同志少女よ、敵を撃て [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
4.24
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本棚登録 : 3182
感想 : 411
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感想・レビュー・書評

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  • 文句なしの星5です!
    自分は歴史を全然知らないので、面白いのか不安でしたがそんなのは無用の不安でした。
    最後まで読んで物語が終わってしまうのが惜しく感じてしまうほどでした。

    まず登場人物が全員よかったです。
    個人的に好きだったアヤが、まさかあんな序盤に亡くなってしまうとは。
    ツンデレキャラが少しでもデレると死亡フラグなんだなとつくずくおもいました・・・。あんなに片づけのことでわいわいしていたのに・・・。
    オリガも、まさかあのような最期を遂げるとは、ずるいですね。
    彼女が裏切りものだったことはかなり衝撃的でしたが、個人的に素の彼女のほうが好きでした。
    今の世界情勢を考えてしまうと・・・。思うところはありましたが。
    幼馴染であるミハイル君は運が悪かったですね。
    人間だれしもダブスタだと思っているので、セラフィマにみられていたのはもう運がわるかったとしか。
    正直一人一人語れるのですがこれぐらいで、
    面白い作品にうまく使われている、最初の印象や展開と真逆の展開っていうのがすごくふんだんに使われていて、最後まで飽きませんでした。
    とてもいい作品を読ませていただきました。
    アニメ化してほしいと思います。

  • デビュー作から話題になった逢坂先生の衝撃の作品!という事と表紙のインパクトから手に取って読んでみましたが、
    読み終わった時には、「もうこの作品を一生忘れる事が無い気がする・・」と思うくらいに私自身も衝撃的でした。
    内容は、ソ連の村に住んでいるセラフィマという少女が、ドイツ軍の侵攻により、大好きな母親や同じ村の人々が犯され殺された事をきっかけに、復讐の為に狙撃兵として訓練を受けて、独ソ戦最大の激戦地のスターリングラードで女兵士として戦う物語。

    逢坂先生は本作を描く為に、独ソ戦に関する資料を半年間収集したという事を仰っていただけあって、その情報量溢れる物語を2000円で楽しめるのは良い時代だと思いました。

    ラストシーンでもそうなんですが、主人公のセラフィマ自身、初めは普通の村人の女の子で、訓練で牛を殺す事すら抵抗を感じていたのが、戦争に進むにつれ、人を殺す事に抵抗どころかスコアを稼ぐ感覚になり、人殺しで喜びを感じ始める描写の異質感は、読んでいて冷や汗を感じました。
    「残酷な人が戦争を起こすのではなく、戦争が人を残酷にする」
    そんな極限状態で自分を保つ為に、「何のために戦うのか?」を教官のイリーナが何度も問い続けている様子を見て、私自身も今後大きな仕事をなどを達成するために、非情にならなければいけない時や良くない誘惑が迫ってきた時に、「なぜ戦うか?」を見失ってはいけないのだと考えたりしましたね・・

    ここから重大なネタバレを含んでしまうのですが、ラストシーンで、セラフィマが目撃した最後の敵・・
    それは戦争で勝利した後に、相手国(ドイツ)の人達に性的暴力をする同じ村で育った幼馴染。
    セラフィマが戦う理由は、「女性のため」という価値観のもと、最後に自身に向けて「同士少女よ、敵を撃て」と自分に言い聞かせて最後の銃弾を打つシーンは、鳥肌モノでした。
    同じ国のしかも幼馴染(味方)を打つなど、他人からしてみれば、かなりの重罪だがセラフィマは撃った。
    その銃弾をも撃てる覚悟をも与えてくれる価値観の強さ。そんな価値観を見つけて、かっこよく生きたいとも思わされました。

    あとは女性の扱いに関して現代社会でも問題だらけだけど、それが戦争にもなると本当に悲惨な状況。
    それをかなり濃密に描かれていて、本書のテーマは「女性の立場」も大きなウェイトを占めている内容。
    性差の課題に関しては、経営者としても粘り強く向き合っていかなければいけないと余計に感じ取れました。
    女性は共感と勇気を、男性は反省を与えてくれる物語なのかもしれない。

  • 本屋でもネット上でもちらほら目にして気になっていたものの、分厚いなあ…とか、独ソ戦の話を日本人が描いたところで文句言いそう…とか思って手に取っていなかったのですが、信頼している友人・先輩諸氏から「めちゃ面白かった」と聞き、早川の50%オフがきたら買おうともっていました。

    あっという間に読み終わってしまった、めちゃくちゃ面白かった。
    えこれ書いたの本当に男性?と思うほど、"シスターフッド"小説として違和感なく、読めました。またソ連側も、ドイツ側も、ある意味日本人だからこそ"中立的に"書いている(フィクションだけれども)という感じがして、意外なほどに読み進められた。フィクションだなと感じた部分は、前半オルガのキャラクターがあまりにもキャラクターというところだが、そのほかの部分はすんなり読んでいました。独ソ戦の戦いについて史実的な理解が浅いため、判断がつかないというのが正直なところ。

    アレクシエーヴィチの本の方が(?)むごたらしいのですが、途中で無残にも欠けていく戦友、市民・軍人問わず人の命を描き、戦争の残酷さを垣間見る気迫をこの小説は持っていたと思います。少なくともフィクションで描ける・たどり着ける戦争小説としては、戦後の1985年生まれが書いた小説として、最高峰なのではないでしょうか。
    またセラフィマが敵/味方という区分がドイツ/ソ連の区分に当てはまらないことを感じていくといった彼女の成長を読むというのも、戦争とは何か?というのを日本人が改めて"客観的に"読むという上で非常に適していたように思います。日本がテーマだと、無意識的にせよ意識的にせよ、事実に様々な感情が混じってしまうので。
    まぎれもなく反戦小説でありながら、エンターテインメントとしても楽しませ、読ませるというのがうまくバランスが取れていた。戦中・戦後の女性たちの苦しみがあまり触れられていないのに対しては、エピローグがアレクシエーヴィチから「あなたの話を聞かせてほしい」という形で終わるということで、読者が興味を持ち、手を取るというところに繋がるのでいいのかな…うーん上手い仕掛けだと思いました笑。読者も繋げるし、ファンとしても嬉しいみたいな。

    話の中身にもう少々踏み込むと、本作はアガサ・クリスティー賞を受賞したとのことですが、どのあたりがミステリなのかピンとこず笑
    最後、ミハイルを撃ったのは小説としてはハッとするという意味でそうきたか・上手いなという感じでしたが、それが本当に良かったのか、「同志少女よ、敵を撃て」をああいう風に回収するのが良かったのかは悩んでしまう。そこも含めて、上手いな、なのですが。。。
    最後イリーナと二人で暮らしているのはハッピーエンドで嬉しいが、改めてイリーナとセラフィマが「美しい」、なんならシャルロッテも美少女だったし、美しく描いたところがもやっとします。美しくなかったら読まないんですけどね、、結局美少女で読んでしまった自分にもやり。

    とはいえこれらをひっくるめても文句なしに★5、間違いなく友人に勧める作品となりました。面白かった。

  • 心にずっしり来るお話だった。ONE PIECEで「勝者こそが正義だ」っていうセリフがあるのをすごく思い出した。その時その時によって人殺しが正当化されたりとか、一転して犯罪になったりとか、権力者の一声でどんどん振り回されるよね。ミハイルが暴行しようとしてたの、すごいショックで衝撃だったけど、戦争が人を悪魔にするってほんとなんだなと思った。あんな極限状態でまともでいれるわけない。

  • ロシア対ドイツの戦争の話。
    日本も経験した第二次世界大戦だが、また違う国をロシアとドイツどちらの視点に偏ることも無く、平等な視点から読めた。戦争の残酷さ、悲惨さを身に染みて感じながらも、私がどれだけ恵まれた環境であるのか、人生を教えてくれる本だった。

  • 主人公である少女が、平和な日常が「独ソ戦」に巻き込まれる冒頭シーンから読者を戦場に引き込まれる。2022年本屋大賞は当然の結果であろう。
    戦争映画で観たことのあるシーンもあるが、その映画を上回る価値があり本当に面白く、あっという間に読めた。
    スリルあふれた狙撃兵の物語を読むのは「極大射程」以来だが、ノンフィクション、公的公開資料を駆使した日本人の著者が目を背きたくなる悲惨な戦場を描いたソ連を描かれている。
    頻繁に実在の人物が出てくるから、よりリアルに感じる。

  • デビュー作がアガサクリスティー賞、本屋大賞受賞、ベストセラーとして話題性のとても高い小説。積読く状態だったけど読みだすとあっという間に読める戦争娯楽小説だった。
    独ソ戦の悲惨な内容、戦時における性的暴力や虐殺、ソ連に実在した女狙撃手や女性戦士の戦いと終戦後の人生、これがデビュー作とは思えなかった。ウクライナ侵攻の時節柄もあり、シスターフッドのテーマとも絡んで今の時代を代表するような真面目なエンタメ小説だった。エピローグに至っては完璧すぎる後日談で、ちょっとやりすぎかもとは思った。
    いずれにせよ、次回作が楽しみ。

  • 本の表紙とタイトルから最初は少しラノベっぽい小説なのかなぁと思ってたけど、思ったより硬派な小説でした。独ソ戦の史実や文献をしっかり調べて書かれたドラマチックな物語。面白かった!

  • ガンマンものはもともと面白いし、こうやって集団の狙撃兵育成をディテイル豊かに描くのは興味津々。

    『リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリチェンコは、前置きもなく尋ねた。「 諸君に問いたい。前線に出たとき、敵の砲撃のさなかフリッツを撃つ際に、ヘルメットをしていたとして、その紐をしっかりと締めるか、それとも緩めておくか」』

    に対し、「紐を緩めます。砲撃が至近で爆発した際に、爆風を受けたヘルメットが飛ぶようにです。 しばしば、締めた顎紐によって頸椎を骨折し、あるいは首を切断して死んだ兵士を見ました」

    「紐をゆるめた状態で狙撃を試みると、多くの場合、銃が跳ね上がった際にヘルメットの動きが頭と同期しないため、しばしばヘルメットのヘリにぶつかったスコープが損傷し、次弾の照準が不可能となる。戦況にもよるが私であればまずもって爆風が直撃しない塹壕、あるいはトーチカへ移動し、紐を緩めて狙撃に入る。だがそうも言っていられない場合もあるし、移動が不可能で砲撃が間近で炸裂するならばやはりは緩めるべきだろう」

    なんてディテイルどこに書いてるんだろう。

    今はソビエトVSウクライナが問題の時期に、この小説は二次大戦のソビエトVSドイツ。それでもウクライナについての記述があるなど、民族的な確執、家族の悲劇、少女の成長、友情と単なるドンパチの戦争ものではないところにも奥深いものがある。このタイプの小説の金字塔となりそう。

    本雑2021年度エンタメ(北上次郎)1位

    2022年 本屋大賞1位

    アガサ・クリスティ賞

  • デビュー作でここまでの緻密さでこのような長編を書かれたことに驚きです。
    読んでいてスピード感があり、ぐいぐいと話が勢いをもって進んでいくところが良かったです。
    ロシアでは女性のスナイパーが実際にいたということにも衝撃。今でさえ多くはないのに、この当時の戦争は男性が闘うものとばかり思っていました。
    戦争後、この女性狙撃手たちはどのような人生を歩むのか気になっていましたが、そこも触れているところが良かったです。

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著者プロフィール

逢坂冬馬(あいさか・とうま)
1985年生まれ。35歳。埼玉県在住。『同志少女よ、敵を撃て』にて第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞。

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