ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 (電撃文庫)
- KADOKAWA (1999年8月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840212502
作品紹介・あらすじ
君は何かを取り逃がしてしまったことはあるかな?とてもとても大切なことだったのに、つまらない意地を張ったり、目の前のことばかりに気を取られて見逃してしまったことはないかい?…これはそういうことを繰り返さざるを得なかったある魔術師の話だ。彼は天才で、成功者で、そして失敗者だ。この魔術師が辿る一途で愚かで、そして寂しく陽気なこれはアイスクリームの物語。冷たく鮮烈な甘さは、一瞬の、そう、このぼくブギーポップですら見逃してしまうほど速く、あっという間に溶けて消えてなくなっていくひとときの慰み-道化師と死神とそして夢破れた人々が織りなす、無邪気で残酷な哀しいお伽噺。
感想・レビュー・書評
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ブギー・ポップシリーズの中で一番素敵だった本作。
いわゆるティーンズ向け小説でありながら、描かれた主人公の「愛」は、じわりと読んでいる人間に届くだろうと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ブギーポップ」シリーズの第7弾です。
寺内恭一郎は、負債をのこして死んでいった軌川典助(きがわ・のりすけ)のもとで庇護されていた、ペパーミント・グリーンの肌の青年である軌川十助(きがわ・とすけ)を、自分のもとに引きとります。ほかの人間たちから遠ざけられてそだてられた十助は、ひとの心の痛みを見てとり、そのひとの心を強く魅了するアイスクリームをつくるという、不思議な能力をもっていました。
寺内は、十助の能力を利用してアイスクリーム店を開き、商業的な成功を収めます。それに協力することになったのが、お菓子作りの才能をもつ21歳の楠木玲(くすのき・れい)でした。自身も味に対する強いこだわりのある玲は、十助と衝突しながらも、彼の才能を認めて店の成功のために尽力します。
そんな彼らの店を、タレントの古北園子(ふるきた・そのこ)が紹介し、ますます店の評判は高まります。しかし、スプーキーEをはじめとする統和機構が彼らを利用しようとして、十助たちもその陰謀に巻き込まれていくことになります。
「ペパーミントの魔術師の栄光と没落の話」という、冒頭の語り手の触れ込みでスタートする物語となっており、ブギーポップをはじめこれまでのストーリーで中心的な役割を果たしてきたキャラクターは脇役にまわって、十助と玲の関係がていねいにえがかれているのが印象的です。 -
ペパーミントは好きじゃない、、、飲み物とかでペパーミント見る度思い出すんだけど。
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そのアイスのおいしさの秘密は、人の心の痛み。
なぜ彼は道化を演じるのか、なぜアイスなのか…読み終え理解したとき、とても切ない気持ちになる。儚い。
夏になるとこの話を読みたくなる。そしてミントのアイスクリームを食べたくなる。そんなお話。 -
人々を虜にするアイスと、それを作る魔術師の栄光と没落。
人の『痛み』を感じ取れる魔術師が、自分自身の痛みと向き合ったその先の切なさ。アイスのように甘く、そして儚く溶けていく魔法と、孤独な魔術師の物語。
p.124にある優しさの話が印象深い。
「そいつが人を憎まないこと、人に都合のいいことをしてやることだってぇのなら、そいつはつまり相手の悪いところに気がつかないでいるのと何が変わらないんだ?」
この問いの答えがラストなんだろうな。
痛みを知るからこそ優しくもできるし、孤独にもなるんだと。 -
一番はじめに読んだブギーポップの本。
シリーズの中でも一番好きかもしんない。
今日読んだので登録。
寺月に助けられた?十助、
寺月は十助のアイスクリームをつくる才能(世界と戦う才能)を見込んで、アイスクリームショップをさせる。
十助は人と会うと胸のあたりにその人が持っている痛みを感じることができ、それをカバーする形で、その人を癒すアイスクリームを作ることができる。
十助の会社は世間で騒がれるアイスクリームショップになるが、唯一の理解者であった楠木玲が、十助のアイスクリームは自分の痛みを忘れてしまうと言い、去っていった。
統和機構からの処分がきまった十助は大きな催しで関わった人間の7割といっしょに合成人間に殺されるーところだったが、十助の謎の回復能力とブギーポップで合成人間だけが死ぬ。
最後は、助かった十助と飛鳥井仁が出会い、
十助は偶然たべた楠木玲の記憶を改算されたケーキをたべ、ショックを受ける。が、彼女の記憶、というか身体的な記憶をアイスクリームでとりもどす。
スプーキー・Eがアイスクリームを食べて動揺するところがかわいかった笑 -
せつない。
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感想
こういう話好きだなぁ、と素直に思う。読後に訪れた心を包む安堵の中で、ふわりと漂うせつなさ、その感覚が忘れられない。
久しぶりに時間を忘れて、読み進めることが出来た本。
追記、あとがきを読んで
あとがきに書かれているような「失敗を恐るな」という論調。世の中には似たような言動がたくさんあって、「ポジティブに行こう」とか「やればできる」などの言葉が縦横無尽に飛び交っている。
言うのは簡単で行うのは難しい。そういう言葉を具体的な方策も伝えずに、ただ耳障りにいいという理由で声だかに叫ぶ連中はなんなのだろうと憤りを感じる。それが自分に向けたものならばいい。しかし、他者に向けた場合、時としてそういう言葉が毒となることもあるのではないだろうか。