にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語

  • 朝日新聞出版
3.59
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023312388

作品紹介・あらすじ

人間の活動はすべて、私たちのDNAのなかに検証できる痕跡を残す。そのDNAが記録する物語が音楽のことであれ、スポーツのことであれ、無節操な病原菌のことであれ、それらの話がトータルで、地球上の人類誕生にまつわる遠大で入り組んだ物語になっている。そして私たちが自然の最高の誇りであると同時に、自然の最も不合理な産物でもあるのはなぜか、その理由を教えてくれる。愛も、才能も、闘いも-DNAに刻まれた人類の歴史をひも解く全米ベストセラー・ノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 遺伝子がまるで人生を決定づけるかのように、その人の才能、病気を左右する。解明される程に、人類が辿ってきた歴史も明らかになり、それはまるで生物におけるプログラミングを解き明かすかのようだ。本著は、遺伝子に纏わる四方山なドラマを凝縮した一冊だ。

    チンパンジーなどの霊長類は、爪の硬さの小さなこぶ、棘上突起がペニスに点在している。人にこのとげとげがないのは、本来なら特定の遺伝子を誘導して突起を作らせる調節DNAの6万文字を失ったからだという。その為に人の性交は時間が長くなった。繁殖戦略の違いだ。

    文化的な後天的措置として、割礼がある。この割礼が生物として必須なら、獲得形質として棘状突起のように、包皮が消失していきはしないのか。しかし、人間が施す措置だからこそ、獲得されない。つまり、必要な形質を持たぬ個体が淘汰されずに生き延びるため、エピジェネティクスにならない。棘の無いオスだけ性交を許される事で、棘ありペニスが滅びた。しかし、包茎は生き延びている。いや、男性器で語るのが分かりやすいからの事例で、アナロジーではないが、優生学にも通底する。

    結果、そのサイズは気にしないという、という女子の本音も立証されるわけだが、こうした話は一例だ。性器に限らず、外観や能力の多様性が現存することは、遺伝子のゴールと人間文化の権威思考が整合していない事の証左でもある。学歴や年収による序列など、フィクションだ。諸々を顧みても、多いに慰められる話になるのではないか。

    他にも、ネアンデルタール人とサピエンスはゲノムの99%以上を共有している。またネアンデルタール人は赤毛で色白、血液型は最も一般的なO型で、ミルクを消化できなかった、など。人間にもネアンデルタール人にも、共食いの証拠が存在する。共食いをする動物がかかる病気、特に互いの脳を食べることで完成する牛海綿状脳症のような病気を体が撃退するのを助ける遺伝子シグネチャーは2つある。そのうち1つを持っている。

    自分達の原点の話だ。面白く無いわけがない。

  • さまざまなことがこの20年で研究されて、わかることも増えたけれどわからないことも増えたというのがよくわかる。DNAの検査をして、「○○病のリスクが高い」とわかっても、あくまで可能性ということ。DNAの働きを活性化したり抑え込んだりするしくみが別にあるんだって。

    「へぇー」と感心することはいろいろあるのだけれどそれはネタバレになるから置いておいて、生物学の研究者たちのアクの強さが印象的だった。やっぱりある程度思いやりに欠けた嫌な奴じゃないと大きいことはできないのかしら。また、けっこうな有名人たちが病弱だったことにも驚いた。ダーウィンなんて髭もじゃのかっぷくのいい人というイメージだったのに、体調が悪過ぎて田舎に籠っていたから『種の起源』を完成できたのだとか。

    • だいさん
      >嫌な奴じゃないと大きいことはできない

      競争だから、他人を蹴落とさないといけないのでは?
      >嫌な奴じゃないと大きいことはできない

      競争だから、他人を蹴落とさないといけないのでは?
      2013/11/05
  • 著者が科学者ではない分、わりかし理解しやすい言葉でもってDNAの専門的な事柄を説明していて、咀嚼しやすい好著だと思います。

  • 【中央図書館リクエスト購入図書】☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB1370063X

  • 遺伝子の話なのに、ダーウィン、ミーシャやIndia王女等の人間関係の繋がりに目がいきました。

  • 遺伝子の話である。
    もう少し、優しい感じかと思ったら、思いのほか読み進めるのに時間がかかってしまった。
    どうも読みにくいのは、原書が英語のせいか?

  • 遺伝子についての学問のお話というより、遺伝子にかかわる人物のさまざまなエピソード集めましたという感じ。それと交互して学門的な説明が入っている。
    ちょっと思っていたのとは違ったが、人間臭さが詰まっていてこれはこれで面白かった。
    願わくば、遺伝子の形状や分裂の段階や変異が視覚的にみえる図がほしかったです…。トリプレットとかフレームシフト変異とかジャンプ遺伝子について言葉だけで説明されてもイメージしづらかった。DNA折り紙は全く想像できず、ググりました。

  • 内容的に難しい部分も多く、飛ばし読みしてしまった箇所もあるが、複雑な話をワクワクさせる形で書かれていて、面白い。

  • 私たちのDNAは、意気揚々と凱旋する古代ローマの将軍のあとにしたがう奴隷のようにささやきかける。
    「忘れないで、あなたは消える運命にある」

    DNAのなかに残された痕跡、そこから読み取ることができるもの。
    何度も瀕した絶滅の危機、人類がたどった遠大な進化の旅の道程。そしてパガニーニを音楽家へと成らしめ、ロートレックを画家に導き、最終的に破滅させた運命の根幹。
    霊長類の親類を含めた何百という生命の分枝について、その起源と進化――。
    DNAのなかにひそむ微生物、それはどんないたずらをするのか。
    生来備わっているはずの“恐怖”。それを取り除くだけでなく、魅力という好意的なものに変え、“魅力”が操られた私たちは最悪の敵に引き寄せられるおそれがある――。

    遺伝子研究の歴史とその研究者について、そして今もってさらに深まる遺伝子の謎をひも解くノンフィクション。

  • 面白い。人の遺伝子のかなりの部分がウイルスのものだとか、遺伝子そのものだけでなく、周辺情報エピジェネティックスが大事なのかも、とか。ビタミンAは実は体に毒だとか。
    あえて言うなら以下にもアメリカの一般向けサイエンス本らしく、話が長くて構成が冗長に感じる。まあこれは文化の違いなんだろう。

  • DNAについて想起される夢想に対して冷水を浴びせ、ここまでわかったがこれは出来ていない、どこまでわかっていないか、に眼目が置かれている。
    図版、まとめ、平易な表現など、もっとわかりやすく読ませる工夫はして欲しい。各章で面白さにばらつきも感じるが、中身のエピソードは初耳のものも多い。

  • 第1部 決め手はA・C・G・T
    第2部 動物としての過去
    第3部 遺伝子と天才
    第4部 DNAのお告げ

  • 登録番号10662 分類番号467.2 キ

  • リチャードドーキンスの利己的な遺伝子以来読む遺伝子の本です。遺伝子の研究は20年でずいぶん進んでますね!
    自分の遺伝子にこんな歴史が書き込まれてるとは!
    面白白すぎですね。

  • おもしろかったです!
    高校で適当にしか理科を勉強していない商業高校卒の僕にとってはいまいち理解しきれないところも多かったのですが、雰囲気でなかなかおもしろかったです!
    チンパンジーと人間を交配させようとした話や広島長崎で2重被ばくした人の具体的な話からDNAについて掘り下げてくれるので読んでいて飽きずにとても引き込まれました。
    それぞれの時代の宗教や政治的な背景から研究がかなり左右されているのが印象的でした。

  • かつてのものから,最新の遺伝子研究まで幅広く. 自分にとってはいい導入になった.
    ヒトゲノムプロジェクトの裏側. そしてDNA,ゲノムだけがわかっても人間はわからないということ. エピジェネティクスという概念も知らなかったのが真実.

    遺伝子医療革命を同時並行で読み始めていたので, ちょうどいいタイミングでの読書だった.

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著者プロフィール

ニューヨークタイムズのベストセラー『The Bastard Brigade』『空気と人類:いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか(白揚社)』(ガーディアン誌のサイエンスブック・オブ・ザ・イヤー)『The Tale of the Dueling Neurosurgeons』『にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語(朝日新聞出版)』『スプーンと元素周期表(早川書房)』の著者。また、PEN / E. O. Wilson Literary Science Writing Awardの最終候補に2度選ばれている。著作はThe Best American Science and Nature Writing、ニューヨーカー、アトランティック、ニューヨーク・タイムズ・マガジンなどに掲載され、NPRのRadiolab、All Things Considered、Fresh Airでも紹介されている。彼のポッドキャスト「The Disappearing Spoon」は、iTunesのサイエンスチャートで1位を獲得した。ワシントンD.C.に在住。

「2023年 『アイスピックを握る外科医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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