女生徒 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099155

感想・レビュー・書評

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  • 時代というものの狂おしさが
    ただただ女性の視点から描かれて
    どれもそれ相応の可笑しさに満ちて。

    「十二月八日」が好きです。
    それに、まったく逆の意味で
    「恥」も。

    太宰治には、これほどまでに
    女性の心情を忖度できる才能が
    あったのだなあ。

  • どの短編も、最初の一文がよい。「朝、眼をさますときの気持ちは、面白い。(女生徒)」「女は、やっぱり、駄目なものなのね。(千代女)」「たましいの、抜けたひとのように、足音も無く玄関から出て行きます。 (おさん)」もしも太宰の作品と知らずに読んだなら、女性作家が書いたと思うに違いない。それほど見事に女性の心情を描いている作品。初版発行が昭和29年。そして今が平成29年。現代版『女生徒』があれば面白いだろうな。

    いまに大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘びしさは、可笑しなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかも知れないのだけれど、けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮らしていったらいいのだろう。

    私たち、こんなに毎日、鬱々したり、かっとなったり、そのうちには、踏みはずし、うんと堕落して取りかえしのつかないからだになってしまって一生をめちゃめちゃに送る人だってあるのだ。また、ひと思いに自殺してしまう人だってあるのだ。そうなってしまってから、世の中のひとたちが、ああ、もう少し生きていたらわかることなのに、もう少し大人になったら、自然とわかって来ることなのにと、どんなに口惜しがったって、その当人にしてみれば、苦しくて苦しくて、それでも、やっとそこまで堪えて、何か世の中から聞こう聞こうと懸命に耳をすましていても、やっぱり、何かあたりさわりのない教訓を繰り返して、まあ、まあと、なだめるばかりで、私たち、いつまでも、恥ずかしいスッポカシをくっているのだ。

    明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。

  • こんなにキラキラしていて、こんなに少女らしく、ころころと感情が変わっていくさまを、文章を、男の人が書いたことが本当にすごいと思う。

  • 知人に「女子学生のことを書いた小説なら『女生徒』が一番」と言われ手にとった。
    ●「女生徒」の感想
    なるほど、今の子と何も変わらないなと。親への反発心とか、大人になったらこの苦しさから解放されると思っている幼さとか。
    これを男性が、70〜80年前に書いてるとは、作家ってすごい。
    ●表題作以外の作品
    「きりぎりす」が好き、というか胸にグゥッときた。
    好きだった夫が変わってしまう悲しさとか。世間は良しとするそれを受け入れられない自分が悪いのか、という苦悩とか。
    とにかく人間って70〜80年ではちっとも変わらないんだな。

  • 途中で断念

  • その目で見た美しい光景を、
    眼球はとらえておけるということ.
    嘘ではなくて本当に、
    そうなのかもしれない

  • 初めの何話かは面白かったのですが、次第に怖くなってきました。女を書く太宰、太宰の書く女。どちらにしろ女以上に女な描写ではっとさせられます。こわいなぁ。でももっと読んでみたいなぁというのも少し。

  • 貨幣と饗応夫人が特に印象に残りました。

  • 色とりどりな女達にまつわるお話し群。アイタタ…な女にいい加減にしろ!とうんざりしたり、いつかの自分とどこか被る女にまたイタタ…。
    女生徒、葉桜と魔笛、皮膚と心、おさん、饗応夫人、など。

  • 一番面白かったのは『おさん』。浮気をしているであろう夫に対し、で〜んと構えた母ちゃんはかっこいい。それなのに夫ときたらまったく…これぞ太宰治。久しぶりの太宰もやっぱりだめんず。
    一番心に残ったのは『女生徒』。思春期の女の子が思いついた事を次から次へと語り続ける物語。ドキッとさせられる言葉も多く人気があるのも頷ける。

    「花の美しさを見つけたのは、人間だし、花を愛するのも人間だもの。」太宰らしい美しい文章だなと思う。ただ、『女生徒』を再読するのは凄く疲れる。

  • 一貫した女でした。私より女女しく、男性から見た女のようでもあります。年齢や時代が違っても、これは変わらないのかしらと思います。病や狂人のようになっていくのは、人間のおかしさで、喜劇なところです。堕ちていく女は美しいと、どうして感じるのでしょうか。
    私はどうしてなのか女女しい女が苦手です。登場してくる女達にも惹かれにくいので、頑張って読んでいました。女に生まれてよかったとは思います。女々しいところが良くもあり悪くもあるのです。大好きで大嫌いな自分と向き合ったようでした。

  • 読書部課題図書その24

  • 百円札を擬人化させたような「貨幣」が印象的。
    或る意味時代の先をいっていたのかもしれない。

    解説の「男が女の文体で~」のくだりは興味深い。

    所々に見られる当時の女性に対する目が、
    現代と大きく違っていることを実感させられる。
    二十八でおばさんって、ねぇ。

  • 女性は強いと言うが、決して強くはない。

  • 太宰治ワールド満載。太宰作品でよく使われる言葉「いやらしい」がとても当てはまる作品かなと思います。この作品に登場してくる女性をうがった考え方と捉えるか自分を持っている人と捉えるかで見方が変わってくるのかなと感じました。

  • 女性視点の私小説風の短編でまとめられた一冊。
    表題作が描くのは、天使と娼婦に同時に憧れ、自らを愛しながら疎む、ザ・思春期…こういう言い方をすると安っぽくなってしまって申し訳ないのだけれど、それが安くなく非常に上手いのがさすが。
    他の作品もガラス窓をそっと爪で引っ掻くような、小さいけれど忘れられない音がした。
    特に、「おさん」がお気に入り。

    「男のひとは、妻をいつも思っていることが道徳的だと感ちがいしているのではないでしょうか。他にすきなひとが出来ても、おのれの妻を忘れないというのは、いい事だ、良心的だ、男はつねにそのようでなければならない、とでも思い込んでいるのではないでしょうか。(中略)ひとを愛するなら、妻を全く忘れて、あっさり無心に愛してやって下さい。」

    ため息が出るほど文章自体も中身も見事な一作だった。

  • 「きりぎりす」と同じ話がいくつか入っていますが、女学生がどうしても読んでみたくて購入。
    きりぎりすよりもさっぱりした話が多く、清涼感のある読み心地でした。
    題になっている女学生ですが、畳みかけるようにパタパタと言葉が連なっていて、女学生が世界のよしなしごとに興味がある様や若々しい様子を連想させました。
    どことなく幼く、だからこそ真っ直ぐに自我を捉えようとする女学生。美しく生きたいと願う思春期の明るい部分がきれいにまとめられていました。

  • 一人の男性作家が、ここまで女性のことを描けるなんて、さすがだと思いました。

  • 燈籠・女生徒・葉桜と魔笛・皮膚と心・誰も知らぬ・きりぎりす・千代女・恥・待つ・十二月八日・雪の夜の話・貨幣・おさん・饗応夫人

    彼はいつも「どう在ることが美しいのか」を考えているように感じる。作中に使われた清貧という言葉がそれをよく表している。理想主義、その通りだ。しかし内省において決して逃げることをしない彼の態度には、傲慢さがない。それが多くの人の共感を得るのかもしれないと、月並みなことを考えた。
    理想を持つことで真っ直ぐに歩けない人は、私にはどうしたって愛おしい。

  • 「皮膚と心」が好きです

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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