- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041099155
感想・レビュー・書評
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○「女生徒」は、親の大切さが身に染みる。
○「皮膚と心」は、女性の好きな人の前では綺麗でいたいと思う心、また、そのことに男性も気づき肯定してあげることが大切。
○「きりぎりす」は、人間の欲について鋭く描写している。また女性の現実的な物事の見方も描いている。
○「饗応夫人」は、こんな人いるなと思いながらも、自分の身は自分で守らないとなと思う。最後はスッキリ酒飲み達を一喝して欲しかったが、、笑詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
燈籠
女生徒
葉桜と魔笛
皮膚と心
誰も知らぬ
きりぎりす
千代女
恥
待つ
十二月八日
雪の夜の話
貨幣
おさん
饗応夫人 -
太宰治の書く女の心の描写、わかる、、となってしまう
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「けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮らしていったらいいのだろう。」
どこかしら明日が不安で、生きていくことの意味がわからなくて、ただ幸せに暮らしたいだけなのに、やり過ごし方がわからず傷ついていた思春期の気持ち。なぜ太宰は分かるのだろうか… -
太宰治、あるアニメのキャラクターで大変魅力的であったため、そのモデルとなった太宰治の作品を読んでみたくなって読んだ。正直わたしには合わなかった。それぞれの女性に全く魅力を感じなかったし、その時代ならではの女性の地位の低さ、人生の選択肢の少なさ、自らの謙遜と蔑みがしんどかった。確かに表題にされている、女生徒は良かった。多感な時期の苦しみは今振り返れば笑えたり、客観視できたりする。けれどその渦中にいる人は、苦しみ、悶え、周りからのもう少し大人になればとか、つかの間の苦しみとか、言われても意味がない。彼女(彼)は今が苦しいのだ。わたしも今振り返れば、なんてことはない、苦い思い出の一つだが、あの頃はとてもしんどかった。一歩間違えれば、今わたしが存在していないこともあり得るのだ。そういう危うさがあの頃にはあるのだ、と考えさせられたな。わたしも経験した分、今苦しい思いをしている青春時代を過ごしている彼女(彼)らに、あっという間に時は過ぎるよとか、振り返ればどうってことないんだよ、とか言ってしまいそうであったと思う。こんな風に気づけるあなたはすごい。
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太宰は『人間失格』選んだつもりが、女生徒だった。直前で変えたんだっけか?
うん、まあこれも好きだけども。
貴族の話し言葉には定評がない太宰治(by 志賀直哉)だけど、こういう女の子の素朴な独白はグッとくると思いました。 -
女性が語り手の短編集。
表題の女生徒をはじめ素晴らしい作品がたくさん。
読み終わるのが勿体無いと思った。 -
悲しいことを出来得るなら少しずつ少しずつ受け止めていきたい。そうしていかないと、いつか起こる大きな悲しみの渦に飲み込まれて溺れてしまう。幸福を感じ、それが過ぎ去った後の更なる幸福は、不幸せの背中を見つけようとしている。一筋の光も差し込まない暗闇にひとり、けれど胸の内で何か光るものがある。それがわたしの幸福だ。それを確かに見つめていた証をあなたの言葉に探してしまう、あなたが見たはずのその光。
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私小説としても面白かった。何より戦前から終戦直後の人々の生き方がどのようなものかがリアリティをもって伝わってきた。
まさに名作。 -
太宰、少女の心の描写が上手すぎて、笑った。
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i文庫S
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とても好き。一生本棚にいてほしい。
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全編女子学生の一人称で話が進む。思春期特有の、大人になり切れずに揺れる少女の心情をここまで見事に描けるのだからすごい。
作中で主人公は「墨東奇譚」を読むが、「ところどころ作者の気取りが目について、それがなんだか、やっぱり古い、たよりなさを感じさせる」と結構辛辣。 -
『おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もう、ふたたびお目にかかりません。』
太宰治の女子高生なりすましブログ。 -
葉桜と魔笛、皮膚と心、おさんが好き
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この本を愛してる。
よく考えると、こんなにもうまく少女の気持ちを描く太宰若干怖い、 -
女性独白体で集めたこの一冊って、私にとっては宝物かもしれない。
以下、ネタバレ含む、注意。
はじまりは「燈籠」。
人前に顔を出したくない女の理由が大分トンでいる。一目見て、景色が輝くほど好きな男が出来て、彼が海に行くことを聞きつけ、男の水着を万引きしてしまう。
いや。男の水着盗るか⁉︎と、それまでの恋モードとのあまりの乖離に正直引く。
けれど、そのショックが面白い。
警察に滔々と、自分を裁いてはならない理由を述べて、見事に新聞記事になっちゃう。
ラストの「饗応夫人」はある意味逆に、自分の身体を壊してでも、浅ましい客たちを目一杯もてなす。
ただ、血を吐いて実家に帰ろうと心に決めても、相手に会った瞬間、歓待モードになることの意味が分からなくて、引く。
そして、そのドン引きがきっと面白い。
「きりぎりす」はそう言ったショックは少なくて、貧乏絵描きの妻としてやっていくつもりの主人公が、夫の出世と共に人間までもが変わっていく様子を、女性のある意味アンノウンを認められる視点から書くことで、真実味を帯びる。
正統派な感じ(笑)
でも、「恥」になると、小説がフィクションであることを知らず、何故自分が書かれているんだろう?と不思議に思い、また作者が登場人物通りの身なりでないことに、インチキと感じる。
無知が過ぎて、エキセントリックな感じ。
さて、有名な「女生徒」と「待つ」。
作者を知らない人に、これ、誰の作品と思う?と聞いて、太宰治って答えられるんだろうか。
深く深く潜っていくのに、潜っていく途中で、潜ることの意味を探してしまうような、そんな揺れのある作品で、とても素敵。
明度は確かに低いかもしれない、でも、どこかに明るさや真面目さがあって、爽やかに読める。
『人間失格』だと、そうはいかない。
自分の妻としての語りもあるのだけど、困った旦那さんだわ、と自分自身が書くことの恥ずかしさ?はなかったんだろうか。
読み応えのある一冊だった。 -
とても好き。
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太宰で一番好きな作品かもしれない。少女の淡々とした日常が独り言のように綴られているだけなのに形容し難い美しさはどこからくるのだろう。太宰自身、「少女」であったことなどないはずなのにこれを美しいと思うのは自分が男だからだろうか。青い空を見上げた際の描写が好きで、初めて『ライ麦畑でつかまえて』を読んだときを思い出すくらいの感動を憶えた。美しく生きたいと思います。
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友達に勧められて手に取りました。
「美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。」
なるほど。