夜叉ケ池・天守物語 (岩波文庫 緑 27-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102732

感想・レビュー・書評

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  • 夜叉ケ池と天守物語の2編が収められています。人によって意見が分かれるとろでしょうが、夜叉ケ池の方が好きです。
    俗世に染まった人間と、純粋な人間、そしてそれ以上に純粋な妖怪。妖怪は勿論、人以上の妖しの力を持っているのに、純粋な人間を羨み、その純粋な人間のために我慢をする。ところが、俗世に染まった人間は、人を思いやる言葉を吐きながら、己のことしか考えていない。妖怪の純粋さから考えさせられる所の多い作品です。

  • "夜叉ヶ池

    晃、百合(鐘をつく)、学円
    白雪(妖怪)
    "

  • 金沢行ってから読み返すとまた違った味わい。獅子頭も実物を見ないと伝わらない感覚がある。当地独特の風習を知れば尚一層。

    昔は圧倒的に夜叉ケ池派だったが段々天守物語の良さが判って来た。「物語を紡ぐ」経験のある人には特におすすめしたい。初見だと天守物語の「出来上がり」具合に青い反感をを覚えるかも知れないが、何度も読み返すとなるべくしてこの形になった事がしみじみ実感出来る。

    とにかく本は薄いけど味わいは深い。

  • 「夜叉ヶ池」は戯曲でして、夜叉ヶ池の主たる白雪姫て妖怪がおおはしゃぎして村を水没させる話。ざっくり言うとね。たしか最近の役者で上演したのがDVD で出ていたような。松雪泰子とか松田なんとかとかそこらへんで。観たことないけど今度観てみようかな。「夜叉ヶ池」は、これは「天守物語」もそうだけど、真面目な話なのかなーと読んでいると、突然、自然と蟹の妖怪とかが鋏持って出てきたり、鯉の妖怪が口の周り黒でぐるり塗ってパクパクさせたりするから、何の悪ふざけよ、ッてガクッとなる。でも上演してみたいと思う。「夜叉」やるなら蟹五郎がいいな。

    蟹になりたいね!!

    「天守」やるなら朱の盤ですね、もちろん。

    蟹になりたいね!!

    学円が真宗の僧侶というのには大いに意味があって、真宗の祖・親鸞は大蛇済度譚で有名だもんで。詳しくは堤邦彦の論文や著作参照。舞台が越前だから真宗てのもあるだろうけど。実際の伝説下敷きにしてるんだろうな、きっと。

    谷崎読んでからだからかもしらんけど、晃と百合のイチャイチャっぷりがもうきゅーんした。晃かっこいいし男前だし、百合はしっかりしてそうだけどすぐ心細くなるのでいやんいやんするのがいじらしくて可愛らしい。そして人身御供にされかけて村人に襲われる場面はちょっとエッチですぞ!!

    年代も違うし、谷崎と鏡花較べるのもどうかと思うけど、同じ母親に憧憬がある作者でも、妻大好きの鏡花と、女中をわざわざ自分で面接して雇ってから手ェ出すような谷崎では理想の恋愛や男女像が違うもんだナアーと。イヤ、鏡花の愛妻はイメージに拠るところが多いけれども、鏡花作品の男女て一途で、夢見過ぎな展開という印象が強い。

  • 言葉の力とは、恐ろしいと感じる作品で、言葉の一つ一つに何かが込められているような気がするのは私だけでしょうか。

    ルビがふってあるので、難し言葉も読みやすくなっています。一度読んだだけでは勿体無く、非常に短いので、なんども読んで噛みしめたい作品です。

    素晴らしいものは時代を超えて存在するということを思わさざるを得ないです。お芝居や映画?、歌舞伎などで見たことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、原作の持つ力は計り知れないと思いますので、ぜひ読んでこの不思議な泉鏡花ワールドを体感していただきたいと思います。

  • 夜叉ヶ池って、岐阜県のあの伝説というか民話の夜叉ヶ池なのかしら。

  • 人間よりも人間らしい妖怪というのは1つのパラドックスである。それはすでに倫理とは言えないかもしれない。そこがパラドックスのパラドックスの所以である。

  • 文体に惚れるなんて初めて経験した。

    上手く説明できないがとんでもなく美文。それだけで星5を付けれる代物がこの世にはあるんですよ奥さん。

    登場する人たちの遣り取りが美しい。婀娜(あだ)っぽい、という表現が最適かと思う。


    ものすごく不遜な言い方をするなら萌える。何かに。
    説明になってねぇな・・

  • 一昨年、同名の歌舞伎をみるために、予習として読みました。
    結果、歌舞伎より原作の方が圧倒的でした。

    子守唄が聞こえてくるところが幻想的で、はっとさせられました。

    10月だったか11月だったか静岡の芸術劇場に、宮城さん演出の舞台「夜叉が池」を見に行きましたが、これがまたおもしろかった。
    原作は原作として、舞台は舞台独特のおもしろさがあった。
    独特の世界観が、宮城さんらしくて、好きです。

    役者の動きは生身の人間と全く違う、作られたものという印象を強く受けました。人間が表象というか記号というか・・・そういうものになってしまったという印象です。
    その後役者さんたちとラウンジでお話できる機会があったのですが、舞台上の彼等と比べると舞台を降りた彼等は生生しくて、ちょっと幻滅でした。

  • こういう戯曲とかそういうモノって、やっぱり普通の小説とかとイメージの膨らませかたが違う。
    文章に書かれてる情報が少ないから、コッチで色々脚色したり演出したりするのが良いらしい。
    名作だけあってさすがの面白さだった。

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著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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