- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048739849
作品紹介・あらすじ
1992年秋。17歳だった私・友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。主人の乙太郎さんと娘のナオ。奥さんと姉娘サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。どこか冷たくて強いサヨに私は小さい頃から憧れていた。そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだサヨによく似た女性に出会う。彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになるのだが…。呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない-。青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
感想・レビュー・書評
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呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない――。
キャンプ場で起こった火災により大火傷を負い、その後自殺したサヨ。その死に誰もが負い目を感じていて、お互いに相手を想うあまり嘘をつく。結局、どれが真実だったのか分からないまま。
それぞれの登場人物が皆いい人なのに、心から幸せになれない展開に切なくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分を守るための嘘。
誰かを守るための嘘。
どれが真実で、どれが嘘なのか。
できることなら、人を苦しませないための嘘を。 -
一気に読める面白い物語でした
人間の心理は思い込みで変わる
気の持ちようですね -
青春という種は嘘に埋れて、芽生えようとしているが、結局最後には花になれなかった。
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これまで読んだ道尾作品とは違い、とても文学的な感じを受けました。とは言っても、私自身文学に精通している訳では無いので、感覚的なものでしかありませんが…。 始めに受けた印象としては、”私”という人物と、”ともちゃん”という名前。 この二つに今回も騙されるのでは?と疑心暗鬼の中で読みました。 冒頭で文学的と書いたのは、これまでとは違って騙されなかったことにあるのかもしれません。 この小説はトリックとかでもなく、直球で勝負した作品なんだろうと勝手に考えました。 しかし、丁寧に小説を書く人ですね、道尾秀介さんは。
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嘘が嘘を呼び、罪の意識を抱えて生きていく、という、話。結局本当のの真実は誰にもわからない、だから結末はこれで良いのだと思う。大どんでん返しはなく、終始鬱屈とした雰囲気は純文学的。エグさとどうしようもない文章の美しさは毎回ながら素晴らしいです。
人の持つ普段は目を逸らしたくなるような残酷な負の面を容赦なく抉り出してくる話が多いので、読み手を選ぶなと思います。 -
道尾君は「自分の本に出てくる登場人物は全部大好きだ。」と言っていたけど、許せる部分と許せない部分、見える部分と見えない部分を上手く絡ませて人物設定をしていると思った。
スノードームの存在が奥深い。自分の殻にこもるのも、日本人だからと思うのも、世界が一つだと感じるのもスノードームの中にいる私。結びの傘もいいなぁ。傘って、何かを守るという感じがする。道尾君は本当は優しい人なのかもしれない。 -
「向日葵~」とは雰囲気が違って読後感がよかった。人間は皆それぞれ心に多かれ少なかれ心に隠し事をもって一生懸命に生きている。
その嘘や秘密は他人への優しさや思いやりゆえだったりするから、それを知ったときの驚き、せつなさ、受け止めていこうとするこころの変化に感動した。