- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043892013
感想・レビュー・書評
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不思議な話二つ。
弟を取り返す話と、親友を生き返らせようとする話。
こういうの好き、ノルスタジックで子供の頃にもしかしたらこういう事があったのかもと思わせてくれる感じの奴。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中学生だかの頃に新聞の書評を見て図書館に予約しに行った本。本に限らず同じ作品を複数回読むことはほとんどない中でこの本は読み終わった直後にあまりの興奮にもう一度読んだことを覚えている。
図書館の棚で平置きでもないのに何故か目に留まり10年ほど経った今もう一度読んだ。改めて読むと、描写自体はめちゃくちゃにうまいわけではない、のにありありと情景が浮かんでくる。ぶっ飛んだ設定のはずなのにすぐ後ろに一ツ目が立ち尽くしているんでは、とぞわぞわしながら一気に読んだ、ほんとに面白い -
初見と思いきや、『金色の獣、彼方に向かう』の作者さんだった。風天孔。なるほど。
表題作「夜市」と「風の古道」という短編で作られている一冊。
化け物たちがあらゆるものを売買する「夜市」。
裕司はかつて野球の才能と引き換えに売ってしまった弟を取り戻すために、再び夜市を訪れる。
「思っていたエンディングとは違う」と紹介された通り、確かに展開はクルクル変わっていく。
「風の古道」は、神秘的な力を持つ裏道を辿ってゆく少年たちのお話。なんか、森の隙間から入って抜けてゆく道って、トトロに繋がりそうなアレだな、という雰囲気がいい。
また、そこで現実世界に戻る道筋の案内人を務めてくれるレンの役割も、ちゃんとこの世界観に溶け込んでいる。ただ、コモリが割と謎ホラー。
人間でないものより、人間の方が実は怖いよね、ということなんだろうか。
どちらの話にも、もっとエンディングを求めてしまう自分がいる。 -
180226読了
今年11冊目今月5冊目。
夜市も良かったが、風の古道はもっと良かった。
初読みの作家さんだが、この人は当たりだぁ。
この雰囲気、人恋しくなる。 -
初恒川。もっと早く読めば良かった…。表題作の「夜市」は勿論のこと、もう一作の「風の古道」がもう抜群に良い!カミやモノノケが通る道、雰囲気が大好き。ちょっとノスタルジックだったりして、もう…ね。他の作品もぜひ読みたい^^
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活字と言えば
ハリーポッターとホビットしか
読まなかった私を
本の世界に引きずり込んだ一冊
夜市よりも
風の古道のほうが好きでした
日本の古き良き田舎の風景に
溶け込むような怪しく切ないストーリーに
ちょっと涙腺が危なかったです
風の古道は又時が経ってから
読み直したくなるような
世界が存在していました。
心の中のスクリーンに
鮮明に映し出される情景には
どこか懐かしい気持ちになります。
恒川さんには、
これでどハマりしました。 -
現実と妖怪の住む異世界への交わる空間に読者を誘う2話からなる短編集。読んでいてあたかも自分が不思議な世界に入り込んだかのようなリアリティーは独特な文体とテンポの成せる『技』。「ホラー文庫」としてカテゴライズされてはいるものの、どのストーリーも非常に丁寧で優しさすら感じる語り口は恐ろしさよりも『寓話』や『ダーク・ファンタジー』と表す方が正解だろう。表題の『夜市』は子どもの頃に祭りの夜店の華やかさと楽しさの陰に感じた夜の闇のあの「不気味さ」を再体験させられた感覚が心地よかった。まさに和製ファンタジーの良作。
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綺麗な文体と独特の世界観にぐいぐい惹き込まれて、気付くと夢中で読んでました。
自然の摂理というかルールというか、そういうものの残酷さをまざまざと見せ付けられてぞっとした。
だけど、読後感は切なく心がほんのり温まる。
ホラー小説でこんな気分になるとは思ってませんでした。
もっともっとって読みたくなる。
この後すぐに別の作品も読み始めました。
今や、怖いけど美しい恒川ワールドの虜です。-
「綺麗な文体と独特の世界観に」
そんなにホラーっぽくないと聞いて購入。ジャケ買いしました。
「綺麗な文体」と聞いて読むのが愉しみ!「綺麗な文体と独特の世界観に」
そんなにホラーっぽくないと聞いて購入。ジャケ買いしました。
「綺麗な文体」と聞いて読むのが愉しみ!2012/09/14 -
nyancomaruさん、コメントありがとうございます。
表紙もキレイでホラーって感じがあまりないですよね。気に入ってもらえるかドキドキ!nyancomaruさん、コメントありがとうございます。
表紙もキレイでホラーって感じがあまりないですよね。気に入ってもらえるかドキドキ!2012/09/16
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読んでいて映像が浮かんでくるような文章。
じわっと怖くて、でも切ない部分もあって。
よかった! -
例えば『リング』や『黒い家』のような、ぐいぐい攻めてくるような怖さじゃなく、自分の中にある説明がつかない違和感が、ずるずると引きずり出される恐怖に近い。
小学生の時、クレヴァスに関する本を読んでからしばらくずっと、そこに落ちて死んでしまうことが怖くて仕方がなかった。通学路や公園の近くにそんなものがあるはずないのに、それでも、誰にも気づいてもらえず死んでいく自分自身を想像してしまう。そしてその恐ろしさに怯え、夜中にひとりでしくしくと泣いた。
そんなことを思い出すのだ。恒川光太郎の本を読むと。
■夜市
大学生のいずみは、高校時代の同級生の裕司に夜市に行ってみないかと誘われる。足を踏み入れたのはこの世の夜市ではなかった。夜市のいくつかの決まりの中で最も恐ろしいのは、何かを買わないとそこから出られないということ。
裕司は子どもの頃に一度、夜市に来たことがあるという。その時彼は、自分の弟と引き換えに『野球の才能』を手に入れた。元の世界に戻ったら、弟は初めから存在しないことになっていた。裕司は今日、あの日見捨てた弟を買い戻しにきたのだ。
では、なぜ裕司はいずみを夜市に連れて行ったのか。
弟を取り戻し、無事に三人で元の世界に戻ることはできるのだろうか。
■風の古道
古道とは、今は使われていない昔の古い道のことをいう。
主人公は5年前に一度、その古道を歩いたことがある。そのことに興味を示した親友のカズキと一緒に、再びその古道に足を踏み入れた。
その道はただの古い道ではなかった。この世のものではない。普通の人は入ることができないはずなのに、たまたま出来た綻びのような亀裂から彼らは入ることができてしまったのだ。でもそこから出ることは容易なことではなかった。
この話は両方とも主人公は子どもだ。
大人には見えず子どもには分かる、そういう空間の歪みというか裂け目みたいなものが、本当にあるんじゃないかとわたしは思う。わたしたちが暮らすこの世界と時間の流れに平行して、または交差して、全く違う別の世界が。
怖いのは、この2つの話がおとぎ話ではないことだ。本当に存在がそこなわれ、命を落としてしまう。元の世界に戻ったらめでたしめでたしというわけにはいかない。
だから、最後の5行にはハッとさせられる。