無限論の教室 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061494206

感想・レビュー・書評

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  • 「無限」とは何か、をテーマに、教授と二人の大学生が講義を進めていく形で話が展開します。抽象的で難しいテーマでしたが、かなり丁寧に解説されている印象を受けます。数学が苦手な僕でもストレスをあまり感じませんでした。

    ベキ集合のところの感覚を掴むのが少し大変でしたが、非常に興味深く読むことが出来ました。特に、可能無限という考え方(実無限の考え方が頭から離れなくてなかなか考え込んでしまいましたが、一度しっくり来てからはこちらのものですねw)やそれに基づいた実数の捉え方、対角線論法、ヒルベルトプログラムについてが面白かったです。

    高橋昌一郎先生の「限界シリーズ」にもゲーデルの不完全性定理が出てくるのですが、ヒルベルトプログラムの詳しいところは書かれていなかった(ハズ^^;)ので、その背景を読むことが出来てよかったです。

    タジマ先生と二人の学生のやりとりも、ユーモアがあってクスッと笑ってしまいました。


    本書からの引用
    「どうも数学っていうのはわれわれのちゃちな想像力を越えて自然連動していくところが、なんとも面白いですねえ。」

  • おもしろかった。

  • 「可能無限」か「実無限」かをめぐる無限論。かなり、数学的には高度な話題だが、学生二人に講師の三人の対話形式で進み、なんだか分かったような気にはなれる。まぁ、まさに大学の講義でその議論の「さわり」を学んだというような感じだろうか。「可能無限」、「実無限」の議論を歴史的な感じで追っていき、最後は、ゲーデルで一応の落ちがつく。
    本書の形式としては、多分、『数学ガール』なんかが近いのだろう(といいつつ、こっちは読んでないが)。それが楽しめたひとなら、本書も楽しんで読めると思う。
    ところで、なぜ、ぼくは、そもそもこの本を手に取ったかが謎だ。数学には縁遠く、ちょっとした数学ネタ本ならまだしも、対話形式の新書とはいえ無限論などという高度なものを扱っているのに。「無限」という言葉の深遠な響きに導かれてしまったのかもしれない。その意味では、その期待には応えてくれる本である。

  • 【「蘭岳」第125号(2011)による「私の推薦図書」記事の転載】

    本書は、無限集合論を風変わりな先生が男子学生と女子学生二人に対し講義をするという形式をとっています。日常の感覚や言葉遣いによる論理展開の危うさを無限を例にとり、教えてくれる良書です。ラッセルのパラドックス等の数学会を揺るがした大問題を取り上げ、公理的集合論構築に至るまでの数学者の苦闘の歴史を一望させてくれます。哲学書の名を借りた青春小説で知的官険に乗り出し、無限の奥深さを感じてみませんか。

    ひと文化系領域 加藤正和

    図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
    http://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00307988

    #「蘭岳」内の「私の推薦図書」コーナーに掲載された記事を許可をいただき転載しています。

  • ひと癖もふた癖もあるタジマ先生に導かれて、無限論の世界へ。
    大学時代、哲学の授業の教科書がわりになった本。
    無限論ってなにさ!?って遠い世界のことのように思っていた人でも、
    物語に引き込まれてしっかり楽しく学べる一冊。
    この授業、受けなきゃ損。

  • 新書にしては珍しく物語調。控えめなライトノベルといった趣のある良書。

    意図的なのか、先生のキャラがやや陰険で素っ頓狂なのが徐々にツボに入った。『数学ガール』よりも読みやすくてコストパフォーマンスが高い。

    アキレスと亀、ゼノンのパラドクスを取っかかりとした「実無限」と「可能無限」の話は、示唆に富んでいる。

    本が好きな人ならば、読むことと書くことのあいだにも、「無限」を見つけるのではないだろうか。

    授業1コマが1話という形式で、全12話。この授業はぜひ受けておくべき。

  • 本好きらしいmixiユーザの方がおすすめしていたので、飲み会が始まるまで、カフェに陣取って読んでみました。

    微分を習ったとき。
    数学に対して、今までとはちょっと違って興味を持ったのを覚えてる。
    「限りなく0に近づける」とかってよくよく考えてみたらすごく微妙じゃない?数学にしては。

    無限って数Ⅲで出てくるみたいで、残念ながら私は習えなかったんだけど、この本では哲学数学みたいなアプローチでその辺のことを教えてくれる。
    はずなんだけど、エクセルシオールカフェのコーヒーがもうほとんどないのに、ページは進まず…
    すっっっごいがんばって理解しようとしたんだけどほとんど頭に入らず。
    こりゃ哲学じゃなくて数学です。
    でも、哲学と科学(数学も科学だね)の融合がありえてよかった。

    「1次元すなわち直線と、2次元すなわち平面、この点の集合は濃度が等しい。さらに言えば、2次元と3次元すなわち空間ともまた、濃度が等しい」

    うーーーーーーーーー

    あ。
    ちなみにこの人の文体とっても好きです!
    「タジマ先生は椅子に戻り、√2秒ほど煎餅をみつめた。」

  • もう最高。センス抜群。
    無限がなにかなんて「聞かれる前はわかってたけど聞かれた瞬間わからなくなる」ような例のアレ的なものだけど、突き詰めて考えていけばそれこそ話題としてもどこまでも広がっていく。
    自然数論自体魅力的なだけに、一つ一つのトピックスが面白く、けっこう頭を使ったりしてとても心地よい。しかも、田jおっとタジマ先生のどこかひねくれた立場が、いや全くもって健全だとは思いますが、分かったつもりになっているコチラの常識的ななにかを尽く粉砕してくれるのがとても良い。対角線論法に文句言う辺りちょっとハラハラしたりします。
    更には、3人の登場人物が妙に魅力的なんだよなあ。下手な小説なんかよりずっと面白いんじゃないかと思える。しかも随所に笑いが散りばめられていて、なんかすごく読むのが楽しい。すごいなあ。

  • 何度だって読む。オアシス。

  • 先生と学生2人、合計3人の問答で話が進んでいく本。
    もう一冊野矢さんの本は持ってるけど、それも3人芝居だったな。好きなんだろうな。

    読むの二回目ですが、やっぱり難しいです。
    対角線引いて”えいや!!”とするところは爽快です。

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著者プロフィール

1954年(昭和29年)東京都に生まれる。85年東京大学大学院博士課程修了。東京大学大学院教授を経て、現在、立正大学文学部教授。専攻は哲学。著書に、『論理学』(東京大学出版会)、『心と他者』(勁草書房/中公文庫)、『哲学の謎』『無限論の教室』(講談社現代新書)、『新版論理トレーニング』『論理トレーニング101題』『他者の声 実在の声』(産業図書)、『哲学・航海日誌』(春秋社/中公文庫、全二巻)、『はじめて考えるときのように』(PHP文庫)、『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』(哲学書房/ちくま学芸文庫)、『同一性・変化・時間』(哲学書房)、『ここにないもの――新哲学対話』(大和書房/中公文庫)、『入門!論理学』(中公新書)、『子どもの難問――哲学者の先生、教えてください!』(中央公論新社、編著)、『大森荘蔵――哲学の見本』(講談社学術文庫)、『語りえぬものを語る』『哲学な日々』『心という難問――空間・身体・意味』(講談社)などがある。訳書にウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(岩波文庫)、A・アンブローズ『ウィトゲンシュタインの講義』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『増補版 大人のための国語ゼミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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