山手線に新駅ができる本当の理由 (メディアファクトリー新書)
- メディアファクトリー (2012年8月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840146968
感想・レビュー・書評
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以前、山手線の新駅誕生の新聞記事を目にしましたが、あまり山手線に縁が無いために、特に深い感慨もなく、その後すっかり忘れていました。
この本では、まだ全貌が明らかにされていない新駅増設について、場所の推理とその根拠を理論的に解説しています。
新駅は特に必要なさそうに思われ、乗客側からすると、駅が増えることで乗車時間が増えることには賛同できかねる気持ちもありましたが、駅を作るという一大プロジェクトは、それに見越した大きな理由があるからこそ生まれるものだと気付かされます。
未発表事項が多い新駅の話題だけではなく、既存の駅や都内の地域について、都市計画的見地から紹介しているのがとてもわかりやすく感じました。
JR横須賀線の東戸塚駅は、地元住民の要望で作られた駅だと知って驚きました。
今でこそとても賑わった駅ですが、駅の導入にあたり、地元自治体が建設費の何割かを負担したそうです。
武蔵小杉駅にJR横須賀線が停まるようになったのはつい最近のことですが、それは東横線からの利用客の移動を図るといった電車会社同士の熾烈な競争があるということも知りました。
JRは小田急に対抗するために新宿湘南ラインも開通させたとのこと。
大規模な勝負に打って出ていることがわかります。その効果はあり、実際に乗客数は上がったとのこと。
JRが動き出したら、私鉄はかなわないのではないかと思いますが、JR各社同士はあまり仲がよくないということも知りました。
新幹線発着駅も、どうしても東京駅に集中させたいJR東日本と、品川にしたいJR東海との間で、折り合いが合わなかったそうです。
JR東日本が、なぜ東京駅に一駅集中させたいのかがよくわかりません。もちろん乗り換えに便利ですが、その分利用客が増え、駅は混雑します。
一つの駅に集中することは世界的には珍しく、NYやパリなどの大都会も、行き先によって駅が異なっていることが指摘されていました。
鉄道の路線によって、人の行動範囲も変わり、都市計画にも大きな影響が出ます。
今や、鉄道会社も、そのことを意識しながら動いていくべき時だと著者は説いています。
開発中のリニア新幹線は、高い速度を保つためにほぼ直線の地下40m線路を走るのだとか。
また、都市開発において、都内各所でディベロッパーの縄張りがあることも詳しく紹介されていました。
丸ビルの再建築や、新丸ビルができてから、丸の内界隈は訪れるに楽しい賑やかなファッションストリートになりましたが、それには東京駅が空中権を売ったことで高い容積率を許可された三菱地所が提示された条件として、街づくりの見直しを図った結果だということを知りました。
都市計画は政治との繋がりも密接であり、政権交替によって千葉県や成田空港とこれまでのしがらみのない民主党政権になったからこそ、一気に羽田空港の再国際化が実現できたことだということも納得がいきました。
限界がある土地利用において、JRは線路の上や空間をもっと効果的に使うべきだという意見に、はっとしました。
確かに、新宿駅や京都駅など、複数路線の拠点となっている巨大な駅は、もっと駅や線路自体を活用できそうです。
本書のタイトルとなっている山手線の新駅については、今後の発表を待つ形となりますが、そのほかにも現在に至る都心のさまざまな都市空間の活用法について紹介されているため、最後まで興味深く読むことができました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
整理にはなったが、目新しい情報は無かった。
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田町・品川間に新設される駅に関する話を中心に、その周辺を国際都市にしていく構想について書かれていて、それが実現すれば面白いなと思えた。
一方、痛いところに関しては目をつぶっていたり、比較に出された海外都市を正当に評価していない様に感じる部分もあり、その辺を加味すると実現はなかなか難しいのかとも思わせられた。
どちらにしろ、将来ビジョンの一つとして読めば、想像が膨らんで面白いと思う。