デザインの輪郭

著者 :
  • TOTO出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887062603

感想・レビュー・書評

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  • プロダクトデザイナー深澤直人さんのデザイン哲学が
    これ以上ないほどに詰まった一冊。
    優しい語り口と作品の写真から
    彼の主張する『ふつうであること』『考えないこと』がじわじわと伝わってきます。
    読んだ後には、今まで使っていなかったような感覚の触覚が働き出して、違う側面からデザインを見れるようになれるでしょう。

  • 「輪郭」、「張り」等、深澤直人のデザイン論を通して、
    デザイナーのあるべき姿が書かれていた。


    以下、デザインに限らず、企画などを考える際に心に留めておきたい引用。

    ・デザインの輪郭とは、まさにものの具体的な輪郭のことである。それは同時に、その周りの空気の輪郭でもある。その輪郭を見出すことがデザインである。
    ・僕がこれを考えたように見えると言われますが、それは僕が考えたわけではなくて、そうなるべき姿であったということの結果だと思います。
    ・作者個人の思いと重なった特殊なものであるほど、それは主観的な表現となり、聞くや、見るに耐えないものになってしまう。
    ・自分の手は参加するけども、自分の意志は参加しないで、ものが出来ていくことを目指している。

    他にもたくさんあるけども、自分の意志や芸術性を一切入れずに、周辺環境等に合わせてこそのデザインと言うことでしょうか。

    デザインと芸術は全然違いますからね。

  • ・ものの適正な姿や位置は、その周りの見えない力の関係によって成り立っている。
     テーブルの上に一輪の花を生けるときにも、その位置はおのずと決まってくるということがある。

    ・外の要因や、外の力が、内を決めているということが。
     その必然的かたちが、必然的力をみせる。それが「張り」なのである。

    ・例えば登山道を登っていくと、途中、思わず掴まった木の枝や岩の角が、
     つるつるに磨かれていることがある。
     その枝や岩の角は、その状況でほとんどの人が通過する点だったのである。
     生態心理学者の佐々木正人氏は、その点のことを「意識の中心」といっていた。
     その行為における共通の意識の通過点が、意識の中心である。

    ・山口 付加価値を求める人の期待に応えようとするから、
         ふつうのことをやる人が少ないんです。
     深澤 ありふれているものをふつうというのだけれど、
         ふつうってそうではなくて、本当はいいものなんです。

    ・例えば、手のひらを描きなさいっていわれたら、
     ほとんどの人がこの手のひらを描くと思うのですが、
     その外側の風景を描いても残ったかたちが手のひらになるということを
     人間はあまり考えないと思います。
     今おっしゃったことは、手のひらをよく知るために、
     その外側をよく見なさいというような感じがします。
     実は、この手のかたちがこの周りの背景によって成されているということで、
     それがないと、これが何であるかという、存在の認識ができないのではないかと思うのです。

    ・朽ちていく美しさのことをずっと考えている。それはデザインの先にあるものである。

    ・意図がかたちに出てしまっているものがきらいです。
     かたちは自分の意思表現ではなくて、そこにあった必然ですから。

    ・多くの問題や複雑な要因を抱えた状態でのデザイン決定は、
     依頼主にとって易しいことではない。
     そのような厳しい状況下でも彼らは、ふと言葉をもらす。
     「個人的には好きです」と。
     その言葉がすべての人の本音であるということを私は証明したい。

    ・仕事というのは、締め切りまでに完成していくものだと思っているでしょうが、
     依頼されたときにほとんどアイデアは出るものです。

    ・人間が、まったく何もないゼロの状態から生活をするための場所を決め、
     家を建て、そのための道具を考案したことを自分も体験してみたかった。
     小さくてもその経験があって初めて、家も道具もデザインできると思った。

    ブックデザイン:山口信博+大野あかり

    ±0やauのINFOBARをデザインした深澤直人さんの
    デザインへの考え方が綴られた本です。
    デザインは自分の考えを盛り込むメディアではなく
    生活のなかに意識されずに溶け込むことを目的とするもの。
    という考えに立ちながらも作品を見てみると
    深澤さんらしさがにじみ出ているのはなぜだろう。張りかなあ。

  • つい最近このひとの講演を聞く機会があって、それがとてもすてきな講演だったので本読んでみたかったのです。
    デザイン観がとてもシンプルでわかりやすい。彼のデザインがとても心地よいのは、それがある意味で「ふつう」だからで、デザインって聞くとどうしても装飾をイメージしてしまうけど、そうではなく、心地よく生活に溶け込むこと(所有者がそれに気がつかないくらいに)が本当のデザインだという、そういう考え方にあるんだろうなあ。
    山の中の何もない生活もすてき。気持ちがいいかんじにリセットされました。

  • 「選ばせるためにデザインすることは、結局はクライアントのことを考えていない。僕のほうがよく見えるから頼んできているのに、相手の目に決めさせるんだったら、僕はただのお絵描きにすぎない。」

  • デザインって目に見えない輪郭があって、そこをどうにか周りの環境やいろんな障害物と折り合いつけながら、うまく形として引き出すだすことなんだなっと改めて思った。
    人生そのものですね。ほんと奥が深い行為です。

  • 抽象的かつ詩的な深澤直人のデザイン論が美しく広がる本.
    この磨きあげられた言葉は,多大なるデザインを行ってきたからこそ言えるのであり,非常にシンプルな形になっている.

    デザインの繊細かつ美しさを教えてくれた本.

  • デザインのあり方を学びました。 日々の生活に潜むヒントを見れる人に少しなれた気がした。そんな自分になれた本です!

  • デザインてこういうことかと思う。

  • 先に「デザインの生態学」を読んでいたからそこまで新鮮さは無かったけど、深澤直人という人物へのいいアプローチではあった。

    デザインは合理化・最適化のプロセスである、みたいな話を聞いたけれど、だからこそ深澤直人のデザインは「super simple」であり「more than simple」なのだと思う。
    環境に溶け込んでいるからこそ違和感なく合理的で、生活者を豊かにしていく、そんなプロダクトかなぁ。

    今の時代は、マスが終焉してマーケティング(とその速度)の時代になってきているように思うけど、マーケティングって人を生活者ではなく消費者、つまりあくまで「媚びへつらう」対象として見ているけれど、成熟した社会において「豊かさ」を追求するなら、生活の質を高める必要がある。だから人を「ちょっと」幸せにしてくれるモノが本当に大事なのかもしれない。

    だからこそ日常の観察というか、普段の行動に隠れている意識の可視化がとても大事で、直感で合点が行くデザインが求められるんじゃないでしょうか。

    "without thought"、そこに未来の価値が埋れている。それを認知し、発想する力が欲しい。

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著者プロフィール

1956年 山梨県生まれ
1980年 多摩美術大学プロダクトデザイン科卒
1989年 渡米、IDEO入社
1996年 帰国、IDEO東京支社長
2003年 NAOTO FUKASAWA DESIGN設立

卓越した造形美とシンプルに徹したデザインで、イタリア、フランス、ドイツ、スイス、北欧、アジアなど世界を代表するブランドのデザインや、日本国内の企業のデザインやコンサルティングを多数手がける。電子情報機器から家具・インテリアに至るまで手がけるデザインの領域は幅広く多岐に渡る。

「行為に相即するデザイン」「意識の中心」「ふつう」「輪郭」「典型」など、自らのデザイン哲学をこれらの言葉で表すとともにデザインの具体を通してその実践を続ける。デザインのみならず、デザインを通して対象の本質にせまる力、その思想や表現などには国や領域を超えて高い評価を得ている。

人間の意識していないときの行動の中にデザインのきっかけがあることを見い出し、それを「Without Thought(思わず)」と名付けた。1999年からはその名を使ったデザインワークショップを毎年開催し、書籍とともに発表を続けている。

米国IDEA金賞、ドイツiF design award金賞、日本グッドデザイン賞金賞、英国D&AD金賞、ドイツred dot deign award、毎日デザイン賞、織部賞など受賞多数。「MUJI」壁掛け式CDプレーヤー、「±0」加湿器、「au/KDDI」INFOBAR、neonはN.Y.MOMA所蔵品となる。2007年ロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(英国王室芸術協会)の称号を授与される。フランス国立セーブル製陶所招待作家。

21_21Design Sightディレクター。良品計画デザインアドバイザリーボード。マルニ木工アートディレクター。2010年〜2014年グッドデザイン審査委員長。
2012年Braun Prize審査委員。日経優秀製品・サービス賞審査委員。毎日デザイン賞選考委員。
多摩美術大学統合デザイン学科教授。2006年Jasper Morrisonと共に「Super Normal」設立。2012年7月より日本民藝館五代目館長。

著書には「デザインの輪郭」(TOTO出版)、共著書「デザインの生態学-新しいデザインの教科書」(東京書籍)、共著書「デザインの原型」(六耀社)、作品集「NAOTO FUKASAWA」(Phaidon)がある。2008年には「THE OUTLINE 見えていない輪郭」写真家、藤井保氏との展覧会を開催、同タイトル書籍を出版(アシェット婦人画報社)。

「2017年 『AMBIENT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深澤直人の作品

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