失敗学のすすめ (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747592

感想・レビュー・書評

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  • 失敗学とは、失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さないとともに、失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぼうという趣旨のもと考えられた学問である。

    本書は「失敗学」の入門書である。社会で起きた重要事故の例を挙げ、失敗から学び、不要な失敗を繰り返さないことの重要性を説いている。またあらゆる失敗を「知識」として伝えていき、将来的には「失敗博物館」を設置してはどうかという大胆なことも述べている。

    本書を執筆した畑村洋太郎は、東京電力福島第一原発事故の政府事故調委員長を務めた人で、本書のメインテーマである「失敗学」を提唱している。失敗をロジックとして考えていくという、斬新な視点はこれまでになく、その論拠や議論の展開に注目して読んで欲しい。

    失敗学についてまったく知らない人でもわかるよう、筋道立ててわかりやすく整理されている。また本を読むのが苦手な人に配慮し、話し口調で書かれているのも魅力的だ。

    ぜひ一度は読んでほしい本である。

  • 失敗から学ぶという観点から,失敗発生のメカニズム,一般的な失敗後の失敗情報の伝達の特性,よりよいナレッジ化の方法論について述べている.
    失敗原因については無知,不注意など低位のものから組織運営不良など高次元のものまで様々.失敗情報は心理的観点から誤って伝わる,隠蔽される,時間が経って風化するなどの特性がある.失敗情報を生かすにはマニュアル化などによる定着化が必要だが,形骸化の恐れもあり工夫が必要.
    大企業に身を置いている立場からすれば,QC活動/コンプライアンス/情報セキュリティ/労働安全衛生の各種取り組みについて,本来の目的を果たせる風土の醸成が必要と痛感する次第.

  • 失敗の活かし方の本。読む前に想像していた内容よりも、ずっと論理的な本だった。

  • 世の中、手本を見聞きする事と同じくらい「失敗談」も有効。小さな失敗をしない事は、将来の大失敗を準備する事だ。
    封印はせず、失敗を突き詰める。
    1.金属疲労
    2.自励振動
    3.低温脆性
    が3大発見。
    報告は、第3者的な表現ではなく、一人称の物が説得力あり。失敗談は「減衰」「隠れる」「変わる」ので要注意。
    比較考量で確実にする。虚無論法に騙されるな。
    ティンバーゲンの定理。マンデルの定義。
    1:事象
    2:経過
    3:原因
    4:対処
    5:総括
    6:知識化

  • 「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」と昔からあるように、失敗しても反省して欠点をあらためていけば、かならす最後には成功にたどり着く。そう言った意味では、失敗を生かすコツは大事。失敗でなにを学んでいくか、そんなヒントが散りばめられた一冊でした。

  • タイトルはありきたりの内容かと思わせますが、久しぶりに考えさせられる有意義な本に出会いました。

    著者は他人の成功事例を真似すればよいという安易な考え方は決まり切ったパターンに解を与えるだけで、異常事態における柔軟な対応力、創造力を阻害すると警告しています。TQCの落とし穴としてマニュアル化による最大効率、品質保持のメリットがある一方で形骸化の問題を論じているところは改めて同感しました。

    失敗は成功のもとといわれるように、人は「痛い目」にあったり、他人が「痛い目」にあった経験を知識として学ぶことで大切であるという点、説得力があります。著者の言うとおり失敗を恥とする日本ではなかなか失敗を伝えていくことは難しいですが、致命的な失敗を起こさないためには組織的に失敗と向き合い、きちんとしたシステムづくりが必要ですね。

    この著書は東日本大震災以前に書かれたものですが、原発の問題含め的確な問題提起をされていたことに驚きであるとともに、日本の組織文化にある失敗に関する問題はそう簡単に克服できるものではないなと思いました。

  • 再読。改めて畑村洋太郎先生の先見というか俯瞰能力に感服。2000年の時点で三陸津波と原子力についてしっかり取り上げ論じている。もちろん原発事故を予見していた訳では無く、あくまで失敗と教訓の事例としてだが、実際に起こるとやはりその明に恐れ入るしかない。
    東日本大震災の著書も早く読まんと。

  • 失敗からどのようにして学ぶべきかということを、具体的に説明している本。いわゆる自己啓発書として読むこともできますが、むしろ本書のキモは、工学的な観点から「失敗」という現象を考察しているところにあるように思います。

    著者は、失敗体験を知識化するために、事象、経過、原因、対処、総括、知識化という六項目に渡って記述することを提唱しています。その上で、これらの項目についてのレポートを書く方法が、著者の自身の失敗を例に解説されています。

    さらに著者は、個人やチームにおける失敗への対処の仕方にとどまらず、私たちの社会が失敗をどのように知識化し共有財産にしてゆくべきかということにまで説き及びます。技術開発の現場では、萌芽期から発展期にかけて、さまざまな失敗からのフィードバックによってあらゆる工夫が凝らされ、技術に磨きがかけられます。その結果、ベストの選択肢が残されて成熟期に入っていきます。ところが、こうしたプロセスを経て唯一残された選択肢がマニュアル化されるようになって、作業の融通の利かなくなる衰退期を迎え、やがて重大な失敗が生じる破滅期が訪れます。おおよそこうした経過がたどられることを踏まえて、開発の初期段階を知っている真のベテランの知識を組織の中に伝えてゆくことの必要性と、マニュアル化の背景に控えているさまざまな危険性を考える「仮想演習」の重要性を、著者は指摘します。

    また、日本では失敗を忌み嫌う風潮が強いことを批判し、失敗を活用することが創造性を伸ばしていくためには不可欠であり、社会全体でそうした仕組みを作ることが重要だという主張が展開されています。

  • 失敗を活かすのも無駄にするのも、その事象を素直に受け入れるかが大切かと思いました。

  • 失敗というものを体系的に分類して、その特性からどのように対応すべきかを述べている。

    内容が十分分かることだったので途中で読むのをやめてしまいましたが・・・・

    何かが起こってからでは遅いとよく言われますが、大抵問題が起こってから原因を究明した時に、その裏に多くの問題が隠れているもの。もちろん問題を起こしたのが一人の人間だったとしても、その人間がとりまく環境に隠されていたり、と小さな問題が積み重なって失敗は起こる。至極当然のことなのですが、意外とこれが問題が大きくなる前に摘み取るべきだと行動する人は少ないように思われます。

    よく聞く話、

    会社の利益が上がらない→売り上げがないから
    (実は無駄なお金が垂れ流し状態だったのを経営者が把握していなかった、社員のモチベーションが低く無駄な動きが多かった、責任者不明確により社員がやるべき仕事をしていなかった、など売上が低いこととは別のところに問題があった)

    要は根本的な問題を解決しないと、コトは大きくなり、引き返せない事故につながるということ。しかしこのように根本的な問題に気づくようになるには、小さい失敗を重ねていくしかないのですが、今は失敗をさせてくれないところが多いと聞きます。仕事ではここに気を使います。なのでいきなり現場に放り込むことがしばしばありますが、知ってか知らずかこちらの意図が伝わらないことも多々あり、社員教育の難しさを実感しています。問題を放置した数が多い人と、果敢に解決をしようと試みた人(たとえうまくいかなくても)、数年後は明らかに成長度が違うのは確か。

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著者プロフィール

1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主 宰。2002年にNPO法人「失敗学会」を、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『図解 使える失敗学』(KADOKAWA)、『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』(講談社)『技術の創造と設計』(岩波書店)、『続・実際の設計』(日刊工業新聞社)『3現で学んだ危険学』(畑村創造工学研究所)など。

「2022年 『やらかした時にどうするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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