星の子 (朝日文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 主人公は親の宗教を受け入れつつも、おかしな親という周りからの目線に戸惑っているような曖昧な気持ちが凄く伝わってきて楽しめた。

    劇的なラストではなく、静かに物語が閉じるようなラストだった。姉の行方や主人公が高校に行くに当たってどこに住むか、春ちゃんの彼氏の話など結末が出ていない事が多くて先を知りたくなった。

    最後の場面を希望と感じる人もいるようだけど、私は家族みんなが集まる最後の幸せな夜という感覚になった。幸せと不安が同時に感じられるような気がした。

    また今村さんと小川さんの対談で、小説の主人公が見たこと・感じた事しか書かないような文体の話や、詳細に書くか余白を残して書くかの違いなどを話していて、少し小説の読み方を勉強出来たような気がした。

  • 一言で表せば宗教二世の話であるが、主人公ちひろが宗教自身で悩んでいる描写は意外なほど少ない。何度も引っ越しを繰り返し、引っ越す度に家が狭くなっていく。修学旅行の旅費をおじさんが工面してくれた。などとという描写から、親がお布施か何かのせいで金銭面で余裕がないことは伺える。

    宗教自身が悪者としては描かれず、絶対悪として描かれている唯一といってよい存在が南先生である。ちひろの両親を公園で見つけた時に不審者扱いをし、教室ではちひろの存在と両親の存在までもを全否定する言葉を浴びせかける。

    その反対にちひろの周りにいる友達は宗教二世のちひろではなく、ちひろ自身を見てくれている。宗教そのものについては肯定も否定もしない。宗教二世のちひろとして見ているのは、親から近づくなと言われている人たちである。

    合宿所のようなところで親となかなか会えないでいるちひろに不穏な空気が流れる。親とちひろの間ですれ違いが何度かおき、なかなか会えない。その空気を友達が、もう会えないかもねという言葉で表す。やっと会えたと思ったら、タオルが凍ってしまうぐらい寒いのに、外に出て流れ星を見ようと親は言い出す。三人が同時に流れ星を見るまで合宿所には戻らないと親が言い出す。

    この一連の流れ。親はすでに亡くなっていて、ちひろもこの世からあの世に行く過程だったのではないかと思わせられた。そんな突拍子もない考えに行き着くのも、私が「星の子」という宗教にのめり込んだからだろう。

  • オーディブル
    今村夏子先生らしく、常に違和感があり、急にゾッとする一文がさらっと現れる。
    自分には理解できない、世間からもかなりかけ離れた宗教感。だけど、主人公と家族はとても関係が良く、これはこれで幸せだなとさえ思えてくる。なんて思っていると、突然現れる異常性にやっぱり無理!ってなる。

  • 愛も信仰も盲目なんだなァ…
    自分が信じてるものって第三者からみると異常でも、それが「普通」だから分からない…というか、何も思わないんだよね、きっと。
    だから宗教って怖く感じる。

    終わり方は、え!これで終わり!?って感じだった。
    メリバに近いものを感じた。

  • 傍からみると滑稽に思えるほど宗教に熱心な両親。
    わたしは若干疑問に思いつつも、従順に宗教を信じている。
    どうしたらよいのだろうか、考えさせられた。

  • 新興宗教にのめり込む両親の元で暮らすちひろの視点で分かりやすい言葉で語られているのと、ちひろや登場人物の会話が多いためとても読みやすかった。
    両親のことで辛い思いをしながらも淡々と受け止めているちひろを見ていると、生まれながらにしてこのような環境で育つことを気の毒だとか抜け出せるといいのにとか思うのは、もしかしたら余計なお世話なのではないかと思ってしまった。
    巻末に小川洋子さんと今村さんとの対談が収録されていて興味深く面白かったので、小説と共に2倍楽しめた気分になった。

  • 子は親を選べない。でも、幼いころから自分の育った環境を当たり前のものとして受け止めて育ってきて、それを隠すこともせず、友達にも恵まれているちひろからは、年と共に戸惑いなど感じるようになっても悲壮感は感じない。ラストはここで終わるのか~という感じだったけど、彼女が彼女のための人生を歩めることを願っている。

  • 宗教にハマっていく両親と主人公。主人公の姉やクラスメイト、先生、親戚との温度差がうまく描写されている。
    わたし自身は無宗教なので、どちらかといえば主人公とは対岸にある。だけどもこうやって宗教というものに浸かっていくのだなと感じた。
    ラストは不思議な感じで終わったのだけど、結構宗教イコール幸せか不幸かはその人は決めることなんだということなのかなと思った。

  • 宗教に悪いのめり方をした両親から、娘を切り離そうとする叔父、逃げ出す長女、不審者扱いする先生など、正常な視点の心情を描き出しておきながら、渦中の人間の温かみみたいなものも描いていてすごい、、。ラスト、星の下で「両親が娘を思う気持ち」が溢れ出ていて感動しました。
    本当はもっとバットな終わり方が想定されていたと、小川洋子さんとの対談でお話されていましたが、この終わり方で自分はほっとしました。

  • 親が信仰している宗教は生まれてくる子どもは選べない。
    ただ、信仰した理由が自分のためという所から簡単には否定できない子どもの複雑な心境の描写が見事だった。

    最後まで分かりあえたのか、分かり合えなかったのか、これからもまだまだ葛藤が続いてくであろう余韻を感じれるラストシーンも良かった。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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