の好きな所です。我ながら殺伐と毒されてしまった頭だ‥‥
梨木さんらしい動植物への造詣、視点、温もりを持った目線を読める幸せだなあ。小さな生態系へ、大きな人たちが与えてしまう無邪気な環境破壊が根底のテーマとなっている。
セジロがカリスマ性のある大人にしてみればちょっと厄介ともとれない子(トリカ)に感化されて食べ物を食べなくなってしまった。セジロ「生きものは、他の生きもののいのちをうばってしか生きていられない、ってことなの。タガメのざんこくっていうのは、鉢の子を食べて生きてるわたしたちがざんこくっていうのとどうちがうの?」
ここら辺は他火の方へで語られていた田口ランディさんの語りが関係あるのか知らん。「生きているものしか食べられ」ない業を私たち生物は背負っている。パパ・ヤービは言う。「そういうことが気になる日も、たしかにあるね。そのときは、ごめんね、ってこころのなかであやまるんだよ」「それで十分だと、パパは思うんだ。同じ、生きものどうしだからね」人間には、この心がない。
日照時間が少ない故か夫がいないためか情緒不安定な母を持つ虚言壁があるトリカ。でも、マミジロ・ヤービ(ヤービの伯父さん)に言わせれば「詩人の魂」をもっている子だ。視点の違いで随分違う。そういうこと、いつも梨木さんの著作読むたびハッとさせられるけど、大事にしたい。視野を広く大きく。なるべく境界まで。
名前の話が一番心にささった。姓名フルネームで呼ばれるのはなにか気詰まりだ。名字や名前にさん付けなり君付けなりちゃんづけなりあだ名で呼ばれる方が気安い。そのゆるさを、コミュニケーションと呼びたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・・・なんか、ムーミン(;^^)ゞ
梨木さんて、和風のイメージだったけど
こんなファンタジーもいいですね
子どもの頃に児童書を楽しんだ大人も楽しめるはず
ウタドリさんの立ち位置が、いい感じです
「みんながんばれ」 -
梨木香歩さんの描く小動物や植物はなんてすてきなんだろう
「西の魔女が死んだ」からファンになってずいぶん読ませてもらったけれど、どれも裏切らない
これはまたシリーズ化でしょうね
楽しみです
語り手の私、ウタドリさんに心を寄せて読みました
厳しいけれど温かい
こんな世界をそっとのぞけて
楽しみです
≪ ささやかな 静かな暮らし その岸辺 ≫ -
アニメでしか知りませんが、何となくムーミンを思い出させる作品でした。マッドガイドウォーターの岸辺にすむヤービ。自然と共存しながらも、蜂の子を食べることに戸惑いを感じたり。小さな存在であっても悩みは多そう。優しいママに、冷静なパパ。物書きをしている姿が良く似合いました。冒頭の冷たいレモネードにサンドイッチの描写はかなり魅力的。考えることも多いのでしょうけど、のんびりとマッドガイドウォーターの上で揺られる感じでのんびり読むのもいいな♪ぜひとも続きが読みたいです。
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ヤービ、かわいすぎる・・・。
湖沼地帯にある寄宿学校の教師が、沼をボートでのんびり散策している際に出会った小さな水辺の生き物、ヤービ。
人語を解し(そういう個体はまれ)、とてもつましく愛らしく日々を生きている彼らの物語は、幼い頃に読んだ童話のわくわくする気持ちを思い出させる。
挿画のヤービたちがまた抜群にかわいらしくて、いいなぁ、私もヤービと友達になりたいなぁ、という気持ちになる。
後半、物語が地球環境に関する展開をみせてくるところはこの時代の童話としては避けては通れないのかな。
それにしてもヤービの見出した解決法がかわいらしくて、でもとても大切なことだと感じて、気持ちがあたたかくなる。
まだまだ続きのあるシリーズものになりそうな予感で、次作がたのしみ。 -
普段は児童書をあまり読まないが、作家さんと装丁が気になって読んでみる。子供向けの童話だが、大人が読んでも十分に楽しめる内容。子供大人どちらともおすすめできる、読みやすい内容である。自分が子供だったら、読んでいたなと納得できる。読み進めていくごとに冒険と自然の移ろいがマッチしていて、ヤービの成長が感じられて良かった。ヤービと自然、生き物との関わりの中で、様々なことを感じたり、時には可愛い姿、哀愁さが見え、無事に岸辺に辿りついたので、冒険はひとしおという感じがする。本作は続きがあるそうなのでそちらも楽しみ。
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もうここ10年以上梨木さんの新作を楽しみに待って読んでいるのだけれど、これはやっぱり特別な物語だ。本格的な児童書ファンタジーは久しぶりだし、水辺の生き物たちやボート、過去の名作児童書を彷彿とさせるような語り口、その中に同時代的な重要なテーマ性を盛りこむところとか、梨木さんらしさがつまった明るい雰囲気に包まれた物語だ。ヤービの少年らしい心の動きや、冒険を求めるパパ、おしゃべりなトリカなど魅力的な人物像も素敵だ。「ムーミン」とか「床下の小人たち」とかを思い出しながら読んだ。
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小沢さかえさんの挿絵が本当にステキ。
舞台はマッドガイド・ウォーターという岸辺。
近くのフリースクールの教師をしているウタドリさんとクーイ族というモグラでもない、ネズミでもない、ふわふわの毛に覆われた直立歩行する男の子ヤービとの出会い。
ちょっと虚言癖のある女の子トリカとの出会いでヤービのいとこのセジロがごはんを食べられなくなってしまったこと。
仲良くなったヤービ、セジロ、トリカの冒険!
名前のこと、小さな人たちの暮らしのことなど。
ちょっと、ムーミンを思い起こす。