万葉集の詩性 令和時代の心を読む (角川新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823201

作品紹介・あらすじ

「万葉集とはなにか」「万葉集をどう読むか」――国文学はもとより、ロシア文学や中国古典文学、小説、詩歌、編集工学まで。各斯界の第一人者たちが、初心をもって万葉集へ向き合い、その魅力や謎、新時代への展望を提示する。新元号「令和」の典拠となった、日本最古の歌集を鑑賞するための格好の手引き。全編書き下ろしによる「令和」緊急企画。


はじめに
「三つの詩性」   中西 進
「自伝的万葉の旅」   池内 紀
「詩情と形式、あるいは魂と建築  巻十五「遣新羅使詩篇」を例に」 池澤夏樹
「万葉集とわたし」  亀山郁夫
「山上憶良と中国の詩」  川合康三
「いや重く謎」  高橋睦郎
「ふらふら万葉習養記」  松岡正剛
「万葉集エキサイトメント」  リービ英雄

感想・レビュー・書評

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  • ネットでHeveneseのラストトークを見ていて、本書に言及があったので購入。令和の語源である万葉集をほとんど知らなかったので、とても興味深く読んだ。8人の著者の、改元をきっかけに書かれた万葉集に関するエッセイ集。

    鈴木大拙は「日本人の霊性」の中で万葉集を「稚拙」だとか「幼稚だ」とか、あまり良い評価をしていなかった。しかしながら本書から万葉集の他の歌集との違いがわかり、納得した。
    曰く、万葉集には中近東的な雰囲気がある、とか、万葉集は文字ではなく大和言葉の響きを口にうたうための歌集である、とかなどと言うように書かれていた。また万葉集には代作という表現があるとの事。これについては日本人が原作を尊重しつつも模倣する、現代のコミケの同人誌の根底にあるものの起源のように感じた。模倣は多文化では真似や盗作だが、万葉の代作からくる日本の「なぞらえる」とか「あやかる」文化は、まねる、まなぶ、につながるのではないかと思った。

    星四つ。

  • 文学や編集に携わる8名の手による万葉集エッセイ集、といえばよいか。
    出だしから中西進氏による『旧約聖書』と『万葉集』のリンクが展開され、度肝を抜かれる。良き文学とはほかの文学と共鳴するものとはいうが、まさかそんなところと響き合うとは。しかも万葉集の第一人者の一人中西進氏からそんな。おみそれしました。
    川合康三氏の「山上憶良と中国の詩」、高橋睦郎氏の「いや重く謎」あたりは若干硬めの印象を受けるかもしれないが、基本的には一流の文化人たちによる平易な万葉集エッセイである。いや平易と言ったが完全に万葉集知りませーん何書いてあるんですかーな人には向かないかもしれない。ちょっとは齧った人向け。だが、ちょっと齧って関心がある人には気軽な万葉集読み物として勧められると思う。個人的にはこの本で松岡正剛氏を少し見直した(?)。
    難点があるとすれば取り扱われる歌に多少の偏りが見られる気がすること。ただ明らかなほどではなく、寧ろ私の気のせいかもしれない。総合的にはバランスの取れたよい本です。

  • 【いちぶん】
    詩は感情である。
    そして感情を統制して他者に伝えるには形式が要る。もやもやとした思いはそのままでは海辺の霧のように漂って消える。大伴家持は人々の感情に形を与えた。百四十五本の材木を組み立てて豪壮な建築とした。
    そこには作為が満ちている。足りない部分は作ってしまおうという意図に溢れている。
    (p.93)

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著者プロフィール

中西 進(なかにし すすむ)
1929(昭和4)年東京生まれ。東京大学卒業、同大学院修了。文学博士。
筑波大学教授、国際日本文化研究センター教授、大阪女子大学学長、帝塚山学院学院長、京都市立芸術大学長などを歴任。全国大学国語国文学会会長、日本ペンクラブ副会長、奈良県立万葉文化館館長なども務める。
「万葉集」など古代文化の比較研究を主に、日本文化の全体像を視野におさめた研究・評論活動で知られる。読売文学賞、日本学士院賞、大佛次郎賞、和辻哲郎文化賞ほか受賞多数。
主な著書に、『万葉集全訳 注原文付』全五巻(講談社文庫)、『中西進 日本文化をよむ』全六巻(小沢書店)、『古代日本人・心の宇宙』(NHKライブラリー)、『中西進と歩く万葉の大和路』(ウェッジ)など。

「2022年 『万葉秀歌を旅する 令和改装版 CD全10巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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