女生徒 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.10
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本棚登録 : 4563
感想 : 256
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099155

感想・レビュー・書評

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  • 九段理江「School girl」を読もうとしたら、令和版「女生徒」というキャッチコピーになっていたので予習的に読んだ。太宰治は教科書で「走れメロス」、青空文庫で「人間失格」くらいしか読んだことないビギナーだったのだけど、とてもオモシロかった。こんなに自意識を煮詰めた小説を戦前・戦後の頃に書きまくっていたことに驚いたし、これは俺の話!!となることも多かったので他の作品も読んでみたくなった。
     本作は短編集ですべて女性一人称のモノローグスタイルで書かれているのが最大の特徴。自分が登場人物に話しかけられるような感覚になるので昔の話とはいえ親密さを感じやすかった。著者は男性であり、男性側から見た当時の女性が感じているだろう生きにくさを細かく描写している点がオモシロかった。自意識を拗らせるのは多くのことが可視化された現代ゆえの悩みかと思いきや、昔の人も自意識との付き合い方に苦労していたことが分かった。
     冒頭の「燈籠」という話からグッと引き込まれて不意の出来心で万引きした女性の回顧録なんだけど、まるで警察24時を見ているような感じ。それが最後文学的表現に回収されていくのだからたまらない。表題作の「女生徒」は冷めた悟り系女子のパンチラインが多くて好きだった。以下引用。
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    本なんか読むの止めてしまえ。観念だけの生活で、無意味な、高慢ちきの知ったかぶりなんて軽蔑、軽蔑。やれ生活の目標が無いの、もっと生活に、人生に、積極的になればいいの、自分には矛盾があるのどうのって、しきりに考えたり、悩んだりしているようだが、おまえのは感傷だけさ。

    美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。きまっている。

    一生、自分と同じくらいやさしい温かい人たちの中でだけ生活して行ける身分の人は、うらやましい。
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     著者の太宰治自身は男性だけど、社会的に抑圧されている女性の生きにくさは格好の小説のネタだったろう。繊細な彼だからこそ感じ取れた女性の立場での感情の機微が多分にあったのだろうなと想像する。クラシックはクラシックたる所以があることを再認識した。

  • 表題作の「女生徒」が一番好き。主人公の少女が何かするたびにあれこれ考え事をする。クルクルと考えていることが目まぐるしく変わっていくところは、思春期だった頃の自分と重なって共感した。たまに考えているうちにどんどん脱線していって、どうしてこれを考えているのかわからなくなったり。でも、そんな時間が楽しかったりしていた。
    「貨幣」は女性の百円紙幣の視点で語られていて、とても心温まる最後だった。貨幣に性別をつけるという発想はヨーロッパ系の言語の女性名詞、男性名詞からきているのかしら。
    太宰治の文章は流れるようで、上品で美しいと思った。どんな年齢にも、性別でも、貨幣にさえなりきれる太宰には感心した。この時代の作品はどれもキラキラしている。

  • 好きな感じだった

  • 太宰治の本の中で一番好き。学生の間何度も何度も読み返して、どうしてこんなに私の考えていることが分かるんだろうって思った。

    「パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。濁って濁って、そのうちに、だんだん澱粉が下に沈み、少しずつ上澄が出来て、やっと疲れて眼がさめる。朝は、なんだかしらじらしい。」

    「いま、という瞬間は、面白い。いま、いま、いま、と指でおさえているうちにも、いま、は遠くへ飛び去って、あたらしい「いま」が来ている。」

    「私たちみんなの苦しみを、ほんとに誰も知らないんだもの。いまに大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘しさは、可笑しなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかもしれないのだけれど、けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮していったらいいのだろう。」

  • 個人的に短編小説の『皮膚と心』が好きです。
    皮膚病で見た目を気にする妻に対して
    それでも妻を愛し病院に連れて行く夫が
    素敵に思いました。
    自分と一階に夫がこんなだったら素敵だな。

  • 自分のなかの女性的な部分とこの短編集が共鳴してしまい。ずっと手元に置いて大切にしたいと感じてしまいました。「誰も知らぬ」という作品が1番好きです。

    • りまのさん
      もっかさん
      はじめまして。フォローありがとうございます。
      太宰治の、「女生徒」は、最近再読したばかりでございます。新潮文庫の、短編集、「走れ...
      もっかさん
      はじめまして。フォローありがとうございます。
      太宰治の、「女生徒」は、最近再読したばかりでございます。新潮文庫の、短編集、「走れメロス」を読んでいるのですが、なかなか読み進まない。この本の中には、太宰作品の中で、一番好きな、「駆け込み訴え」が載せてあるので、レビューにあげたいのですが、とても難しいです。
      これからどうぞよろしくお願いいたします!
      2021/01/09
  • 10代の頃から幾度となく読み返してきたバイブル的作品。
    「何故こんなにも私のことが分かるのだろう」この物語を愛するひとの多くがそう感じるのではないだろうか。
    ひりつくような世界への鋭い眼差し。
    この少女の心情は、同じ女性でも皆が皆もっている感覚でもない気がする。
    有明淑という女学生の日記が元になってはいるけれど、男性である太宰治が、この感性を物語へと立ち上げようとしたことがやっぱりもの凄いことだと思う。気高い美意識に支えられた硬派な乙女小説だと思います。

    "それよりも、この空は、美しい。このお空には、私うまれてはじめて頭を下げたいのです。"

  • 生まれては消えていく日常の瞬間瞬間の儚い思考の物語。

  • 燈籠
    女生徒
    葉桜と魔笛
    皮膚と心
    誰も知らぬ
    きりぎりす
    千代女

    待つ
    十二月八日
    雪の夜の話
    貨幣
    おさん
    饗応夫人

  • 太宰治の書く女の心の描写、わかる、、となってしまう

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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