人間失格 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 文学的なことは何も言えないけど、ただ圧倒されながら読みました。現代で言うところの「クズ男」の、見苦しい葛藤と心情を深く深く書いたような本なのでしょうか。

    「金持ちの末っ子に生まれながらも、女、アルコール、薬物、これらに次々とハマっていき、抜け出せず、周りも大いに巻き込みながら不幸になっていく主人公の生き様」が、本人の視点から赤裸々に描かれ続けるのが、圧巻でした。

    どこか人間誰しもが持っている闇をひとつひとつ拾い上げたような。ちょっと間違えれば誰しもがその闇に包まれてしまうような、そんな風にも読んでいて思いました。

    もう一回読みたいと思ったのし、するりと読めたので★5です。

  • 作品そのものに対してではなく、作品を読んだ自分の感情に驚いた。
    20代の頃に読んだ際は、主人公の感情が痛くて恥ずかしくて居たたまれなくなった記憶がある。まるで自分を見ているような恥ずかしさ。「バレバレだよ」と言われているような苦しさ。

    しかし、50代になって再読してみると主人公の気持ちがよく分からなくなっていた。作中で「優しい」と評されている主人公だが、自我が肥大して自己主張ができなくなっていたという印象しかない。被害者ポジションを取ることで、「何も決定していないから俺には責任がない」と主張しているかのようだ。

    長く生きるほど被害者であり続けることは難しくなる。加害者である自分も背負わなければならなくなる。
    普通に格好悪くなればいいだけなのに、逃げ続けて一周してさらに格好悪い。
    うーん、被害者であり続けることを選ぶとこうなるのかもしれない。

    俺が年を取ったせいなのか、この小説の主人公の感性が若い頃の一過性のものなのか。
    とにかく俺は年を取ったのだ。それを確認させる読書体験だった。

  • 「斜陽」同様、ものすごく考えさせられる作品だった。この2作品は、読み手に哀愁を感じさせる。また、読み手に善悪や、人間の本質を問い、社会に内在する疑問を浮き彫りにする。自分は、こういった作品が好きです。文学を読む上で著者の背景は知る方が良いのはわかるけれども、なにも知らない状態でこの2作品を読めたのは、まっさらな状態で著者の心情や登場人物の心情、当時の時代背景を真っ新な状態で想像できるという点で、良かったと思う。2周3周と読んで、自分に還元させていきたいと、思います!!!!!

  • 古屋兎丸の漫画『人間失格』を読んでから、太宰治の『人間失格』を読みました。そのため、ずっと両者の違いを意識しながら読む形に。

    漫画は舞台を現代に置き換えているので原作とだいぶ違いがあります。私が1番大きな違いと感じたのは、原作では幼い頃下男・女中に悪戯された過去をしっかり最初から告白しているが、漫画は最後薬物中毒になった際に支離滅裂な台詞の中その告白がされている所。
    薬物中毒になってからの葉蔵の独白が終わるまでも小説では割と短いですね。漫画では、薬物の怖さがこれでもかと描かれているので、読みながら顔が歪みました。各エピソードの描かれ方もだいぶ違うかな。
    ある人間が葉蔵の手記を見つけてしまい読み始める、という形態は同じものの、漫画の方が彼の人生を読み解くという体で劇的に描いているから違いが出るのでしょうね。
    にしても、この原作からあの漫画を産むとは古屋兎丸、改めて凄い。

    漫画は強烈な絵でもって読者はわかりやすく葉蔵の堕ちていく姿を見ることができるが、小説は全体的にあっさりしています。読み方によっては「で?何この男妾?ただのクズの話だな」で終わってしまいそうですが、最後のバーのママの一言と太宰治本人な人生がこの作品を名作にしている気がします。どちらも終わり方はパンチが効いてますが、小説のほうは本当に胸にくる終わり方で、私は好きです。

  • 高校生のとき 讀書感想文の課題作品であつたが、男子校に通ふ余は葉蔵が羨ましく妬ましく、最初の方で腹を立てゝ オナニーした後、讀むのを止めてしまつた。
    幾十年振りのリベンジ再讀、よくよく見ると、緻密で巧妙、抜かりない表現と構成に脱帽した。
    それでもやッぱり葉蔵は妬ましい。
    下女に犯された...葉蔵、何歳で童貞を卆業したのだ!?
    ヤりたい放題シ放題なんだから、内縁のかかが目の前で寝取られたつて大したことなからうが。と思ひマス。

  • 読みやすい文で、内容もところどころで刺激的なので、すらすら読み切ることができた。読後、タイトルどおり、こりゃ人間失格だな、と笑った。

    肝心の感想は…引き込まれはしたし、「こういうのが刺さる人はいるだろうな」と思ったが、自分には刺さらず、何かしらの共感を覚えることはなかった。しかし、リアルな自分語りが面白いのには違いない。自叙伝の側面があると聞くが、それを調べる前から「実体験でないとこんなリアルな文章を書けるわけがない」と思った。

  • 高校生の頃ぶりに読み返した。所謂、男の阿呆さ、男の弱さが痛いほどに伝わってくる。いくつかの表現で自分の駄目さを語っている。高校生の頃は「こんな大人にはなりたくない」と思っていた。今でも「こんな大人にはなりたくない」と思っているが、本当の自分は、彼と共通するものがあり、ただ仮面をしながら、騙し騙し、人生を送っているのだろう。強さとは自分に正直に生きることなのか、自分を騙すことなのか。

  • 最近名作だけど読んでなかったものとか内容忘れているものとかに手を伸ばしている。
    人間失格ってそういう意味のタイトルだったのか!!という驚き。
    今の時代なら何らかの診断が下りていそうな感じだなぁという気持ちと、その人の一人称で進むのはちょっと興味深いなぁという気持ち。

  • もう三回くらい読んでいるとおもう。
    その都度殆ど内容を忘れているので読んでみる、という感じ。
    一番初めは中学生ぐらいの時だったかな。
    あまり意味がわからなかったけど、妙に暗い雰囲気に惹かれたような…。2回目も同様だったかな。

    今回は、ちょっと衝撃を受けた。
    この人物の人を怖がる気持ち、怖がりながらお道化ているところ、自分に似ている。
    まるで自分のことのようだと思った。
    若い時には気づかなかった、自分の隠したかった部分が炙り出されたようで息苦しくなった。

  • 自ら手記として残した『恥の多い人生』。名家に生まれ、眉目秀麗、勉学も優秀な少年が、絵に描いたような転落人生を辿っていく。幼い頃から周りとコミュニケーションが取れず『道化』という殻を被るが、それを見破る人の出現で徐々に道を踏み外す。いく人かの女性との出会いで浮上出来るかと思いきや、それも棒に振ってしまう。どうしようもないクズ!という気持ちで読み終えようとしたが、最後のマダムの言葉でモヤッとさせられた。酷く鬱々とする話たが、不思議とまた読みたいとも思った。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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